尻が、二つに分かつまで。
「では看護師の皆さん! 尻沢さんを手術台に乗せて下さい!」
名前が違げーよ!?
医師の一声で、ミュージカルのように、一斉に看護師が動き回る。
手術台を運ぶ者。
手術用の道具を運ぶ者。
そして二人の女性が、俺の腕を両側から持ち上げ、腫れ物を扱うように、慎重に手術台へ運び、うつ伏せに寝かせる。
「い、痛。痛たたたた……」
その、一連の動作の間、俺の尻に潜む、スーパーデリケートが敏感に反応、激痛を走らせる。
気が付けば、煌びやかなステージは、無機質な手術室に変わっていた。
坂〇忍に似た肛門医が、険しい表情で、手術用の帽子とマスクを着用すると、女性看護師達も、マスクと帽子で、女神のような美しい顔を隠す。
肛門医に、看護師達が、手術着を着せる。
陽気な司会者から、出頭医へ変身した肛門医が、美しい看護師達に指示をする。
「それでは、皆さん。宜しくお願いします」
女性達は皆、一礼すると、作業にとりかかる。
近付く女性看護師に、思わず俺は拒否を示す。
「ま、待って!? 心の準備が、あぁん!?」
看護師が俺の腰を持ち上げ、腰を浮かせる。
次は別の看護師達が、俺の下半身のスウェットを、パンツごと降ろした。
「はぁん!? やめ、ひゃぁん!」
さすが、女性とは言え、プロの看護師。
俺のけったいな肛門を見ても、動じること無く、見つめている。
全員が、ミスユニバースに選ばれそうな、女性達の視線を一心に集めた俺は、身体が、自然に発火するのではないかと思うくらいに、羞恥で熱くなる。
”創世記”――――エデンの園で幸せに暮らす、アダムとイブは、禁断の果実を口にすると、急に、お互いの裸体が恥ずかしくなり、それぞれ、局部を隠したという。
今の俺に比べたら、アダムとイブなんて、可愛い童話だ。
知り合いに、痔のことを知られるのが、恥ずかしいから、わざわざ遠くの肛門科を選んだのに、こんな美人揃いの病院で、俺は今、彼女達に尻の穴を見られ、この上ない羞恥を食らっている。
頼む、悪夢なら早く覚めてくれ――――。
一人の女性看護師が、両手にゴム手袋をはめると、別の看護師が、手袋の上から、水飴のようなローションを塗りたぐる。
ローションは、スポットライトに当たり、プラチナのように輝いた。
背中越しに、それを見た俺は焦る。
「せ、先生!? 先生が手術するんじゃないんですか?」
”医師”の返しには、揺るがぬ”意志”のようなものを感じた。
「安心して……彼女は当医院で、一番、上手い女性看護師です」
「う、上手くても嫌だ!?」
「尻沢さん」
「沢尻です!!」
「沢尻さん……緊張で、肛門が閉じていますね? さぁ、心を開くように、肛門を開いてみましょう」
「開けない!?」
「仕方ありません。ちょっと強引ですが、始めましょう……では、お願いします」
「やめ! はぁああん!?」
ぬぷぅっ!
女性看護師の、しなやかな指が、飢えたケダモノのように、俺の中へと入っ来る。
そして、”挿入記”が始まった……。
―――――――――痔・エンド