失踪事件の原因
霊道君との能力の確認をした後、俺はタツロウに教育と言う名の躾をしていた。
しかし、面白いな。この守護霊のタツロウ、霊であるからか、直接触ることができない。でも、霊力を纏わせた状態でなら触れる。
霊力はおそらくエネルギーに特化した物なのだろう。だからエネルギー体である霊に直接触ることができる、と。
生物に対しては男の急所を蹴られた様な苦痛を感じるから生物に放てば一撃でリタイアさせれるな。
……今気づいたけどなんで最近の俺、こんなに戦闘狂思考なんだろう?
まあいい。タツロウの躾も終え、寝ようと思っていたら。
「ヴォン!ヴォン!」
急にタツロウが床に向けて吠え出した。
「タツロウ、どうした?」
「ヴォオォォォォォォ!」
「何処行くんだよ!」
タツロウに呼びかけるが、こちらに反応を示さず、ドアをぶち抜いて廊下へ出て行ってしまった。
「守護霊なのに守護対象を置いて行って良いのか?」
とりあえず俺も追いかける事にした。タツロウが歩いたところには爪で引っ掻いたところやその質量?で凹んだところがあるので追跡は簡単だ。
霊なのになんで物理に影響を与えれるのだろう?
まぁスキルの【過去視】を使えばタツロウが何処を通ったか見ることができるから痕跡を辿っての追跡をしなくでも良いんだけどな。
階段を降りて、降りて、降りて……どれだけ降りるんだ!
因みにこのマンションみたいな刑務所は60階建でエレベーターもあるのだがタツロウは階段の方を使ったようだ。
「エレベーターを使って欲しかったわ…………この階は」
重犯罪者が入る予定になっており今のところこの階には今のところ四人が生活している。この階は、
「一階じゃねぇか!」
最初からここに来るならエレベーター、いや、転移して来た方が早かったな!
「バォォォオオオオ!ヴァウ!ヴァウ!」
タツロウは一階の廊下に立って、目の前の空間に爪を振り回していた。爪を振り下ろした空間には爪痕の様に裂け目ができるが、すぐにその裂け目も無くなってしまった。
裂け目の向こうではまるで廃墟の様なボロボロの廊下が一瞬だが見えた。
「なんだ、これ?」
裂け目に向けて【解析】をかけると『次元の裂け目』と表示された。タツロウは次元も切れるのか。チートだな。
それより、これはここの階に住んでるヤツらが心配だな。
「おーい!オメェら、起きろぉぉぉぉおお!」
全く反応が無い。気配を探ってみたが、こちらにも全く反応がなかった。これはどう考えても異常だし、タツロウが行なっていることにも何か関係している筈だ。
「タツロウ、ちょっとそこをどいてくれ」
俺は久しぶりに『応龍装備』の籠手をつけて、先程までタツロウが爪を振り回していた空間に向けて構える。
「応龍、久しぶりの出番だ。しっかり働け。『龍の鉤爪』!」
腕を振り下ろせば切り裂く感覚を覚え引き裂いたところから先が別世界のように変わっていた。そして四人の気配と一つ大きな反応を感知した。
「くくく、なるほど。そう言うことかーー」
俺は瞬時に大きな気配の近くに転移し、
「テメェが、ここ最近の失踪事件の、」
拳を握りしめて目の前に現れたナニカに向けて、
「原因かぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
本気で殴る。
ーードォォォォォォオオオオオオ!!!!
ナニカの身体を半分以上を吹き飛ばし、風圧で建物も破壊してしまった。
「あっ、やべっ!……ん?」
元々廃墟の様だったのだが、更なる廃墟にしてしまった。しかし廃墟だった建物内が綺麗になって行き、本来のマンション刑務所に戻った。
「どうなってんだ?って、そうだ。オメェら、平気か?」
背後に感じていた四人の気配に呼びかけると四人はそれぞれが出てくる。
「アンタ、マジでバケモンかよ」
霊道君がひょっこりと出てくる。彼は不法侵入に建物を崩壊させていたのでこの階で生活している。
「流石は私の先祖!強さも兼ね備えているのね!」
閻魔堂ちゃんは動物の殺害を自分の意思でやっているので、以下略。
「「龍郎のアニィ!流石っす!」」
そして葉中と生谷は強盗で以下略。
「君達、何かコイツのこと、知ってる?」
俺は今はもう動かないナニカを指を指して聞いてみる。四人中三人は顔を横に振るが一人だけが答えてくれた。霊道君だ。
「時々、襲ってくるんだよ。ソイツが現れたら周りから人がいなくなって、襲われるだ」
そう霊道が答えてくれる。
「どうやって対処してたんだ?」
「殴り」
拳に霊力を込めて見せてくる。うん、なんとなくわかってた。
「さっき周りからいなくなるって言ってたけど君達四人はさっきの空間にいたんだよね?そんなことって、前にもあった?」
「いや、なかった」
これまでの情報からコイツ、又はコイツの同種が最近巷を騒がせている失踪事件の原因。コイツら(複数いると仮定して)は基本一人を狙ってあの空間(廃墟)に対象を行きずり込み、襲う。
俺の子孫を襲うのはおそらく異能を持っているから。ただし、異能を持っていても使えない者は襲われたら行方不明になるが、異能を使える者なら対処できるほどには弱い?
今回この四人を同時に引きずり込んだのはこの個体がこの四人に負けないほどに強力だったから。
俺の気配察知からはコイツはこの四人を余裕で殺せるほどに強いが、襲う場所と相手が悪かったな。
ここは俺の縄張り。守護霊が狼に近いからコイツの匂いを嗅いでタツロウが此処にやってきたのだろう。
俺の縄張りで俺の子孫達を襲うのだ。
「テメェは天国にも地獄にもいけねぇよ。行くのは俺の身体だ」
俺は霊力を目に込めコイツの魂を見つけ、掴み食う。しっかりと噛み砕いて飲み込みゴックン。
コイツの残りカスである身体も食らっておく。
こうする事によってコイツらのことを理解する為だ。俺の身体中の細胞がコイツを解析し、理解する。
『未知のモンスターを捕食、解析。解析終了。アンチモンスターを取得します。これからはこの種の能力を感知できます』
解析が終了したので、次の計画へと進める。
『我が一族へ。今から全ての分身を消滅させる少しの間だが、万が一がある。警戒せよ』
俺の分身は世界に送り出している。
今の分身は少し前に俺を基にして作り出した分身なのでアップグレードしなくてはならない。
「ほんじゃ、スピード勝負だ。分身解除」
全国へ出してる分身を一時的に解除する。
「くっ!」
数百の記憶が一気に集まって、頭に負担が溜まり、立ち眩むがなんとか耐える。
「【多重分身】!」
【多重分身】を発動させた事により、数十の俺が現れる。流石に同時に数百を出したら霊道君達が潰れるよ。
「俺達、それぞれの場所に急いで戻れ!」
『任せろ!』
これを何回か繰り返し、元の数まで分身を出し終わった。
「ハァ、ハァ、【多重分身】って性能は良いんだけど、発動させてから解除させるまでが長ければ長い程、数を多くすればするほどに負担がやってくるから解除するのが嫌なんだよね」
高レベルの人外の俺だからいいけど、片方がダメな人だったら全部の分身を解除したら死ぬね。
ーーツンツン
肩を叩かれる。なんかこれ、つい最近にもあったような。
振り返るとタツロウが立っていた。
「クゥ」
タツロウが申し訳なさそうにタツロウがやってきたであろう方を指す。
何故わかるかって?
それはタツロウが指した方は足跡の形をした凹みが床にあるだけでなく、周囲の壁や物も壊れていたからだ。
「……治すのは明日な。あと、タツロウ。今日は勘弁してやる。緊急事態だったし、お前のおかげでなんとかなったからな。次はねぇからな」
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