活動開始 後編
「それで、龍郎殿の計画、とやらをお聞かせ願えますかな?」
俺は今、信秀君、信長君、俺の3人だけで茶室を使い、話をしていた。
「その前に聞いておきたい事がある。君達は今の時代をどう思う?」
「どう、とは?」
「今の戦国の世を、武士が戦に明け暮れ、民を全く顧みない所為で、人々は飢える。神の教え全うする筈の坊主が武士と同じ若しくはそれに以上に民をうえさせ、殺す世の中を」
「「…………」」
二人の沈黙に部屋の中が暗くなったかの様に錯覚してしまう。
「……ワシはこの世を変えとうございます。子が親と殺し合う事も嫌ですが、子と子、兄弟で殺し合うのはもう飽き飽きしております」
「俺もだ。俺も弟達と争いたくない。弟と妹達には幸せになって欲しい。それに民を飢えさせる事をしたくない。この世の争いを全て無くしたい」
信秀君の言葉に信長君も同調し、自分の思いも伝えてくれた。
「俺は以前、夜のこの町を歩いたのだかな、人々は荒れて、不安がっていた。子供は飢え、漸く手に入れた食べ物は同じ飢えた大人に奪われる。これは大人を責めちゃいけない。責められるべきは彼等を飢えさせた者がいけない。彼等だって飢えが無ければ子供から奪ったりなんかしなかったさ」
「やはり、我らが彼等をちゃんと食べさせてやれない事が……」
「それは違うぞ。他の国の町も見てきたがここの町は他よりも比較的良かった。君達は頑張ってる。だが、足りない。彼等は今の不安定な世の中に不安を抱いてるのさ。不安は人を狂わせる。此処で俺の計画に繋がってくるわけだ」
人々は不安があるから強行に及ぶ。
「此処でか?」
「そうだ。俺の計画は不安材料を無くし、戦乱の世を終わらせる。つまり天下統一をさせること。手始めにこの尾張を変えたいと思ってる」
「戦乱の世を終わらせようとしたのは貴方だけではありません。他の者達もこの戦乱の時代を終わらせるために戦ってきた。しかしそれは結局新たな戦火を出しただけ。貴方は如何にして戦乱の世を終わらす気で?」
日本の世は織田信長が武力によって終わりを告げた。
結局は武力なのかもしれない。そう思っても仕方ない。
しかし、
「俺は武力は最小限で、別の力、方法を主力に、戦乱の世を終わらせる」
「別の力、とは?」
「銭の力だ」
「はっ?」
「銭の力だ。まず手始めに尾張の民の食料からだな。食料の余裕を産みたい。次は工芸品や布だな」
「お、お待ちください!いったい何の話をしているのですか?」
「経済戦争だよ。他国に銭の力で押さえつけ、戦争を吹っかけて来れないよう抑制するのさ」
「しかし、それはどうやってするのですか?尾張は確かに米を多く作れますが、他国を抑えるほどの量はありませんし、工芸品を作る職人も少ないですよ?」
確かに此処尾張では米の収穫量は他と比べると比較的多いだろう。その分儲け他よりも尾張の民はマシな生活が出来ているが現代と比べればまだまだ。
「無ければ持って来るまで。俺が南に行き、貿易相手を連れて来る。ってぇ、建前で実際は霧の森から食料を持ってくるんだけどな」
「はっ?それはどういう……」
ダンジョンの生産力は無限で一国を賄うくらい余裕である。それを使えば尾張の食料問題どころか、日ノ本全ての食料問題を解決出来る。
「霧の森では作物の成長は早い上になんでも育つ。だがあの森に出入り出来るのは俺と龍巳くらいだ。俺達だけを頼り過ぎると尾張の発展には繋がらない。ならどうするか?それは海の向こうの国、南蛮から入ってくるって事を利用する。
正直言うと今の日ノ本と南蛮とでは圧倒的な技術力に差がある。日ノ本の方が負けてる。生産量でもな。
だからこそ競える。人間は全てが有限だからこそ成長をする。俺達が与えるだけじゃ君達は成長できない。自分達でも成長しないといけない。俺達は種を与えるがそれだけ、後は君達次第だ」
「「…………」」
「それはつまり、龍郎達は食料と目標を与えるから後は自分達で頑張れ、てことか?」
「お前達だけでってのはちょーっと違うが大体それで合ってる」
俺の計画はダンジョンを利用した尾張の発展だ。
しかしダンジョンは流石に隠す必要があるので表向きは南蛮貿易として尾張の民に食料から調味料、酒類などの口に入れる物を大量に持ち込む。
次に鉄鉱石や銅などの鉱石類を持ち込む。更に金属の加工技術を発展させ、金属製品を作らせる。
その為の職人も集める必要があるな。
「俺はこれから4、5年くらい此処を離れる。その間、龍巳に治安維持をさせておくから、報酬を上げておいてくれないか?俺達って今のところ無職だからな」
よく考えたら俺達は狩猟や漁業などや盗賊退治をやっきたがまだちゃんとした職についていないのだ。飯もハジメ君達にお世話になってたからこれからはしっかり働いていかないとな。
「分かり申した」
そうして俺は城から出て、町を歩いた。
「あっ、龍郎様!」
「ん、銀ちゃんか」
そこに現れたのは数日前に強姦されそうなところ助けた少女、銀ちゃんがいた。野菜が入った籠を抱えている。
「丁度、龍郎様のところに行こうと思ってたんです!先日のお礼に家で採れた野菜を渡そうと思って」
「ありがたいけど、多分俺は食えないかもなぁ」
「えっ、野菜、嫌いでした?」
銀ちゃんの目が潤みだし、涙が溢れてきた。
「いや、違うんだ!別に野菜が嫌いとかじゃなくて、単に俺、これから此処を離れるから食べれないかもって思っただけなんだ」
「そ、そうですか。よかっーー今、此処を離れるって言いました?」
「ああ、言ったよ」
「どれくらい、居なくなるんですか?」
「4、5年くらいかな」
すると銀ちゃんが先程よりも洪水の様に涙を溢れ出した。
「ぎ、銀ちゃん!?」
「ご、ごめんなさい。涙が勝手に溢れちゃって。止まらないんです。ごめんなさい」
「別に謝らなくてもいいのに……」
それからも銀ちゃんは泣いた。何処にそこまでの量があるのか、涙が枯れる程泣いた。
「おい、アイツ」
「女泣かせてやがる」
「最低だな」
まずい!周囲に嫌な誤解を招いてしまった!
「銀ちゃんはどうしてそんなに泣くんだい?」
俺は出来るだけ周りに聞こえない様に銀ちゃんに話しかける。俺のセリフで周りに更なる誤解を招きたくないからね!
「私、は、あの時助けてくれた、龍郎を好きになりました。やっとまた会えたのに直ぐにまた会えなくなってしまうのは悲しいです。4、5年もしたら私は龍郎様以外の男に嫁がなくてはなりません。私は龍郎様以外の男には嫁ぎたくありません!離れ離れになるのも嫌です!龍郎様私も共に行かせてください!お願いします」
「…………」
……初めて愛の告白をされた。ヤベッ、涙が。
しかし、どうしたものか。俺と彼女が結ばれたとすれば、将来、多くの生まれる筈だった命が、無かったことになるかもしれない。
その中に俺も含まれているかもしれない。
それに、俺の正体に気づいた時、彼女はどんな反応を示すだろうか?俺が人間ではない事に気づいた時。
「……銀ちゃんは俺が人間じゃなくても、その気持ちは変わらないと誓えるかい?」
「……龍郎様、初めて会った時、頭に角があったじゃないですか。あの時、龍郎様は飾りだと言ってましたけど、あれ、飾りじゃないですよね」
「バレてたか……」
「私は、龍郎様が人間じゃなかったとしても私の気持ちは変わりません……!」
彼女の目から覚悟を決めた目をしていた。
「……いいよ。一緒に行こう」
「ありがとうございます!」
こうして銀ちゃんも一緒に行く事になった。
「ところで銀ちゃんは、俺が何処に行くか知ってる?」
「……何処に行くのですか?」
「オイオイ……まぁ、次からはちゃんと聞いてからだよ?」
「すみません……」
銀ちゃんっておっちょこちょいなのかな?
「南の方、琉球王国よりも南の方へだよ」
「そんなに遠くへですか!?では船で行くのですね」
「いや、船は使わないよ。銀ちゃん、俺に捕まって」
「こ、こうですか?」
「お、オウ」
言われた通りに銀ちゃんが俺に抱きつく。俺もしっかりと銀ちゃんの身体を抱きしめる。
「あ、あの、何故これをする必要があるのですか?」
「飛んで、南の方へ行く為だよ」
「と、飛んで!?それはいったいーーキャァァァァァア!」
俺が脚に力を入れて跳び上がれば俺達の身体は文字通り空を飛び、南へそのまま向かった。
「わ、私達、空を鳥の様に飛んでますぅぅぅ!」
「銀ちゃん、速度上げるから舌噛まないでね」
そして俺達は南の島々へ向かって行った。
それから3年、予定よりも速く俺達は日ノ本の尾張へと帰って来た。
一応この物語のメインヒロインなんですけど読者の皆様は好きになってくれるでしょうか?
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