7.覚醒―覚悟
「発話能力の喪失、か。それは確かに考えないといけない」
「はい、ですからそう簡単に選べるものではありません。一晩置いた後に結論を出していただいても構いません」
一瞬、表情を曇らせたユハであったが、彼の固い意志を拒むほどの力はなかったようだった。
「大丈夫だ。決めた。もう知ってしまったんだ。ここで退くわけにはいかないよ」
「そうお答えになると思っておりました。恐縮でございます」
「もう一回訊いていいかい。どうして他の宮中の者ではなく、この僕に声がかかったの?」
「ユハ様に関しては、私が幼いころより目をかけていました故、ガンセン様からも信用に足る人物と思われているのでしょう。加えて、ユハ様の実力は皆の知るところとなっています。これで十分すぎるほどです」
「待って。この力を手にしたら、僕は王にどう使われるようになるんだろうね。四六時中付いていなきゃいけないわけだったら、またそれも考えものなんだけど」
「ユハ様は今までのような研修兵の身ではなくなります。ソラン姫様を含む、王宮の方々に仕える身になります。そして、辞退についてですが、実のところ残念ながらそれは認められません。王様の直々の命令ですし、会合が近いうちに開かれる、という情報しか私たちに与えられていない以上は、早いうちに力を制御し使いこなせるようになっていただく方が賢明かと」
「ここまできて結局拒否権はない、か。なら悩んでも仕方がないね。もう決めてある」
「わかりました。この部屋の右手に位置する部屋にて、儀式は行われます。私は外でお待ちしております故」
ユハはゆっくりと、神妙な面持ちで扉に向かった。と、振り向きざまに言い放った。
「執事、なら最後になるから言っておく。今日、僕はこの力を知って、自分の意志で手に入れることにした。それは王のためでもなく、この王宮のためでもない。何よりも、ソランを守るためだ」
扉に手をかけるユハ。すると今度は、執事が彼に声をかけた。
「ユハ様」
振り返る。
「御達者で」
申し訳ないです。現在ノルウェーで勉強中でして、更新が滞っております。ブログの方は更新していきますのでよろしければこちらもhttp://mypage.ameba.jp/?frm_id=v.mypage-header--logo