10.白人形
彼は帰途、ソランに残してきた白人形のことを思い出していた。それは人の形相をしている。しかし、それ以外は人の要素を持たない。全体的に白に彩られた、物体とも気体ともつかないその存在。白魔法契約の際に、彼が最初に使った魔法であった。儀式の折に、彼はこう説明を受けた。彼は白世界の住人と契約をすることができる、と。その契約は2種類。一つは、多項召喚。これは白人形を、その数を限ることなしに契約することができる。しかし、一日に召喚できる数は一体という決まりがある。また、その型にもいくつか種類があり、それは術者が自由に決めることができる。彼はこの契約を選んでいないため、その詳細については知らない。
二つ。これは彼が行ったものだが―単項契約。これは一体の白人形との契約を指すが、その一体に指示できる仕事内容が多項契約時の白人形とは桁違いだ。それは、この白人形に人格を与えられるということから説明ができた。多項契約の白人形には、一体につき一つの命令しか与えられない上に、変更ができない。人形契約を過剰にすることで、術者は人形たちの収拾がつかない可能性もあった。そのことを考えると、単項契約のものは融通が利く。また、人格はどのようにして与えられるか。これは術者のそれまでの人格を鑑みて、自身が適切だと思った齢に所有していたものが、そのまま複製して与えられる。また、そのほかにも術者と視界を繋げることができる、白魔法術者以外には目視不可等、その特性は多岐にわたる。
ユハは、彼の契約時の人格をそのまま与えた。つまり、性格のみの双子が生み出されたということになる。彼は白人形に「ソランを守れ」という指示のみを与え、それを変えることはなかった。今回、ソランの元に忍ばせたときも、同様の指示が与えられていた。彼自身、何度か施行を行い、人形ができること、できないことを確認していた。基本的には、両者は力を共有しているようだった。つまり、ユハの経験は人形にも還元される。しかし、それは不可逆で、人形自身は術を学ぶことができない。現時点での人形のステータスは、人格を除きほぼ彼その者である。何も心配はいらない。そう考えているうちに、王宮―門に至った。




