捨てられない女
あたしには、家族でもないし友達でもない、だけどたまに会う女がいる。
二年程前……この女は、キラキラとした名刺を持っていたあたしに一目惚れをして、会ったその日に自分の家へあたしを連れ帰った。
名刺を見るとそれをビリビリに破り捨て、あたしの体を乱暴に洗ったわ。
他の人に触られた状態でいてほしくない……独占欲が強い女だと感じたの。
そして……焦らす様に、あたしの濡れた体が乾いていくのを見つめ始めた。
自分では決して乾かさず、自然に任せて放置……酷い女だと思うでしょう?
でもね、それはあたしの脆い体を気遣ってなの。
ずっと見ていては駄目だからって、勿論自分の事もしていた。
だけどあたしが目に入る度に、体の先を触って確かめていく。
女の体とあたしの体、一緒になる事を楽しみにしながら。
え? あたしの気持ち?
ふふ、一緒になるしかないのよ。
あたしの運命は、どうせ誰かと一緒になると決まっている。
不潔な人とよりは、あたしの体を洗ってくれて、綺麗な手でしかあたしを触らないこの女の方がずっといい。
……あたしの体が乾いた時、女は躊躇なく自分の体を合わせてきた。
最初は少し強引だったから、痛くないと言えば嘘になる。
だけど、少し日を開けて再び体を合わせるうちに、だんだんと……しっくりくる様に変わったわ。
女はあたしの体を気遣って、二日続ける事は無かった。
それでも一週間に1~2回は一緒だったから、疲れてきていないと言えば嘘になる。
でも、身がすり減る思いで相手をすればするほどに、あたしも女に惹かれていった。
離れている日が寂しくて、いつしか体を洗って……触って欲しいと強く思う様になってしまったの。
この行為が、あたしの命を減らしていると、お互い分かっていて。
それから二年、あたしの体はとうとう寿命という名の蝋燭が、燃え尽きる間近まで悪化していた。
女はあたしを手放さない、あたしも女と一緒にいたい。
だけど、脆かった部分はすでに壊れ、肌も劣化していくばかり。
体を合わせあう時の心地良さも、新しい子達に比べたら完全に負けている。
なのに、女はあたしの体を洗い、丁寧に乾かし、肌と肌を合わせあう。
何故だろう。
何故、こんなに大切にしてくれるの?
……ありがとう。
「あれ? その靴下穴開いてるぞ。」
「うそ~、お気に入りだったのに……。」
「確か猫耳がついてなかった?」
「うん、いつの間にか取れちゃって……もう終わりかな。」
ガシャッ
「ナイスコントロール! 見事なフォームでゴミ箱ショットを決めました!」
「夫くんってば、実況者になってるよ。」
……え?
ー終ー