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8.宮廷で


ユハは、このときソランと共にいた。今や彼の名を王宮内で知らぬ者はいない。彼が王の側近になってから、多くの者がその頭角を知ることとなった。差し詰め平和なこの時勢で彼が活躍する場などそうある筈もないのだが、何よりもその幼さでの側近昇格は国民を驚かせた。齢にして15である。その少年に、この国の王は嘱望することを選んだのだ。

この時期の王宮は忙しかった。近々、カクシエンの王クレントがこの地、アサゴを訪れるという噂が実しやかにささやかれていた。その為の準備で王宮内の官僚は仕事に追われていた。カクエシエンとアサゴとの交流は決して深いものではなく、互いの情報については、昔の書物を見て少し知ることができるのみであった。官僚はその情報をまとめ上げ、会合に向けての段取りを構想するのに余念がなかった。王、ガンセンとクレントとの文通については極秘とされているため、例えその側近であってもその内容を知ることはかなわなかった。

王はこう言った。

「クレント殿の訪問は予期できない。カクシエンとアサゴとの渡航手段が安定しない以上、その到着も同様に未定だ」

ユハはその間、ソランの面倒を見るように言われていた。元より王の護衛という身分である以上は、国の政務には携われない。ユハもユハで、ソランと一緒にいた方が王と一緒にいるよりは気が楽であるようだった。ソランは退屈そうに遠望した。

「ユハ君、今日私勉強していて、違う世界のことを知ったの。この世界って、三つの島から成るじゃない。アサゴの西にある別の島。イカゴっていうみたい。地図で見る限りはここからそう遠くはないわ。私、遠くの世界のことを知ってみたい。いつもこの大きい家の中。そんな毎日つまらないわ。自分の目で確かめてみたいの。外の世界って、どんな様子なのかしら。この国と同じ?それともがらっと変わってる?」

ユハはイカゴのある方角を思い浮かべ、身体を向けた。ソランと共に行動せよという勅令は解かれる目処が立っていなかった。勝手な判断ではあるが、この慌ただしい国の雰囲気の中での「観光」は確かに良い気晴らしになるらしかった。今のソランの保護者はユハだ。どこで何をしようが、その選択権は彼に与えられている。彼女を守れるという確信がある彼にとって、遠征など怖くもない。元より彼にも異郷への好奇心があり、それはソランの興味と一致した。彼はソランと手をつなぎ、移動魔法を発動させた。


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