５．真実―力
「この場所が特別ってことなんだね、なんとなくわかったよ」
「そういうことです」
「ユハ様には力をつけていただきます」
「ここで訓練すると効率よく強くなれるとかかな？空気の密度が違うから、少しきつくなる、みたいな？」
「いえ、さらに手っ取り早い方法があるのです、尤も、この国の秘密に関わっていますから、他言は無用ですがね」
「何だろう、全く想像がつかないな」
「平たく言うと、魔法の力を底上げするというものです」
「ほう、そんなに便利な方法があったのか、すぐにでもやってもらいたいけど、どうやらそう簡単にもいかないようだね」
「多くの意味で危険なのです。まず、この魔法について説明します。ユハ様ならその後ででも、何故危険なのか自身でご理解いただけるかと思います」
「なるほど。続けてくれる？」
「かしこまりました。私は最初、『魔法の力を底上げする』と言いましたが、厳密には、違う種類の魔法を操れるようになってもらいます」
「違う？どういった意味で違うの？」
「『白魔術との契約』私たちはそう呼んでいます」
ユハにとって、この言葉にはなじみがなかった。彼自身、最近は自分で本を読むようにして知識を蓄えてはいるものの、「白魔法」など仄聞の覚えも無かったのだ。
「それは一体・・・白い魔法って何なんだろう」
「ユハ様は普段、魔法を使いますが、基本的には目視不可です。しかしこの魔法は、白くなって目に見えるようになります」
「待って、それだとあんまり強くなったってことにならないんじゃない？目に見えるって、損することも多いじゃん」
「確かにデメリットになることもありますが、それ以上に得られることは多いのです。使える魔法の種類がぐっと広がりますよ。勿論、既に取得している『普通魔法』との併用も可能です」
「だったら特に留意することもなく契約とやらをやってしまってもいいんじゃない？確かにそんなに便利な力だったら、あんまり人には教えられないよね。秘密ってそれだけ？」
執事の反応は、明らかに彼の把握を予測したものだった。そして、待っていたかのように続けた。ユハは、その答えに耳を疑った。
「一番大切なことが残っています。この白魔術との契約者は、五感の一つを失います」
