地球最強だけど魔力が無い黒髪劣等種の鬼邪殺戮怒≪キャサリン≫
いつものアレ
俺は地球最強だ(ry。
さて今まで二度ゲーム世界を渡って来た地球最強の男である俺だが、また何かの拍子に転生する羽目になってしまった。
そして今度はゲームではなく、小説家になろうのどこかで連載されている小説の世界のようだ。
小説家になろうと言えば、現在妹が小説を連載中だ。
隠してはいるが兄ちゃんには分かっているんだぞ・・・まあこちらも奇声とともに蹴られたくはないので、気付かない振りをしてはいるが。
自分で挿絵も描きつつ半年で85話と言う結構な分量を書いているようだが、未だにPVはユニークで3,000に届かず、ポイントも38P程度しか付いていない。
でも兄ちゃんはお前の小説好きだぞ。
個人的には、なろうでは展開以上に設定にテンプレ的な物が目立つと思っているのだが、その中に髪の色で持っている魔力やその属性が分かってしまう世界と言うのがある。
黒い髪に生まれると魔法が使えない差別対象となる様なパターンが特に目立つように思う。
今回俺が転生したのは、その黒髪だった。
奇しくも名前はキャサリン、生まれも貴族の家の女の子と言うまさに最初の転生と同じだった。
しかし兄弟姉妹全員が色付きの髪で魔力にも優れているのが分かっているのに一人だけ黒髪と言う事で劣等種として露骨に差別されていると言う点が、蝶よ花よと大事に育てられすぎた結果増長して悪役令嬢になったソーサリーアカデミーの世界のキャサリンとは逆と言える。
一応言っておくが、妹の書いた小説とは関係ない世界だ。
月と黒鉄のラプソディーには持ち越せた魔法の力だが、ここでは世界における魔法・魔力的な法則が互換出来ない程に違うのか以前鬼邪殺戮怒として覚えた魔法を使うことは出来ないようだ。
しかし当面の問題はそこではない。
両親はキャサリン=俺を屋敷の中に閉じ込め、完全に人目に付かない所で「病死」させようとしていたのだ。
この世界では貴族の体面と血筋の中の魔法の才能が関係している事は容易に予想が付くので、まあ不自然な話ではない。
自分がやられる側だと堪ったものではないが。
何はともあれ、大体八歳前後で髪の色が決定するまでは様子見で普通に食事とかを貰えていたのは世界観的にラッキーだった。
出来れば屋敷の一室に軟禁された直後ではなくその前に転生者としての記憶を取り戻したい所だったが、そこは贅沢というものだろう。
兎に角、普通に栄養の足りている幼女程度の体力があれば、今の俺であればどうとでもなる。
以前転生した世界で、魔法有りとは言え世界の破壊者やら虚無の顕現やらに有効打を与えるには腕力を遥かに越えた身体操作の術理と言う物が必要で、元の地球ではそこまで必要とはしなかったものだ。
だがそれを手にした現在であれば、この細く柔らかく見た目通りの力しかない腕でも、鉄で補強された壁や扉をぶち抜く事も造作もない。
またその応用として習得した自身の気配を極限まで環境と同化させる術があれば、誰にも気付かれずに出歩く事は勿論、例えそいつの前に並べられた料理を食べ尽くしたとしても気取られない。
また、魔法は使えないと言っても魔力を観る事自体は可能だった。
訓練などで兄弟姉妹や両親、家来たちが魔法を使う時の気配や属性、その強さや動きなどもハッキリと分かる感覚はソーサリーアカデミーの時に培われたものだ。
当面はこの屋敷に留まり父の書斎で情報を見てサバイバルで食える物やこの世界に関する情報を蓄え、食い物や道具をパクりながらトレーニングに勤しむとしよう。
冒険者の様な、素性の知れない者でも金を稼げる手段があると良いのだが。
しかし今回は、以前の様な鍛え方はしない予定だ。
と言うのもこの世界のキャサリンに転生する前に神様が出てきて、男泣きに泣きながら「今度ばかりは過剰な筋肉は無しの方向でお願いします!何卒、なにとぞおおおぉぉぉぉぉぉ!」と土下座されてしまったからな。
勢いに押されたとはいえ承諾してしまった以上、十分な破壊力を得られるマッシブな肉体の構築は諦めるほかない。
最低限動ける程度に鍛えるに留めておこう。
違うそうじゃない、とか誰かが言った気がしたが恐らく気のせいだ。
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皆様お久しぶりです。
お元気でしたでしょうか。
私はと言うと『ソーサリーアカデミー~恋の魔法に掛けられて』『月と黒鉄のラプソディー』の世界に引き続き、現在また転生してしまっています(経緯省略)。
ですが今回はゲームから離れたのは良いとして、よりにもよって私が以前小説家になろうで連載していたその世界です。
よりにもよってを重ねて申し訳ないですが、更新に詰まって3か月ぐらい放置して実質エタっている作品です。
更にその上によりにもよってを重ねざるを得ないのは大変心苦しいのですが、私が転生したキャラも女主人公だった今までと違う方向性なのも問題です。
と言うのも、まだそこまでは展開が進んでいなかったものの最終的に死亡予定のキャラであった『サンディ』が今の私の転生先だったからです。
死亡フラグも治安が悪い種類の政治デモのプラカード並みに建てまくっているし、このまま行ったら1年以内に普通に詰んだー!します。
どうせ作者にして転生者としての記憶を取り戻すのなら10年ぐらい猶予が欲しかったですが、まあ言っても仕方ありません。
クソみたいな上司にセクパワ発言とともに無茶振りされるのはいつものことですしね・・・ハハッ、死ねよ。
あと転生するときに神の広間で「やったー鬼邪殺戮怒係がつかまったぞー」とか言ったやつ、お前の顔と名前覚えたからな。
誰が鬼邪殺戮怒係だこーろーすーぞー♪
私にはまだまだ遊んでいないゲームも行っていないイベント見たいアニメも、なろうで半年連載して38Pしか付いてないけど個人的に楽しみにしている連載もあるんだ。
さっさとミッションクリアして帰らせてもらう。
まあとりあえず、噛ませ中ボス的なポジションのため全属性の魔法が使える銀髪天才少女だけど努力嫌いという設定のキャラなのは幸いです。
死亡フラグを遠のけるだけの実力が得られる余地がありますからね。
言いたいことは色々ありますがまあいいでしょう。
転生の時の話から鬼邪殺戮怒の乱入も期待できますし、デッドエンドの回避のためなら奴の存在も歓迎してやりましょう。
さて今は何をしているかと言うと、魔法士大会の審査員です。
魔法の腕を競い合い成績優秀者には褒美と名誉、何より今後の仕事に有利となるキャリアの一つになります。
サンディ自身は天才と名高いので出るのを遠慮願われてるし、元の性格では出るのも面倒臭がったので不出場は原作通りです。
まあ出場した場合、サンディを暗殺する予定の邪神教団に目を付けられるのが早まるだけなのでここは原作(作者:私)通りの振る舞いをさせて貰います。
そしてこの魔法士大会は元の作中ではどんな意味のあるイベントかと言いますと、黒髪で魔法が使えない地味な平民のはずの女主人公が常識の枠に収まらない強力な魔法を使って見せ、見るものの度肝を抜き初めて広い場所でデビューするターニングポイントとなっています。
私が今回転生した役を考えると、逆に奴の方が女主人公になっている可能性は高いと予想していました。
演舞の部の舞台に上がった平民の黒髪の少女に、観客席は明らかにざわつきました。
投げつけられる言葉には下品な罵声も混じっていますが、ひとつ大きな深呼吸をして落ち着いたものです。
しかし、私には気になる点がありました。
(筋肉が・・・ない?)
忌まわしきあの野郎は、転生先で出会う度に元のキャラの概念をレイプしてマッスルフェノメノンしてきたものです。
ですが女主人公である目の前の彼女は、あまりにも普通。
いやこの世界においては彼女の存在が異常事態ではあるんですがそう言う事ではなく、あまりにも元のままの主人公過ぎるのです。
鍛えられた肉体とそれに由来する兵器として洗練された立ち振る舞いみたいな見て分かる変化がないのもそうですが、サンディの精霊眼の能力を通しても主人公のままだったのです。
この精霊眼は主人公も持っている能力ですがそれはさておき。
まずこの世界における髪の色と使える魔法属性の関係は、髪の色に対応する精霊を強制的に従属させ力を出させることができる、という設定になっています。
しかし女主人公はお人よしが過ぎるのが特殊能力に達した結果、精霊に従属を強いるのではなく友達になる事で魔法を使う事が出来るのです。
目の前の彼女も、喜んで周りをまわる精霊たちが見えています。
まあ精霊眼のようなレアな特殊能力でもなければ見えないので、髪色と精霊に関する事実を知る者は本業の魔法士でさえも極めて限られた者のみですが。
なお私がサンディに転生して真っ先にやった事が、強制的な従属以外で精霊とコンタクトを取る事でした。
世界観、と言うか小説のテーマの根幹がそうある以上、全属性の精霊を強制従属させる銀髪の能力自体が特大デスフラグの一種なのは恐らくはお分かりかと思いますが、つまり自分の存在自身が自分の作ったテーマに沿わないというややこしい状況を自力で何とかしないといけないわけです。
さて、女主人公たる彼女は人の背丈よりも大きな火球をいくつも生み出し、頭上高くで自在に舞わせると言う離れ業で人々の驚きの視線を集めています。
うん、確信しました。
彼女はあのアレではないですね、普通に原作主人公の『モーナ』のままです。
あの野郎であれば拳と大気の摩擦で炎を生みだして火魔法とか言い張る方が遥かに自然です(感覚麻痺)。
となるとあのファッキンマッスルはどこに・・・?
その時、目を離していた隙にストーリーは原作通りの展開を見せました。
黒髪の平民ごときがあんな強力な魔法など使えるわけがないインチキだ、と言いがかりをつける別の大会参加者の貴族の男が舞台に上がったのです。
このままバトルになって女主人公モーナが勝利、と言うのが予定されている展開ですが、その時漸くある意味待ちに待っていた異変が起こりました。
「待て・・・次の演舞は俺だろう」
「ぁあん?何だ、貴様も黒髪の女か。場違いな下民風情がすっこんd」
最後まで言わせてやればいいのに、最後の演舞者の拳が「邪魔だ」と貴族の魔法士の男の顎を捉え、上空数十メートルまで吹き飛ばしました。
そして彼女は名乗りを上げました。
「エントリーNo.45、鬼邪殺戮怒だ。このまま演舞に入る」
モーナを舞台袖に下がらせ、鬼邪殺戮怒と名乗った彼女は長く艶のある黒髪を翻し何かの構えをしました。
間違いない。
奴だ。
と言うか直接名乗りやがった。
だが、何かがおかしい。
筋肉が足りない。
あの年頃の平均的な女性よりは遥かに鍛えているのは見て分かるものの、全身を筋肉で固め兵器化してきた今までの忌まわしき例のアレと明らかに違います。
まあ黒髪ロング前髪パッツンで例の体格になっていたら、確実に魁!なんとか塾の中に出てくる中国からの刺客ですと言い張って不自然ではない感じになっていたでしょうが。
だけど、何にしろ普通では終わらないでしょう。
彼、あるいは彼女が舞台に上がった瞬間、この場に居た無数の精霊たちがそれに向かって一斉に平伏したのです。
髪色により強いられ従属でも、深い信頼で繋がれた絆でもない。
それは自らの意志で定めた主君に向ける絶対の忠誠、信義。
なぜそんな事になっているかは、まあ見ていれば分かりました。
鬼邪殺戮怒の拳が、何もない宙空で振るわれました。
目視も不可能な拳速は大気との激しい摩擦を起こし、炎が発生しました。
体内の魔力が魔法発動に使われていないのは分かったので、純粋に物理的に発生させたものです。
・・・何でこんな予想ばっかり当たるんだ畜生めー!
その炎はテニスコート程の面積を覆い、眩いばかりの輝きと審査員席まで届く熱がその温度の高さを物語っていました。
最大の問題はそこではありません。
炎とともに、その拳から巨大な炎龍が生まれたのです。
精霊の最上位存在としての龍なので当然一般人の目に見えるものではありません。
その龍はすぐに形を保てなくなりましたが、代わりに大量の火精霊が発生しました。
今度は竜巻を発生させる蹴りです。
竜巻は炎を吸い上げ、火焔の旋風が舞台を覆いつくしました。
やはり風龍が生まれてすぐに大量の風精霊に化け、辺りに散りました。
精霊たちはお祭り騒ぎです。
このタイミングで、空中に飛んでいた貴族の男が落ちてきました。
鬼邪殺戮怒に激しく踏みしめられた地面が割れ、地龍が飛び出すのと同時に衝撃で男が「ふぅあー!」と意識を取り戻しました。
・・・火、風、地と来て水はどうするんだろう。
出なくても別にいいけど。
一応舞台上から目を離さないでいると、気が付いて辺りをキョロキョロしだした舞台上の貴族の男に対し鬼邪殺戮怒は腕組みの不動の構えのまま殺気を飛ばしました。
前世でも、その前でもさんざん見て来たやつです。
巨大な鉄球で殴られたのに匹敵する精神的ショックにより男は白目を剥いて再び気絶、服の股間部分が内側からものすごい勢いで濡れつつ湯気が立ち上りました。
すると濡れたズボンから神聖な空気を纏った巨大な水龍が・・・いやそれはおかしい。
いや出てるもんは仕方ないけどおかしいだろ!
控えめに言ってかませ以下の男の失禁のションベンから生まれた龍が水精霊達に変わり、その誕生を天穹を狂喜乱舞して祝福する無数の精霊達。
お前らはそれでいいのか、いやいいならいいんだけどさぁ・・・。
言葉も出ない観客たち、そしてそれとは違う理由で何も言えない私。
ところで今回のあいつの転生先のキャラは一体何だったのか、と考えたところ一人思い当たるのがいました。
黒髪に生まれてしまった者の過酷な運命を描くために劇中に出した中に、貴族の少女と言うのが居たはずです。
名前は、ソーサリーアカデミーの悪役令嬢から取ってキャサリンだったはず。
・・・まあ、一般的な名前だし、著作権とか別にいっかなって・・・。
「す・・・スゴイです!鬼邪殺戮怒さん本当にスゴイ!何もない所から精霊を生み出すなんて!!!精霊たちも喜んでいます!」
「む・・・上手い手ごたえがあった時は何故か無から巨大な魔力が生まれていたのは勘付いていたが、精霊が発生していたとはな」
モーナが鬼邪殺戮怒に駆け寄り、わんこであれば尻尾を振っているであろう様子で興奮して話しかけていました。
さて、無事主人公モーナと鬼邪殺戮怒が出会ったところで私もそこに加わるのはさほど難しくはありません。
どうせ「あんなものインチキだ」という声が上がるので、それに反論して彼女たちを擁護すればいいのですから。
しかし割と面倒なミッションがずっと続くというリスクもあります。
この物語の原作者と言うポジションがバレてしまうのは絶対に避けたい。
だってこんな事実、面倒の元以外の何物でもないですからね。
転生前の話によると作者も知らないラスボスも自動生成されてるっぽいですし、展開や世界設定がある程度わかるというメリットなんか最終的には何の意味もなくなりますし。
まあ、いずれにしろです。
前回前々回同様に地獄の様なファッキン大冒険が待っているのは確定しちゃってるんだよなあああああああああああああチクショオオオオオオオオオオーーーーーーー!!!!!!
・・・早く帰って、異世界オ○ガの続き見たいなあ・・・はぁ。
「ど、どうしたのかねサンディ君。そんな深淵を覗いた様な表情をして」
「深淵の方がマシですよ、へっ・・・」
半端創造神アラサーオタ喪女OLの明日はどっちだ。
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