4.王宮―地下
彼がこの間に来るのは初めてのことであった。というよりは、このような空間があることを今まで知らされずに過ごしてきた故に、この場に連れてこられてきたときには不思議な感覚を抱かずにはいられなかった。地下という割には、この場所は全体的に明るい。この王宮の他の部屋も同じだが、統一感のある造りをしている。ユハはこの趣味が嫌いではなかった。
彼が物色しようとしているところに、執事が話しかけてきた。
「ユハさま。この部屋が何の為に用意されているかご存知ですか?」
「あんまりおおっぴらにしてないってことは、普段そこまで重要じゃないってことかな。それでも使い道があるから残してある」
「とんでもありません。その逆ですよ」
「ってことは、逆にすごく重要な場所ってことだ。貴重でそこら辺の信用ならない人たちには教えられない。僕がここに呼ばれたのは、僕に何か大切なことを教えようとしている」
「左様でございます」
「じゃあ、加えて、一定の時期が過ぎるまでは子供には教えられなかったって読みは合ってる?ソランが知らされてないんだもんね。あの子だったら、そんな特別な場所は絶対僕に教えようとしてくる」
「そうですね。ソラン姫様にも、少し早いかと思われます」
「もういいや。降参。この場所の存在すら想像できなかったのに、ましてやその存在意義なんて、だよ」
「わかりました。実を言いますと、この場所については、王宮内にも片手に収まるくらいの人数しか把握しておりません」
「ん?」
「ですから、この地下について知っている者は現在、私、国王様、そしてユハ様。この三名です」
「驚いたね、そんなに知られないほうがよい秘密が、この王室にあったなんて」
「どのような組織でも秘密があります。勿論。この王宮にも」
「で、なんで執事はそれを僕に教えてくれようとするの?」
「理由はいくつかありますが・・・一つは、手勢の強化ですかね」
「手勢?そんなものが何に必要なのか?」
「今すぐに、というわけではありません。ただ、会合には間に合わせねば」
「会合?」
「はい。近々、我らがアサゴの王、ガンセン様と、カクシエンのクレント殿がお会いになられます。その際にユハ様には付き人として同席していただきます」
「いろいろ難しいな。他の誰でもなく、なんで僕なの?」
「いいですか。アサゴとカクシエンの頭。この二つの『力』がこの世界を統治しているのです。重要な会であるということは理解いただけますね?」
「そうじゃなくて、なんで僕が、ということさ」
「それは、現段階で見込みのある従者がユハ様以外にいないからという単純な理由に拠ります」
「うーん、僕より力のある兵なんていくらでもいるじゃない」
「現段階の力で選考されたのではありませんよ。王様自らの判断です。期待値も込みですがね」
「とはいえ、会合には向こうの優れた従者も来るんでしょ?何も起こらないのが一番だけどさ、もしもの為に、ってことだったらその段階での一番強い人を付けた方がいいに決まってるよ」
「ですから、今日この場所という機会があるのです」
続きを執筆中なのですが、これ以上載せると本作へのネタバレを含んでしまいますので、そちらが終わってから更新しようかと考えています。
一先ず載せられるのはここまで。本作が2/25に終わるので、ホワイトサイドの続きは26から公開されるように設定しておきます。