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宇宙(そら)へ逝こう  作者: hachikun
第二夜『母にして父なる者と銀の少女』
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地上へ

ちょっぴり、ぁゃιぃ成分が混じります。

大したものではないですが、いちおう要注意。


 所変われば評価も変わるもの。

 大気圏内に入って飛行状態になってしまうと、銀河有数の小型宇宙船とやらも、ただの大柄な飛行デバイスになってしまった。

 そりゃそうだ。宇宙航行用の装備なんて大気中では意味を持たないのだから。

 

 ゴーゴーと風が流れて行く中、機体はゆっくりと降下を続けている。

 大気圏内に入ってしばらくたってから、メヌーサから進路変更の指示があった。それ以外は特に何もなくて、ただ、はるか眼下に広がる荒野に向かい、走りながらゆっくりと降下を続けている。

 だけど。

「これで目的地に行くわけにはいかないよなぁ。遠いんだよね?」

「そうね。ちょっとまって」

 背後で何かごそごそしたかと思うと、

「目的地はチリットバークって都市なんだけど。方角はあっち」

 知らない名前だなぁ。あたりまえか。

「距離は?」

「ごめん、現在位置がわからないの」

「りょうかい、問い合わせる」

 こういう時はもちろん、○ーグル先生じゃなかった、総合情報受付(ルートロビー)だよな。

 よし、呼び出そう。

「『○✕△□シャンガス○✕△□○✕△□。○✕△□○✕△□』」

 ……うわっと、そうかシャンカス語か。

 あわててオン・ゲストロ語でよろしくと呼びかけてみた。

「『こちらシャンカス情報案内所です。リクエストをどうぞ』」

 おお出た。よかった。

 とはいえ、これじゃ現地情報には弱そうだな。現地語データもらうか。

「『シャンカス語の対訳データ、あるいは言語ファイルを』」

「『対訳データが多数存在します。まずその一覧をお渡ししますか?』」

「『よろしく』」

 そんなに対訳データがあるのか。

 対訳データというのはいくつかの種類があるんだけど、最も簡単なやつでいえば、言葉を与えると特定の手続きに従って翻訳サイトにアクセスし、情報をもらってくるヤツがこれにあたる。地球でいうと、付加情報を自由に設定できるショートカット、あるいはブックマークレットっていえばネットに詳しい人ならわかってもらえるかな?

 問題があるとすれば、自力翻訳でないことだな。まぁ仕方ないかな?

 そんなことを考えていたら。

「どうしたの?」

「いや、総合情報受付(ルートロビー)に対訳データをリクエストしているんだけど多くて」

「ああシャンカス語ね。ここ田舎だから言語データないしね」

「それなのに対訳データは多いの?」

「個人とかコミュニティ製作のデータがいっぱいあるのよ」

「ああ、そういうことか」

 なんか地球のフリーソフトウェア事情みたいだなぁ。

 オフィシャルがちゃんとしてないから、技術やら時間のある個人や団体が独自に作ってる感じで。

「そういうことならわかったわ。ちょっと待って」

 え?

 なんか背後でゴソゴソし始めたかと思うと、

「はい、ちょっとこれ食べてみて」

「は?」

 なんか知らないが、赤い飴玉みたいなものがヒョイと目の前に。

 なんじゃこりゃ、妙に懐かしい色とカタチなんだが。

「……ああ、○梅ちゃんの大玉」

「はぁ?」

「いや、なんでもない」

 むかし大好きだった飴菓子があるんだけど。もちろん日本のやつね。

 本当に小梅サイズの、赤い梅味のアメなんだけど、袋いりを買うと面白いんだ。中に一つか二つだけ、小梅でなく普通の梅サイズの大玉が混じってるんだよね。

 乾燥した冬に喉がいがらっぽくて、仕事中にこっそり舐めててさ。大玉くわえてて電話が来てパニックしたよなぁ。

 って、そんな昭和の昔話はどうでもいいか。

「で、これは?」

「これ翻訳アメ。中にシャンカス語とオン・ゲストロ語の変換データ……っていえばいいのかな?まぁ、そんなものが仕込んであるの」

「へぇ」

 それはすごい。

 何だその、どこぞの青狸のポケットから出てきたみたいな代物は。

 さすが銀河文明、もはやどういう技術なのかさっぱりわからない。

 あれか?

 もしかして有機物に多量の情報を仕込むとか、そういう未知の基礎技術があるのかな?

「でもなんでそんなもの持ってるの?」

「なんでって、わたしが覚えるのに作った残りだけど?」

 それもそうか。

 そんじゃ貰おうと思ったんだけど、ついイタズラ心が働いた。

「悪いけど運転中だから、口にいれてくれるとうれしいなぁ」

「ええ、いいわよ?」

 なんか後ろでクスッと笑ったのが聞こえた気がした。

 で、その次の瞬間だった。 

「!?」

 かわいらしい手に口をふさがれた。それだけのはずだった。

 それだけなのに。

 

 

 何か一瞬、意識が飛んだ。

 

 

 あ、あれ?今、なにしてたんだっけ?

 気が付くと、後ろからメヌーサに抱えられていた。なんか背後の感触が柔らかくて、見た目のお子様っぽさに反して、メヌーサがきちんと女の子なのがわかる。

 ん……なんか息が荒い?

 運転はどうしたのかと見ると、計器類とかハンドルとかが勝手に動いてる。

 なんぞこれ。

 これは、セーフティーの自動運転かな?よくできてるなぁ。

 そんなことを考えていたら、耳元でメヌーサの声が響いた。

 ちょ、耳元でためいきつくな。なんかゾクゾクする。

「軽い冗談だったのに、なんでこの程度で前後不覚になるかな?」

「……え?」

 えっと、なにそれ?

「さすがにちょっと看過できないわね。とりあえず、これ終わって戻ったらサコンにいろいろやらせましょ。マッサージとか触手風呂とか」

 なにその物騒っていうかR18っぽい言い方。

「文句があるなら慣れるのね。ちょっと触られたくらいで前後不覚になるとか、それってどうなのよ」

「いやいやいや、よくわからないけどメヌーサ、変なことしたんじゃないの?」

「え?ええ、性感帯に刺激かけたけど?」

 そらみろ、メヌーサが悪いんじゃないか。

「ちょっと待ちなさいメル、あなた状況理解できてないでしょ」

「え?」

「変なとこ触られてくすぐったいとか、笑うとか怒るとか、色っぽい反応出るとかキモイって引くとか、そういうのならいいのよ別に、それが普通の反応なんだから。

 なのにメル、あなた今どうなった?一瞬だけど前後不覚になったのよ?」

「……」

 えーと?

「あのね。

 たったあれだけで前後不覚になるのはちょっとおかしいってことよ。あきらかに過敏すぎる。もしかして接触テストしてないんじゃないの?」

「接触テスト?」

 なにそれ?

「ひとことでいえば、全身くまなく実際に触って感触テストすることよ。皮膚感触、温感、果ては性的反応まで、この手で触ってチェックするの。原始的だけどサイボーグ化の最終チェックじゃ地味に重要な項目なんだけど?」

 えーと、それって初耳なんですが。

「あ、でも私には不要じゃないの?だってアヤのおなかの中で育ったわけだし」

「それはこれとは別問題、機械だろうが人造生体だろうが接触は神経伝達の基本なんだから外しちゃダメだって!

 だいたい、じゃじゃ馬はどうしてこれを放置……あ」

 メヌーサは少し考えて、ためいきをついた。

 だから、耳元でためいきつくなって。

「あの子の情操教育やったのって、エドセルとエレちゃんだっけ。それじゃこっち方面は……あちゃー」

 なんか困ってるメヌーサ。わけがわからない。

 とりあえず質問してみた。

「エドセルとエレって誰?」

「ん?ああ、キマルケであの子の初等教育をやった二人よ。

 詳しい話をしても仕方ないからどういう人って部分だけ話すと、エドセルはコチコチの女騎士タイプ。エレちゃんは絵に描いたような典型的天然ボケね」

「ほぅ……」

 つまりキマルケ時代の人なわけか。

「まぁ、美容目的のマッサージとか微調整ならどこの星でも結構あるでしょう?地球でなんて呼んでいたのかは知らないけど。これが終わったら少し慣らしましょう?」

「それって必要なこと?」

「必要」

 断言されてしまった。

「そういや元男だものね。触られるのに慣れてないのはむしろ当然ってことかしら。

 地球では、男の子同士でさわりっことかしなかったの?」

「するかっ!」

 思わず鳥肌立った。 

「あーうんわかった、まぁ心配しないで。とりあえず何とかしてあげるから」

「う、ういっす」

 逆に不安になるのは私の気のせいなんだろうか?

 うーん。

 まぁマッサージとかなら地球にもあったし。もっとも私は男だったから美容系のマッサージは使わなかったし、聞いた話にすぎないけど。

 いやー、でも私って昔、バンコクの古式マッサージで拒絶反応起こしかけたんだけど?

 大丈夫かなぁ。


シャンガス:

 誤植ではないです。これは現地語の特徴で、「シャンカスにようこそ」「シャンカスで休日を」みたいな言葉を現地語で表現すると、シャンガスと訛ります。

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