活動開始 前編
『……うさん。…ろうさん。龍郎さん。起きないと頭潰しますよ』
「物騒だな!おい!」
ダンジョンコアの一葉ちゃんに呼ばれて起きたが、その起こし文句が物騒過ぎやしませんかね?
「誰か来たのかい?」
『信長様がいらっしゃいました』
「信長君が?」
どうやら信長君がやってきた様だ。なんの様だろう?
ーーガラガラガラ、ガトン。
「おはようございます、先生。お別れの前に稽古をつけてもら、って、龍郎殿?なんで龍郎殿が?」
戸を開けると信長君が音に反応して直ぐに頭を下げて挨拶をした。だから気づかなかった様だ。だが直ぐに俺に気づいて、疑問を持った事が来た。
「ハジメ君達なら既に自分達の故郷に帰ったよ。俺はまた彼等が帰ってくるまで此処を管理する様に頼まれてね」
俺は簡潔にまとめて信長君に説明した。
「もう去られたのですか!?最後に稽古をつけてもらおうと参ったのに……」
信長君が残念そうな気配を垂れ流した。
「……俺はハジメじゃないが、代わりに稽古を付けてやろうか?それか、龍巳にやらせようか?俺の方がハジメ君より腕が良いし、龍巳の方が更に良いぞ」
「龍郎殿にお願いしたい。女に勝っても自慢にならん」
「あっ、それは龍巳の前では言うなよ?あいつ自分の腕には絶対の自信があるから拳骨ならぬ峰打ちが雷の如く、頭に落ちるぞ?」
ホントに雷みたいな速度で頭に落ちてくるから発言には気をつけた方がいいぞ?
そう言えばアイツどこにいるんだ?
・・・・・・、チンッ!
あっ、畑で案山子の相手してる。気配察知でどこにいるかわかった。アイツまだあの案山子を直接倒していないからリベンジしているんだな。
「龍郎が強いのは親父から聞いているし、盗賊討伐をよく行なっているから知ってはいるのだが、剣の腕は良いのか?」
どうやら信長君は俺の武術の腕をあまり信用していない様だ。そう言えば、彼の前で武器を使ったのは魔法銃以外無かったな。
あれもこの時代にはない物の形をしているから妖術か怪しげな術だと思われてそうだな。
「そりゃ良いよなんたって、長年武芸を一つに絞ってそれぞれやらせてきたからね。それに俺は君達のとは身体の作りが違うからね。別に君達を舐めている訳じゃないよ。能力が違うだけで他は君達と同じさ。君達の方が成長は速いだろうけど、俺の方はやり方が違うからーー」
「話が長い!」
「不意打ちは師弟揃いか」
「不意打ちされる方が悪いと習いましたからな」
会話でもわかるだろうが、俺は不意打ちをされた。まぁ、確かに長ったらしい話をしている方が悪いとは思うよ、俺も。
俺達はお互いに木刀を持った状態で打ち合っている。まぁ彼の方から打ってきているのだが。
因みに右手に木刀を持ち、左手は後ろに回した状態で信長君の相手をしている。そして防戦一方の状態だ。
「確かになかなかの腕はある様だが、片腕だけで相手とは、馬鹿にしてあるのか?」
別に彼を過小評価して、片手で相手している訳ではない。俺の力が強すぎるから、両手でやると力加減をミスりそうだからだ。
「三郎君。俺と君とでは技量以前に肉体性能か違うんだ。俺が力を入れて君を押し返せば君が吹っ飛ぶんだよ。今は手加減を高めていないが直ぐに慣れるさ」
「ぐっ!」
少し馬鹿にされたのでカウンターを打ち、信長君はそれを受けるが、あまりの重さに唸った。
「これでも君を潰さない様手加減しているんだよ?」
「おそれ、いるっ!」
信長君が俺の木刀を押し返した。
「うん、かなり良い感じに慣れてきた。三郎君、次は技量で行くよ」
「受けて立とう」
ーーコンッ!
「んっ?軽ーーッ!」
ココココココココココココッン!
信長君が声を出した次の瞬間には雨に打たれる様な連撃が繰り出された。
「さっきよりも軽いと思って油断したね?」
「すま、ん」
「次は速さを抜きにするよ」
少し木刀を打つ速度を遅くしてみた。すると信長君に俺の木刀を打ち返し、俺へ木刀を振るってきた。
俺はそれを自分ので強めに打ち返し、信長君の手から木刀を離す。
当然人間レベルの力で打ち返した。そうしないと彼の腕がダメになるからな。
しかし、少し腕を痛めた様だ。
「すまん、ちょっと強過ぎた」
「いや、大丈夫だ。しかし、、龍郎は武芸も出来たのか」
「一通りの事は出来るぞ。特に得意なのが徒手空拳だな」
「素手の方が得意か?」
「そうだぞ。素手なら龍巳とも互角に戦えるかな。それで、まだやるかい?」
「もう少し、頼めるか?次は素手の龍郎の力も見たくなった」
それから一時間、信長は木刀を持ち、俺は素手の状態で何度も模擬戦をした。何度も何度も信長君を転がし、投げ飛ばし、それを繰り返した事により、信長君の服には砂埃が大量に付いた格好になった。
「ハァ、ハァ、ここまで、ハァ、ハァ、とはな。ハァ、ハァ、一本も取れないとは、ハァ、ハァ、思わなかった!」
「俺も正直大人気なかったとは思ってるんだ。うん」
今の信長君は地面に転がされた状態になっている。これを彼の家臣が見たら、どんな反応をされるだろう?
「龍巳、いるか?」
「此処に」
俺が龍巳を呼ぶと直ぐに現れた。
「俺の留守の間、この屋敷を頼めるか?」
昨日ハジメ君からこの屋敷を頼まれたばっかなのに、他の人に任して良いのかって、思うだろうがこれはハジメ君達を未来へ送り返す前から考えていた事だ。
屋敷を託す事じゃないよ?
「ん?龍郎、お主何処かへ行くのか?」
「ああ、ちょっと南の方へ行く予定なんだ」
「南……琉球王国へか?」
今の時代だと日ノ本の人は南と言ったら琉球王国、沖縄だと思うだろうな。
「いや、もっと南の方、海の向こうだ」
「海の向こう!?龍郎、お前は海の向こうの世界をしっておるのか!?」
信長君の反応が凄い。まさかここまで反応を示すとは思わなかったな。
「直接行った事はないが、知識としては知っているぞ。南の海は一年ずっと真夏の様に暑いところがあって、更に南の果てには、日ノ本の冬よりも冷たい極寒の地があるんだ」
あっ、この時代の人間である信長君に言ってよかったのかな?……まぁ、いっか!
「ん?南は暑いのに何故南の果ては何故極寒の地なのだ?」
そこに聞いてくるかぁ。
「三郎君は俺達からしている星、地球がどんな形をしているか知っているかい?」
「丸いのだろ?」
「おっ、正解。よく知ってたね」
「南蛮から入ってきた物に地球儀という物があってな。その時に地球が丸いと聞いた。それで、何故南の果ては寒いのだ?」
おっと、話が脱線するところだった。
「うん、これには御天道様が深く関わってくるんだ。地球儀を知ってるなら分かると思うけど御天道様様は当たる場所に距離がそれぞれ違うだろ?日ノ本は春夏秋冬と時期によって気温が変わる。それはつまり、御天道様が当たる距離遠くなったり近くなる時期によって変わるって事だ。つまりーー」
「南は御天道様が近い距離をいつも回っている。南の果ては逆に遠い距離を常に回っている、と言う事か?」
「正解。流石だね。まぁ、俺の考えだから確証はないけどね」
実際はどうなのかは知らないが、そんな感じじゃないかな?
「それで、何故龍郎は南へ行くのだ?」
「これには俺の計画を話す必要がある。お父上と一緒に聞いて欲しいから、城で話せないかな?」
「わかった。親父は那古野城に丁度来ているから、これから城に行くか?」
「ああ、行こう」
俺の計画、これは本来のこれから辿るはずだった歴史を塗り替える事になる。当然、俺が持ってた知識が全く役に立たなくなる。慎重に行かなくてはならない。
慎重に出来るかな?出来る自信がないな。
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