お・し・ま・い・KETUッ!!
そんな俺に対し、さっきまでノリに乗って悪ふざけをしていた、坂○忍に似てる司会者は急に黙ってしまった。
下半身を突き出し床に屈服する俺を眺めながら司会者は、見苦しい姿を嘲るでもなく、冷笑するでもなく、ただただ哀れむように尻を見つめていた。
司会者は静かにマイクを持つ腕を降ろして口を開く。
「プリケツ……栗テツさん」
ベタな間違えしてんじゃねぇ!
「痔はね。ほっておくと大変なことになるんですよ。いかがでしたか?」
「ふりゅへぇ、ままっへろ(うるせぇ、だまってろ)」
涙で床を濡らし鼻水で顔面を汚くて歪ませる俺は、反抗する口すらもままならない。
司会者はため息をついて話を続ける。
「このカメラの向こう、リモートでアナタの病状を診察していた名だたる肛門科の名医達も、アナタが非常に危険な状態にあると声を上げていました」
絶対に他の診察方法があったはずだ。
絶対にっ!!
「醜態を晒せば御自身の病状を認めて考え直すと思いましたが、強情なお人だ。羞恥を嫌う大和魂が心の門。肛門を閉ざしてしまったのですね」
上手いこと言ってねぇからな!?
「とんだ肛門様だ」
たたみ掛けるな!
「少し荒っぽくなりますが、アナタを連れていくしかないですね」
司会者は語気を強めて言う。
「安心して下さい! 我々、【六本木肛門科医】が必ず治します」
司会者改め、取り出した白衣を颯爽と着込んだ肛門科の医師の言葉には、強い意志が感じられた。
部屋の扉をぶち破り5人の白衣を着たマスクの男達が、担架を運びながらなだれ込んで来る。
「な、なんだアンタら!?」
「彼らは私の肛門科で働く優秀な看護師です。もうね! アナタの部屋が狭くて全員入れないから真冬の中、彼らは3時間も待機してたんです。アナタのせいですよ!」
「クソみたいな言いがかりつけるな!?」
その看護師達は俺を乱暴に担ぎ上げると担架に乗せて押さえつける。
当然、「いだだだだだぁぁああ!!?」と俺は叫んだ。
すると担架を担ぐ看護師達の中から小さな声で「あべし」と言葉が漏れた。
だからケンシロウじゃねぇんだよ!
ボーリングのピンを全て倒すように扉を乱暴に開けて、家から出て江戸時代のカゴ屋のように上下激しく揺らしながら担架を運ぶ。
「い、痛い! 痛い!! イダイィィイイ!!?」
5人の看護師達は俺の尻に気を使うことなく、ある場所まで運ぶと、突風が叩きつけるように吹いていた。
驚いたことに、ヘリコプターが広い公園のど真ん中で、プロペラを回転させて待っていた。
坂○忍に似てる医師はプロペラの回転音に、張り合うかのごとく声を張った。
「どうですかぁ! イエッス、高○クリニックもビックリするようなヘリでしょ!?」
プロペラを回すローターの音が俺のスーパーデリケートなポジションをスマッシュヒットさせる。
そのままヘリの後ろに乗せられると、プロペラを回すローターの振動が直に尻へ響く。
「やめろぉぉおお! ケツが痛てぇえ!」
医師はパイロットの助手席へ座ると、大声を上げこちらへ投げかける。
「なんです!? ローターの音がうるさくて聞こえませんよ!!」
「お前、白々しい嘘つくな! ぶっとばすぞ!!」
「え? 『俺の尻は気にせず、ぶっ飛ばせ』なんて心意気だぁ!」
「テメェ! 都合良く話しするな!」
「私は感動した! OK、前は急げ。ヒップ・ゴー! 違った。レッツ・ゴー!!」
「やめろぉぉぉおおお!!!」
俺の悲痛な叫びは虚空へ響き渡った。
その後、彼らの献身的な治療の末、俺のイボ痔は完治したのだった。
§§§
六本木肛門科からのメッセージ。
「さぁ。来年のベスト・痔ーニスト賞は誰が受賞するのでしょう……コレを見ているアナタ。そう! アナタが選ばれるかもしれませんっ!!」