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こちらに歩きながらベントナー男爵が
「おぬしの持っている、魔法鞄は収納量がすごいな」
「そうですか、前に盗賊団を壊滅したときに手に入れたものです」
「リバルタン村からバンロートルに続く街道の大盗賊団が持っていたのかな?」
「はい、一応持ち主は死亡していたので僕のものとなったものです」
「遺族には慰労金を渡しました」
「慰労金をわたしたのか!普通はそこまでしなくてよいのだぞ」
「わかっていますが、何となくそうしたほうが良いと思いまして」
少し間をおいて、ベントナー男爵が小声で
「おぬしは、転生者か?」
「転生者ではありません」
「そうか、昔話で黒髪の勇者が別の世界からやって来て魔王を倒した話があるから、もしやと思ったのだが確かに勇者は今王都に居るしな」
「勇者はもっとすごいんじゃないんですか?僕なんかはまだまだですよ」
「いや、おぬしがわが領土に来てから荒廃した大地がよくなっている、伯爵さまに報告したらおぬしは伯爵さまに持って行かれてしまうな」
「ま、それまではわが男爵領を良くしてくれ」
男爵と別れ、市場までやって来たところで
「ティア、君の知り合いでスラムから僕の領地に来たそうな人はいるかな?」
「うーん、誘えばほとんどの人は来ると思いますよ?スラムの生活は主様が思っているよりも女性には残酷な世界ですから」
「それじゃあ、声をかけてきてくれるか?ニール一緒にいってきてくれるか」
「わかりました、行ってきます」
「ニールさんそれじゃあ行きましょうか!」
歩いているときにヒューズが
「綾人さま、一つ聞きたいのですが、一体どのくらいの資産を持っているんですか?」
「うーん、資産かぁ、お金は白金貨二十枚分くらい、物資はお城を二、三は作れるかな、武器も数千は持っている」
「はぁっ?王国でも作るんですか!一人の人間がそんな資産持っているなんておかしいですよ!」
見習いの二人は唖然として、ポカンと口を開けていた
「でも、さっき領主さまに資材を提供していましたよね?そのうえで城を作れる、その魔法鞄で入りきらないと思うので、もしかしたら<収納>の能力を持っていますか?あれだけ強くて、魔法もほぼ無尽蔵で使っていますよね。わたしはもう領軍には戻れない、秘密が大きすぎます!初めは従士様の所に出向すれば、同期の中で出世が少し早くなるかな、程度に考えていただけなのに、それが・・・」
「なんか、一人の世界に入っちゃっているね」
「はっ!すいません、でも綾人さまのそばにいれば今まで以上に成長できるので、一生懸命お仕えさせていただきます!」
「よ、よろしく」
「では、行きましょうか!次はどちらに向かうのですか?」
「それじゃあ、探索者ギルドに行こうか」
「はい、分りました!お前達いつまで呆けているんだ!行くぞ!」




