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宇宙(そら)へ逝こう  作者: hachikun
第一夜『アンドロイドの少女』
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はじまり

ちょっと予定調整。

あと一時間後にもう一話だして、あとは明日になります。


2016/12/05 : 少し追記

「腹減った……」

 とある初夏の日。

 時間は夜になったばかりで、昼間の暑気(しょき)もだんだん消えて夜風に変わってきた。

 空は晴れているみたいだけど、ここは都会なので地上に光が多すぎて、天空の宝石の輝きはここへは届かない。ところどころ、その光に打ち勝てるほどの強い星の輝きだけが、まるで夜空に空いたピンポイントの穴みたいでもあった。

 そんな中、俺は家路を急いでいた。

 急いでいたといっても、実はまっすぐ帰宅するわけじゃあない。仕事の都合でデスクワークが多いもんで、少しでも運動になればと帰りは少し歩く事にしていたんだ。

 風が少し強いけど、概ね快適。

 道は軽くアップダウンしているし、まわりには建物がたくさんあるので見通しはよくない。だけど車の数は思ったほど多くはなくて、まったりと歩くにはもってこいだった。

 てくてく、てくてく。

 たいくつな時はスマホで小説の朗読を聞いたりもするんだけど、今日は普通に歩いていた。

 こんな街の中だと夜とはいえ賑やかなもんなんだけど、たまにピンポイントで静かになる事がある。そしてまたエンジンの音や何かで賑やかになる、それを繰り返す。

 その中を、俺はひとりぼっちで、まったりと歩く。

 かっこよく言えば、都会の孤独。身も蓋もなくいえば、ぼっち。

 それを寂しいと思う時代もあったけど。

 たとえば、俺みたいな仕事して、帰って寝るだけの生活していると、結局のところヒッキーとそんなに変わらないんだよね。違いは労働しているかどうかって事くらいで。

 それに。

 若かった頃の俺は今と違い、むしろ逆に出突(でづ)っ張りだった。あちこちよくでかけていたし、全然知らない土地に面白いものをみつけて通ったりもした。

 そう考えれば、今はその反動なのかもしれない。

 思えば、あの頃からちょっと人付き合いが下手くそな……悪く言えばコミュ障ってやつか?そんなとこあったと思うし。

 昔の人なら、家族を得たり友達の間で自然と中和されていった要素が、たぶんそのまま残っちゃったんだろうな。

 自業自得とはいえ、ちょっとアレだよなぁ。ハハハ。

 まぁ、大病をしないですんだのは本当に幸いだけども。

 

 もちろん俺だって少年の頃には夢を見た。若者だった頃には暴走もした。

 だけど、俺は凡人であってヒーローにも、そしてヒーローの近くにいて微笑みと共にアドバイスを与えるような、そんな存在にもなれないんだって、現実が教えてくれた。

 だってそうだろう?

 たとえば、仮面のヒーローには「おやじさん」がいた。バイク屋の大将だか喫茶店のマスターだか知らないが、自分の立場を持っていて、なおかつ孤独に戦う主人公のサポートをしてくれる存在だった。

 たとえば、巨大ロボットに乗る熱血ヒーローには、白衣を着た「博士」がいた。博士は天才でなおかつ熱血漢でもあり、「こんなこともあろうかと」という伝説の言葉と共に、ヒーローを助けるさまざまなものを喜びをもって提供していた。

 俺は彼らが好きだった。

 どんな立場であれ、彼らはカッコ良かった。輝いていた。

 

 だけど。

 当たり前だが、俺はそんなものにはなれなかった。

 それどころか、子供の頃から描いていた小さな夢の、ただのひとつすらもかなわなかった。

 

 夢を見ていた少年は、ただのおっさんになった。

 いや、ある意味、ただのおっさんにすらなれなかった。

 悲しい目をして、今も空を見上げているだけの……夢だけを追いかけて人生を踏み外した、ただの醜いおやじがそこにいるだけだった。

 

「ああ……星空か」

 歳をとっても星空は変わらない。

 子供の頃より視界は濁ったかもしれない。視力も落ちたかもしれない。

 だけど。

 むかし、家にあった安物の望遠鏡でワクワクしながら見上げた時と同じように。

 それでも星空だけは変わらないんだって。

 

 あの向こうには、どんな世界があるんだろう?

 あの向こうには、どんな人たちがいるんだろう?

 

 ああ、そうさ。

 そんな場所には行けないんだって、大人になった俺は知ってしまった。

 もうあの時の小さな子供じゃない。

 

 そして空ばかり見ているうちに。

 気がつけば、俺はひとりぼっちだった。

 

 だけど。

 だけど……夢を見るだけならかまわないだろ?

 誰に迷惑をかけるでなし、お金もかからないし。


 そんな中。

 俺は、その人に出会ったんだよな。


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