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宇宙(そら)へ逝こう  作者: hachikun
第二日『銀河文明の学び舎にて』
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人物評価



 前半の授業が終わり、休憩が入った。

 次は選択教科ということで、私は見極めをしてくれるアディル先生のところに移動となった。

 そしたら。

「なぁ、ちょっといいか?」

「?」

 あら、またさっきの子だ。ポマスくんだっけか?

「アディル先生のところにいくんだろ?いいぜ、案内するよ」

「え、え?」

 なんだろ、ずいぶんとまた強引な。

 まぁ言葉は柔らかいし、無理強いしている感じもないんだけど。でも、なんでだろ。どこか強引な気がするんだよね。

 そんな一瞬の躊躇の後に、なんか別の人がきた。

「あー、そいつはやめといた方がいいぞ。下心全開だからなぁ」

「いや、ちょっとすまないんだけどさ。アルカどうしの話に口出ししないでくれないかな?」

 おいおい。

 声をかけてきたのは、赤いアルダーの人だった。

 ちなみに赤アルダーというのは、全身が本当に赤っぽいからそういうらしい。

「何がアルカ同士だ。てめーの利益になるなら何者でもいいくせによぅ」

「はいはい、全くこっちはわざわざ敵対する気もないってのに。蜥蜴ってのは喧嘩っ早くていけないな」

「なんだと?」

 うわ、なんかケンカみたいになってきちゃったよ。

 だけど。

(……あれ?)

 なんかこう……赤アルダー君の方が、私に合図にしているような気がするんだよね。

 そう。「さっさといけ」って。

 あー……そうさせてもらって、あとで改めて謝った方がいいかな、ここは。うん。

 よし、そうしよう。

 私はポマスくんに見えない角度から、アルダーくんにぺこっと頭をさげた。

 あ、さっさといけっていってる。

 うん、すみませんありがとう。

 私はさっさとその場を後にした。

 

 ところで。

 いきなりアディル先生に教室に案内された私は当然、先生の居場所なんてわからない。職員室みたいなところがあるにしても、その場所も知らない。

 仕方がないので、先生と思われるアルダー族の人が通りかかったのを見て質問した。

「すみません、アディル先生はどちらに。ダメなら職員室の場所でも結構ですが」

「む?」

「あ、すみません。今日からお世話になっておりますメルといいます」

「ふむ、そうか」

 その先生は何かを確認するような動作をすると、納得したように頷いた。

「この通りをまっすぐいくと、隣の校舎に移動する。そちらで聞いてみなさい。

 あと、初日でアディル先生が担当になるという事は、何かワケありなんだろう?」

「よくわかりませんが、たぶん」

 そういうと、先生はウンウンとうなずいた。

「アディル先生の『同類』なら、もしかしたら『感知』も可能なんじゃないかな?」

「感知、ですか?」

「うむ。俺はそういう能力はないから知らないが、過去にワケありでアディル先生にいきなりつけられた生徒は、たいていの者がアディル先生を感知できたからな。君も同類なら可能かもしれないぞ」

「なるほど……先生、ありがとうございました」

「いやいや。見極めなんだろ?さ、急ぎなさい」

「はい」

 よしよしとうなずくと、先生はアルダーの尻尾をふりふり歩いて行った……。

 なんか、いい先生だなぁ。

 先生に言われたように廊下を進みつつ、当時に考える。

(感知するっていってたね)

 思えば、初対面の人がドロイドかどうか判別できたけど、あれは『感知』してたんじゃないだろうか?

 もしそうなら、先生の居場所なんて簡単に割り出せそうな気がする。

 ただ問題は、その能力を意図して使う方法がわからないってことで。

「……」

 歩きながら、ネットするときの要領で意識を巡らせてみた。

「お」

 なんか、明らかに視覚とも聴覚とも違う反応がたくさん、飛び交っているのが見え始めた。

 えっと、これは何だろう?

 いろんな色の反応が見える。

 その中で、妙に禍々しく光る反応に意識を向けてみた。

「お?」

 あれ、これ……もしかしてさっきの、ええと、ポマスくんだっけか?

 気づいた瞬間に、何か意思のようなものが見えた。

『あの女は総帥に気に入られて、しかも連邦の姫に連れられてきたらしい。めちゃめちゃヒモ付きだぞ』

 いぃ!?

 な、なんか、周囲にいる奴らも似たようなのばっかりだなぁ。

『マジかよ。あの平和そうなガキがか?』

『いや、未開文明から引き上げられてきたって事は只者じゃないのは間違いないだろう。有望な人材じゃなきゃそんな事するかよ』

 うわ、ごめんポマスくん。道案内しただけのパンピーだよ自分。

 そんな事を考えているうちに会話は続いている。

『俺たちはコネがない。

 能力は日夜磨くだけ磨きまくっているわけだけどな、結局最後に生きるのはコネなのも事実だ。いかに能力があっても、上とパイプのないやつは結局は無能な上司に食いつぶされるからな』

『うむ、確かに』

『だから、あの女をどうこうしようってわけじゃない、むしろ助けたい。そうする事で俺らも恩恵にあずからせてもらおうって下心があるんだから、あの女本人に悪いようにするわけがないってのにディッターめ、ちくしょう』

『下心で友達なんて不純だって言うんだろ?まぁ、それはそれで間違いじゃないだろ?』

『だが放っておけばどうせ、俺たちみたいなの、いや、もっとひどいやつがアレにはりつくぞ絶対。あいつ目立つからな。

 だったら、俺らが捕まえて何が悪いんだ?』

『まぁな。実際、そろそろ動き出してもおかしくないわけで』

『ああ』 

 コネ目当ての接近だったのか。うん、そういわれてみたら納得の内容だわ。

 だけど、あの民族主義全開のところはいただけないなぁ。

 そんなことを考えながら歩いていたら、

「こら」

「ひゅっ!?」

 いきなり首根っこを掴まれて、私は変な声を出してしまった。

 あ、アディル先生!?

「こら男の子、どこ覗き見してたの?」

「冤罪です」

 いつのまに後ろとられた!?

「妙になれなれしく強引な子がいまして。で、先生を探知しようとしていて、偶然その子の本音を聞きつけちゃったわけですが」

「ああ、きっとポマスくんの一派ね」

「あ、はい」

 おや、そこそこ有名な子なのか?

「彼らは皆、成績優秀なのよね。徹底したアルカ至上主義なのは確かによくないんだけど、性格も素性も決して悪く無い。いろんな意味でもったいない子たちよね」

「あー……やっぱりそうなんだ」

 違和感はそのせいか。

 コネ狙いや民族主義は確かに小物全開。

 だけどおそらく、私を先生のところに連れて行ってくれようとした行動そのものは、たぶん本心。もしかしたら理由の方が後付けかもしれない。

 言ってる事とやってる事が違う?

 うん。

 だけど、その矛盾が人間臭いとは思うんだよね。

「そろそろ時間がないから歩くわね」

「はい」

 歩きながら、さっきの状況を説明した。

「赤アルダーか……ディッターくんね。彼は基礎能力が高く、しかもアレで好戦的じゃなく専守防衛型なのよね」

「へぇ」

「正義感が強く、守るべきものが何かを決して見失わない。ああいう子は警備隊とか衛士(えいし)とか、そういう部門で引く手あまたよね。そして、その性格ゆえにポマスくんたちと激突するわけだけど」

 なるほどね……。

「もしかして、わざと放置してあるんですか?」

「あの姿だけ見てたら不安になるかもだけど、お互いの主張を越えて手を組むって事もちゃんと知ってる子たちなのよ。前に犯罪者が飛び込んできて、女生徒を人質にしようとした時は見ものだったわよ?」

「あー、そういう事ですか」

 赤アルダー……ディッターというのか。彼は種族の関係で、少年なのか大人なのかはよくわからない。

 ポマスくんたちはよくわからないが、ポマスくん当人も見た目と中の人は違うっほいな。

 よくいえば大人の割り切り。別の言い方をすれば本音と建前。

 ここは『学校』かもしれないけど、彼らは決して『子供たち』ではない。そういう事か。

「まぁ、それはいいわ。そろそろ時間だし授業に話を戻すわね?」

「あ、はい。でもまだ始業のベル鳴ってないですけど?」

「ベル?なにかしら?」

「え?」

 アディル先生の反応で気づいた。

 そういえばさっきの授業の時も、授業はじめとおわりのベルとか鳴ってなかったっけ?

 案内されて途中で入ったし、なんだかんだで聞き逃したのかと思ってたけど。

 これってもしかして?

「この学校では、授業の最初と終わりとかに放送やベルで通知しないんですか?」

「あまり、そういう事はしないわね。端末ユニットを埋め込んだり所有している人が多いし、時計も各所の壁につけてあるもの。

 それに、その用途だと学校中に響き渡るように鳴らすのよね?」

「はい」

「ここは町の中だから、単なる合図のためだけに大きな音を定期的に出していたら、それはそれで問題になるかもしれないわね」

「……へえ」

 どうやら、ベルやチャイムを鳴らす文化自体がないっぽい。これはこれで面白いな。

 そんな話をしているうちに、何か大きな扉の前に出た。

 まるで巨人でも出入りするかのような、門のような大扉だった。赤く柔らかい素材でコーティングされているけど、おそらくは大きく重い。

「ここが見極め室よ。多少の危険があってもいいように、中には磁場障壁が張り巡らせてあるの。物々しい見た目でごめんなさいね」

「いえ」

 アヤのアレ、環境シミュレータって本人は言ってたけど。

 確かに、あんな便利なものがホイホイあるわけないよね。当然の配慮だろう。

「じゃあ、入るわよ?」

「はい先生」


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