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第3話 魔法を覚えた

 第3話 魔法を覚えた



【回復】


 俺の、呪文…じゃないな。掛け声とともに魔力が動きだし、ポヤポヤとした光の玉を作りの出す。これが回復の魔法だ。

 淡い光の玉の中をキラキラした光がゆっくりと踊っている。

 なかなか美しい。


『うむ、良好だ、大分うまくなったな。

 魔法とは魔力にかくあるべしという意思を打ち込んでその作用を制御する技術だ。

 言ってしまえば制御できれば方法は何でもよいのだ。

 人間は呪文というのをよく使っていた。多数の意味を持たせた高速言語というやつで魔力にプログラムを打ち込む方法だ。

 呪文を唱えれば誰でも使えるという技術だったはずだ。

 他にも機械的な制御もあったな。この施設に使われているのがそれだ。魔力の流れやすいところ、流れない所を区分して魔力が特定の道筋を流れるようにするのだ。これでも魔法は起動する。

 だが吾に言わせれば一番いいのは直接制御だな。魔力に何をなすべきかを伝え、その動きと属性を整えてやる。それによって現象を制御する。つまり今、マリオンがやっている方法だな』


 ふむふむ、何度も何度も繰り返し聞かされる話だ。もうだいぶ頭に入っている。

 読書百遍だな。読んでないけどね。

 

『魔法とは魔力に特定の作用をさせるための手法で、例えば呪文が同じなら同じ効果が生れるわけだがすべてが同じというわけではない。

 その効果、強度、精度は人によって違ってくる。

 これは魔力が精神感応性エネルギー粒子であるところに起因する。

 つまりイメージが細かい精度や、威力の強化を行うわけだ。

 昔は医療魔法士というのがいたが彼らは人体の構造について詳しい知識を持っていた専門家だった。この知識があるのとないのとでは魔法の効果が格段に違ってくるのだ。

 つまり魔法に必要なのはイメージとイメージを肯定する知識というわけだ。その意味で直接制御は利用の幅が広い。

 …よし、そこまで、だいぶんうまいぞ。ではそれを今度は自分の身体に適用する』


「はい」


 だだひたすら回復魔法を構築し、維持する練習をしていた俺に次の指示が飛ぶ。

  

 魔法というのは使用者の内包する『魔力』によって賄われる。

 自分の魔力を取出し、かくあるべしと在り様を打ち込んで魔法とする。

 これは攻撃魔法も回復魔法も変わらない。


 そして在り様の打ち込み方は前述のプログラムでもいいのだが、直接制御でもいい。


 そして直接制御をするためにはどうしても『魔力回路』が必要になる。

 魔力回路の修業とはこのためのものなのだ。


 魔力回路というのは魔力の精製システムであり、同時に体内を流れる魔力を支配するシステムである。自分の中で生成され、支配される魔力なので意志の伝達や制御は極めて効率がいい。これによって人間は魔法を行使できるのだ。


 そして魔力回路は魔力を貯め込む貯蔵庫の役目も持っている。

 例えば燃料の循環するパイプが大きければそれだけ多くのプールが作れる。ということだ。しかもこの魔力は精製すると純度が上がる。


 精巧な魔力回路を持つということは。それだけたくさんの魔力をため込むことができるということなのだ。


 これが魔力回路の素晴らしさだそうだ。


 さて、俺の感覚では魔法というのは祈りに似ていると思う。


 回復魔法で説明するとまず今の場合は肉体の再生を促すイメージを送り込んで魔力を呼び出すわけだ。あるいは汲みだすわけだ。

 この時魔力は『回復させる』という意思を、指向性を持った魔力になる。


 この魔力を対象の体内に注ぎ込んでやると、この魔力は本来のその人の魔力の流れに乗って全身に送られ、そこで修復という形で力を発揮する。

 これが回復魔法であり、他者に使う場合はこれでいい。


 だが自分に使う場合はややこしいことになる。


 俺が他人に回復魔法を流し込んだばあい。その魔力は混じることなく並行して全身に送られる。

 だが自分自身の場合、もともと同じ魔力なので混じってしまうのらしい。

 その結果魔力に刻まれた回復の意志が解除されてただの魔力になる。なので自分に回復魔法をかけることはできない。

 ということになる。


 ではどうするのか?

 自分の中には全身にくまなく魔力が循環している。それこそ網の目のように。それこそが訓練の成果だ。

 そして自分の魔力は自分の支配下にある。

 だったらその魔力に回復の意志を乗せたらいいんじゃね?

 というはなしだ。


 弱い回復の力を流すだけで常時体は回復し続け、しかも魔力が減ったりもしない。

 その意志を強くしたり、魔力流量を上げてやれば高速再生もできるというすごい技術なのだ。

 これが自分を回復する方法。


 そして一番重要なのはこれにも俺の延命の効果があるという点だ。


 魔力によって体を維持しているとしだいに体が霊的なものに置き換わってしまうのだ。

 しかし回復魔法は生命力の回復や、異物の除去などに効果を発揮する他に、魔力をエネルギーとして細胞分裂を起こさせ、肉体を再生する効果がある。実はこれが一番劇的に作用する部分だ。


 つまり魔力を物理的な肉体に変換する方法、その唯一の方法がこの回復魔法なのだ。


【回復】


 と唱え、今度は軽く目を閉じで自分の魔力を意識しながらそれをなす。すると体がホワッと暖かくなって魔法の効果が実感できる。

 回復というのは悪い状態がよい状態に戻ることを言う。つまり回復魔法とはいろいろな物を直す魔法なのだ。だからつけるイメージで効果はいろいろ調整出来て、傷の修復、ウイルスの除去、毒の除去、骨折の治療とかなりフリーダム。肉体の維持を念頭に置いてこれを使えばかなり延命の効果が期待できる。


 ただこのやり方は多分に感覚的なものなので繰り返しの練習が必要になる。つまり考えるな感じろ、の世界だ。

 しかもよそ見をしててもできるようになるまで。

 まだまだ先は遠いな。


『うむ、よろしい』


 それでも現状での及第点は取れたらしい。

 さあ少し休憩したら次の魔法だ。


 彼が知っている魔法というのは特に印象に残った五種類だけだそうだが、これを覚えるだけでも結構違ってくると思う。

 どんなことだって継続は力なのだ。魔法を覚えてこれで繰り返しペークシスを攻撃していけばいつかきっと。その日はやってくる。


 今日も俺の日課は続いていく。













 そして半年の時が流れ、俺は【地より沸き立つ存在(もの)】【天より降り注ぐ存在(もの)】【魔力充填】【回復】【魔攻神槍】の魔法をマスターした。

 それはもう完璧に。


 だがそれでも状況は動かなかった。


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