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ラクガガク  作者: 徳丸
第1章 羅劫(らこう)
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3.わからないことは先生に聞こう

3話!

全ての授業が終わり午後4時。


下校し各々が仕事に行ったり家に行ったりする中ロロ一同は東京・八王子ー高尾山をつなぐ、特殊な金属で作られた、幅3メートルほどの橋の上にいた。


橋には誰もおらず、下を少し覗くと溶岩でできた渓谷が見えた。



「パルルン、ジェリー、結城先生の今日の授業の内容どう思った~?」



ロロはどうしても気になることがあって2人に尋ねる。


「え?どうって小さい子でも知ってるような内容だったと思うけど?」

「まあ、高等部になって習うような内容ではなかったですよね。」


(寝てはいたが話は聞いていた模様)


「そうなんだけどさ~そうじゃなくてさ~(´-ω-`;)ゞポリポリ」

「なによ?はっきり言いなさいよ。あれ?気づかなかった?って思ってんのがあんたの帽子から分かるのよ。」


ジェリーはうだうだした様子に少し好奇心が揺さぶられたらしく、急かすように言った。


「そうですよ。水臭い。私たちの仲じゃありませんか。」


パルルンが気持ちはこもっていないトーンで援護射撃をする。


「え?知りたいの?ほんとのホントにい~(・∀・)ニヤニヤ????」


話を聞いてくれるとわかり、ロロが調子に乗ると同時に二人の表情が少しだけ不愉快そうなものに変化した。

「うぜえ。」「殴るわよ。」

急かされると溜めを入れたくなるというロロの悪い癖に、一発”喝”を入れたものの、なかなか話そうとしない様子にジェリーがサッと拳を見せる。


「ああああΣ(・ω・;ノノ)!!!言うよ!言う言う!!!」


チラ見せした拳が効いたようだ。


「あのさ。ぼくちんの勘違いじゃなければさ、今まで初等部からここまで一回も羅劫についての授業ってなくなかった???」


ロロの疑問は間違っていない。

人生を左右する存在である羅劫。

その存在について知っているものの、一度も授業として取り扱ったことはなかった。

誰もがそのうちやるのだろうと、そのまま疑問が疑問でなくなっていった。が、高等部になって6カ月。


初めて羅劫についての授業が行われた。

科目としては国語だったのだが。しかしタイミングが微妙じゃない?とロロは感じていた。


「・・・・・・?確かに・・・・。なかったかしらね?」

「ないですね。でも正直興味なかったので気にしたこともなかったです。」

「私はちょっと気になってたわよ?・・・ほんとよ?」

「ぼくちん何も言ってないよ~(*´艸`) ぁぁ・・・・・。」

「ジェリーは普段の授業も覚えてないですよね。

「はうっ・・・!!!」


ジェリーは見た目とは裏腹に脳筋なのである。


その後しばらく、なぜなかったのかを話したが結論は出なかった。


まあ。疑問に思ったところでって感じだよね。

今日のことは今日考えて明日のことは明日考えよう。

だから今すべきなのは授業の復習をすることではなくて食材を調達することだ!



そう思って授業について語ることをやめ釣り糸(特別性)を垂らした。


3人の間にはいつもののんびりとした空気が漂っていた。


「うおおおおお!!!来たよおおお!!!来たあああ!!!・・・・・・・・・Oh・・・I see.」


ロロの気合がこもった一投が大物を当て、竿をしならせたと思ったら・・・。

釣り糸が勢い余って橋を一周しパルルンの襟首を針でひっかけていた。


「パルルン。(今日の晩御飯は)君に決めた・・・!!!(。-д-。)な、な~んて…」

「あ”?」

「うきゃきゃきゃ!!春ものが釣れたわねえ!!!ぷふふふふ!!!」



****


数日後



何の変哲もない一日が始まると誰もが思っていたが今日はどうやら様子が違うらしい。


朝いつも用意されているはずの先生の持ち物が置かれていなかった。先生が体調でも崩したのかと思っていたのだが・・。


「は~い。皆さん元気ですか~。今日はいつもの室内授業ではなく、屋外授業を行いたいと思いますよ~。」


珍しく屋外授業を行うようだ。


「どーゆうことだ?」

「何の準備もして来てないよ~。」

「お前知ってた?」

「え~何かな?楽しみ~!!」


前日に何の説明もされていなかったため、教室内がざわつく。


疑問を抱く者もいるようだが、特に反対する者はいない。準備は全て学校側が行ってくれているため、不信感より新しいことへの好奇心が勝ったらしい。


「怪しすぎい~嘘クサィ(*¬д¬*)。」

「そうねえ~。さすがに事前に何の連絡もなく屋外授業って・・・・。」

「ふむ。屋外となると眠れるでしょうか・・・。」

「だよねえ~。それにさあ~。あれ。なにかな??」


教室に先生が入ってきたときから気になっていた先生の腕の中にある大量のビンを見つめながら言った。


何やら液体が入っているようだが・・・。


「・・・。なんか嫌な感じがしますね。先日ロロも違和感を感じていましたし。説明があるまでむやみに行動するのは得策ではなさそうです。」


小さな声で3人が話し合っていると、先生がそのビンを生徒全員に配り始めた。いったい中身は何なのだろうか。


「これはですね。屋外授業をするにあたって皆さんに何かあったら我々教師陣が責任を取らなければならないので、皆さんの安全を考慮した、熱に耐性を持たせるためのものです。これを飲んでくれないと皆さんを連れていけないのでしっかり飲んでくださいね。」


確かにどこへ行くにも熱対策は必要だ。


普段生徒は学校で支給、もしくは自前で用意した熱を感じさせない環境に適応する道具を身に着けている。


「へ~。太っ腹ねえ~。」きゅぽっ

「・・・・・・・・。ジー(*ФωФ)ニ゛ィー」

「・・・・?なによ?」

「それ。飲まずにそっとこの空き瓶に入れ替えて隠しといてねえ~。はい。これ。」


そういってロロは机の下からジェリーに空のビンを渡す。


「飲んだふりしたらこれに入れ替えて空いたやつ机に乗っけておいて。」


ちなみに、このビンはあとで売りに行こうと思ったロロが学校の廃棄所にあったのを盗んできたものだ。

とても不思議な顔をしているがジェリーはロロの言う通りにした。


怪しむ人は一定数いたようだが、周囲の生徒は見渡す限り、すでに飲み終えていた。ロロはパルルンの分のビンも取り出し、先生が一時目を離した瞬間に入れ替えた。


「先生。いつもより余裕がなかったよね~。ビンの説明だけ。だからちょっと様子見したほうがいいと思う。」


ジェリーの顔にはそうだったかしらと書いてあったのだが、あたかも知っているかのように「そうね。確かに。」と言った。


先生は瓶を回収している。1人1人ちゃんと飲んだか確認しているようだ。ロロたちの分も回収していった。

先生が回収していったあと、パルルンがポツリとつぶやく。


「そういえば今日は神社のほうで神去神事が行われる日でしたねえ。」


今日は10月。毎年10月に春の家では神去出祭かみさでさいが行われている。


古来・出雲の各神社で行われていたらしい神等去出祭からさでさいがもとになったその祭事は出雲に向かうとされる神々を送り出すために行っている。


祭事の目的も変化し、今は現存する神社で名のあるところが開催するような祭事になっている。


屋外授業とこれが関係しているのかはわからないが、こういう時に思いついたことはたいてい何かに関係しているものだ。


先生が何かを隠していることだけは確かなようだが。


ロロたち三人はなるべく騒ぎを起こさないように気を付けようと誓う。

普段から危険物扱いされている3人だからこそ学校側から注意を向けられている可能性は十分にある。






心してかかろう。



**************




ロロたちのクラスはその後、屋外にでて、専用のバスに乗り、どこかへと連れて行かれた。そこは他の場所と変わりなく溶岩が固まってできた岩盤に、隆起によってできた険しい丘が所々にあるばかり。

ただ、円形に、異様なほど毒々しく咲く紫色の花がひときわ目を引いていた。


「はい~。では皆さん。あそこを見てみてくださいね~。あの円形に咲く花の中心に羅劫がいると思われるのですよ~。」


羅劫。そう聞いて周囲の生徒は色めき立つ。今日は何をしに来たのか。薄っすらと感じ始めてきたのであろう。


「学校には羅劫と契約している先生はいないんです~。ですが知識としては十分に頭に入っているので安心してくださいね~。」


「今日はですね。実地で羅劫について学ぼうと思いますよ~。あわよくば誰かが選ばれるといいなと思っていますよ~。」



「「「「「おおおおお!!!」」」」



「え。どうすれば選ばれますか!?!?」

「1体しかいないのお!?」

「もっと近くで見てみたいです!!」


契約されていない野良の羅劫を見るのが初めての生徒ばかりだ。欲が出てしまうのも無理はない。


「はいはい~。落ち着いてくださいね~。この間授業でやったように私たち人間側からできることは特にないんです~。契約は向こうから決めるのでしばらくは皆さん自由に過ごしていてください~。」


生徒をたしなめた先生からは自由にしろとの指示が出た。しかし。



「え。何をすればいいんでしょうか?」

「しばらくってどのくらいなんですか??」

「契約はどうやったら契約したってなるんですか??」


当然、生徒からは疑問の声が上がる。


「ん~とですね。とりあえず今日の最終時間割までですねえ~。自由に過ごしててください~。」


そう言い残し、先生は群がるように囲む生徒をやんわりと押しのけ、バスに乗り込んでしまった。

説明不足も説明不足である。急に連れてきておいて自由にしろとは何事なのか。

誰が羅劫に選ばれるのか、なかには怒る生徒も現れ、バスの外は殺伐とした空気が漂い始めていた。


羅劫の姿は目では確認できなかった。ただ、花の位置が時間がたつにつれて移動していることから、確かに羅劫がいるのだということはみんなわかっている。


「どうする~??暇だよねえ~。なんかしようぜえ~ヾ(´∀`)ノワーイ」


暇って時に毒になりえるからねえ~。皆何したい~??え?好きに決めていいって?じゃあ・・・・。


「この辺探索して少しでも金になるものかっぱらってくぞ。( ・`ω・´)キリッ」


周囲には溶岩と、溶岩が冷えて固まった岩しかないが、探せば何かあるはず。

今日はさすがに釣り道具は持ち合わせていないため、釣った魚で金を稼ぐという作戦は実行することができない。


「・・・・どれだけ金にがめついのよ・・・。」

「そうですねえ・・・。お金に困っているのは前々から知っているので驚きませんが・・。」

「まあ。私たちお金に困ってないのよねえ正直。ただ、授業でも稼ごうとするのはどうなのよ・・・??」


ジェリーは金持ち。パルルンは住職の家系なので、お金には困っていない。そんな2人がなぜロロに付き合っているのかというと・・・・。


「まあ。面白そうなのでいいですけど。」「面白そうだからもちろんやるわ!」


類は友を呼ぶ。そういうことだ。




******




土地はないが、資源を生み出すことは可能あるため、第1次産業は発展している。

富裕層と貧困層の格差はとてつもない。今ある土地の上に立つ防熱ビルに住む人々はすべて富裕層であるといってもいい。

貧困層はビル以外の空いている土地にスラム街を形成し暮らしているが、ここ100年でその状態はかなり改善された。

ただし、さらにひどいものは崖の部分に洞窟を掘って過ごしている。

崖であろうとなかろうと、ビル以外に住む者たちは毎年暑さにやられ、亡くなる人が多数存在する。

ロロもそこの住人の1人だ。



ロロ含む三人は周囲探し始めた。溶岩だらけに見えるがたまに青の地球のものが発掘されたりする。運よく溶けず、地に残り続けた遺品は高額で売れる。富裕層の中にはコレクターがいるのだ。


「何もないですねえ~。これは水晶・・・・これも水晶・・・。」

「これは何かしら。ただの黒曜石・・?輝いてるけど・・。これもね・・・。」

「ふん♪ふふふん♪100円がひとーつ。ふたーつ♪」


皆でもくもくと宝探しを行う。ほとんどが真っ黒で宝石なども溶岩が周囲で殻のようになっているのでぱっと見では確認することができない。


ジェリーもパルルンも真剣な表情で作業を行う。

しかし1時間も探すとさすがに集中力が散漫してしまった。


「もういいかな~。鉄含んだ石結構見つけたから1週間は生きていけるくらいは稼げた計算だし~。それにもうほとんど探しつくしちゃったしね~(●´ω`●)ほくほく。」


すくっと立ち上がったロロが周辺を見渡していった。その後二人を呼び寄せて終わりにしようかと告げる。


一緒に探してくれたパルルンやジェリーはそれぞれの収穫物をロロにくれるらしい。お金はいらないとのことだ。ふぁっく


「じゃあ・・・・遠慮なくいただくよ~(((o(*゜▽゜*)o)))ありがと~!!」


中身を確認するのは無粋だからなあ~。家に帰ってからにしよ~。ちょっとはやめのボーナスってことで!


しかしまだまだ屋外授業が始まって2時間弱だ。何をしようにも何もないと時間のつぶし方は大変である。


なんとなく三人でクラスのみんなとは離れた場所に並んで座った。


クラスの人たちはグループで固まり、ぽつりぽつりと会話をしているようだ。しかし、隣のあいつが羅劫に選ばれるのではないかと若干の疑心暗鬼になっているため、ピリピリとした空気が傍目からは感じる取ることができた。


「ピリピリしてるわねえ・・・・。」

「そうですね。目の前に羅劫がいるのです。無理はないです。」


三人で空を見上げる。空は暗く雲に覆われ、嫌でも雲に反射した溶岩の赤が目に入る。それはまるでジェリーたちを中心に血が降り注いでいるかのようだった。


「嫌な色してるわよねえ・・・・」





特殊な杭を100年以上かけて無数に打ち付けているので岩盤なし状態でもビルはびくともしない設計となっております。岩盤がある状態でこつこつ作り上げているので岩盤なしマグマ&溶岩の上にビルを建てることはできません。ちょっとずつビルの建つ面積は増やしていますが、莫大な資金と羅劫持ちが必要なのでなかなか進んでないという設定です。

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