今の目的
誤字報告ありがとうございます。
龍巳の育成を始めようと思い、まずは基礎知識から教えた。小学生が習うような国語、算数、理科、社会、英語、道徳などだ。
小学生の教育期間は6年だが、俺と龍巳の敏捷の能力値をフル活用して一年ほどで6年分の教育を終えた。お陰で龍巳の敏捷、精神、知力の基準値が5まで上がった上に、スキル「思考加速」を身に付けた。
次は基準値を上げるためのトレーニングと戦闘に使えるスキルの習得をしてもらう。
「龍巳は希望する戦闘スタイルはあるか?」
「父上、私は何が得意かわかりません」
「そうだったな。じゃあ武器出すから気に入ったのを撮ってくれ」
そう言って、支配異次元空間、アイテムボックスに入れていた、昔使っていた武器や作ったはいいが全く使わなかった武器のお蔵入りしていた武器がジャラジャラ出す。思っていたよりも多くあり、量があり過ぎて山のようになってしまった。
「…………ちょっと整理するな」
武器種毎に分け、壊れている者、ネタで作った使い物にならない物はアイテムボックスにしまう。
「さあ、選んでくれ」
「…………」
整理整頓が終わると龍巳は並べられた武器を眺めて歩く。
大剣、剣、短剣、槍、ハンマー、弓と並ばれた武器を無言で眺めるが誰もピンと来ていない様子。
「っ………!」
ついに足を止めて龍巳の目が一点を眺めていたのは刀だった。
「父上、これが良いです」
「魔鉄製、魔力親和性50%か。これ、全属性対応出来る良いやつだな。龍巳お前、目利きが良いな」
昔俺が使っていた刀の一つで割と最近まで使っていた物だ。これを一発で持ってくるとは、龍巳は目利きの才能があるのかな?
「父上の魔力が感じ取れました。他に同じ様な物が有ったのですが、これが一番魔力が込められておられたので、父上が良く使っていた物だと思い、これにしました」
「魔力感知もスキルも獲ってたのか。知らんかった。龍巳、お前が言った通り、それは俺が長く愛用していた物だ」
魔力感知を既に習得していたとは驚いた。流石だな。
「ではまず基本の型から教える」
「はい!父上」
それから数十分間、龍巳に刀術の基本の型を教えた。
「いいか、龍巳。刀術ってのは肉体関係の能力、つまり、筋力、耐久、敏捷、器用の四つのうち筋力と敏捷と器用の能力値を高める必要がある。筋力は必要最低限で十分だ。特に伸ばすべきは敏捷と器用の二つを優先して鍛えろ。この能力値を上げれば刀術のレベルが上がりやすくなる」
「わかりました!父上」
「では次は対人戦だ。これからも基本の型の後は対人戦な」
「はい!」
「よし、じゃあ構えろ!」
龍巳が得物の刃先を俺に向けて構える。俺も拳を龍巳に向けて構える。
「…………父上はいつもの様に武器を持たないのですか?」
龍巳とは一緒にダンジョンに潜ったり、森のモンスターを倒すのを見せているので俺が武器を持たずに素手で構える俺に疑問を持った様だ。
「ああ、俺こっちの方が得意なんだ」
実は俺、前世では有段者だったのだ。
なんの?と聞かれると武術全般だ。俺は都市と比べれば田舎と言えてしまう場所に育ったのだが、小さい頃から都市で生活したいと思っていたのだ。だが都市は田舎より人が多いので、悪い人間にも絡まれやすいと聞いて育った。
だから武力を持とうと思った。ナイフや銃は日本では持っているだけで犯罪だ。一般の日本人が持てると言ったら武術だろう。
と言うことで俺は子供頃からあらゆる武術を習い、身体を鍛えてきた。都市の方へ行ってからも武術を続けてきた。剣道や弓道は基本使わないだろうからそこそこしか習わなかった。
だから俺の得意な武術は徒手空拳だ。
お陰で都市に行ってからも絡まれた不良やヤの付く人達に絡まれても返り討ちにきたぜ!
ヤの付く人達は銃を使ってくる奴もいたが至近距離からや障害物があるところで襲われたので、銃が撃たれる前に動いて弾を交わして返り討ちにしていた。
コツは銃口の向きと目の向き、引き金を引く指の動きで、引く瞬間に動けば相手は反応出来ずにそのまま撃ち躱せる。
「てことで、やるぞ」
「はい!」
まずは龍巳の上からの縦切りが来た。俺は左足を軸にして90度身体を回して躱し、それを見た龍巳が下に振り下ろした刀の刃を俺に向け直し、斜め上へ切り上げる。
それもまたが上半身を曲げて回避するが、刃は俺を通り過ぎる前に止まり、俺の首へまた振り下ろされる。
俺は刃が来る前に刃の横を殴って逸らす。
脚を払う様に俺の脚を振るうと龍巳は飛び退いて回避する。
脚を振る勢いを活かして立ち上がる。
「なかなか良い動きだ。刀握って直ぐの動きじゃないな」
「お褒めを賜り、光栄です。父上も人間の動きとは思えませんね」
「まぁ俺、吸血鬼ですから」
それからも龍巳が攻めてきたのを俺が躱し、カウンターをちょくちょく入れていく。それが段々と変わっていき、俺の方から攻めていく様になり、龍巳は防戦一方になった。
「これ以上は一方的だな。次で終わらそう」
「ハァ、ハァ、はい!なんだか、ハァ、ハァ、成長している気がします!」
「それはよかった。いくぞ!」
「はい!」
龍巳が先程とは違い、刀を鞘に収めて居合の構えをする。
「……それは教えてないんだけどな」
「なんとなく、頭の中でこれが今の自分に出来る最高の技を出せる気がします」
これはどういことだろうか?スキルの覚醒か?俺はなったことは無いけど、その可能性はあった。よく小説やマンガであるだろ?ハズレスキルがいきなり覚醒して強キャラになる主人公。
あれのように何かの拍子にスキルが覚醒することがあるかもしれないと思っていたが、まさか龍巳がなるとは。
やはり龍巳は天才かな!
「『仙法・闘気、発』!
いきなり龍巳から蒸気の様にオーラが発せられ、気配が変わった。
「それも教えてないぞ!」
「急に使える様になりました」
やっぱ天才かよ!
「『魔刀術・水の型ーー」
「っ!?」
龍巳が抜刀した刃からは水が溢れ出し、まるで川のようにその軌跡を描いていく。決して速いわけでもない。これなら拳で弾ける。
そう思っていたのだが、刃は横から来る俺の拳を弧を描くように、川の水が岩を避けていくに、刃がカーブして拳を避けた。
「ーー行雲流水』!」
刃が俺の肩から入って行き、俺を一刀両断した。
「…………凄いな。まさか、俺に一本入れるとは」
「父上!だ、大丈夫なんですか!?」
「ん、平気平気。ほれっ」
一刀両断されたことにより綺麗にスッパリ切られた服の下部分は落ちているが、俺の身体には傷一つついていなかった。
「今の攻撃は良かったと思うよ。でも速度が遅かったな」
「そんな、入ったと思ったのに……」
少しショックを受けた様に俯く龍巳。
「俺に傷をつけたかったなら、もっと速く、身体と切り離せば行けたぞ!」
「次は、もっと速いなります!」
「そうだな。次はもっと速く斬れるよう頑張ろうな!」
「はい!」
しかし直ぐに立ち直ったようなので良かった。娘がショックで挫けずに更なる成長を目指そうとする思い、父ちゃんはうれしいぞ!
「……しかし、ガチでヤバかった。まあ少しスピードが速くて斬り飛ばされてたらマジで身体から斬り離されてたな」
龍巳が成長して俺に迫れば、俺も更なる成長が出来る。これがライバルってヤツかな?更なる成長をするのにライバルと言う存在はとても良い物だ。
「龍巳、お前は何の為に強くなりたい?何か目標はあるか?」
「私は父上の様に強くなりたいです。いずれは父上を越える存在になりたいです」
「そうか。俺も目標がある。それは元の時代に帰る事だ。その為に俺は強くならないと行けない。それが一番の近道だからな」
俺をこの時代に送ったのはあの自称女神だ。あいつは俺が弱かったから強制的にこの時代に送れたんだ。なら俺が最強になればアイツに命令出来る。
だがまだあの自称女神に勝てるイメージが出来ない。レベルの上限が来ているから、基準値を上げて能力値を上げるのとスキルを成長させていく事が現在の目標だ。
「龍巳の目標が俺を越す事なら、今の俺の目標は、龍巳に超されないようにする事だ」
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