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宇宙(そら)へ逝こう  作者: hachikun
第四夜・とある旅路の日記
152/264

ゲルカノ教団にて

 ゲルカノ教団はその名の通り、銀河にある宗教のひとつらしい。

 聞いたところによると、ゲルカノという巨大なドラゴンが存在し、それをあがめる宗教なんだとか。まぁ、億年の昔からある途方もない宗教らしいし、当たり前だけど億年生きるドラゴンなんているわけもないし……というよりむしろ、銀河にもドラゴンの伝説があったって時点で驚いたんだけどね。

 そこで。

 大気圏突入で慌ただしくなったけど、まだ少しかかるらしいのでゲルカノとやらの姿について訊ねてみた。

「え、ゲルカノがどんな姿かって?」

「うん。後学のために」

 宗教っていうのは部外者には理解しづらいものだ。

 実は前、メヌーサにキリスト教について話をしたんだけど「聖者をあがめるのはわかる。でもね、わざわざ処刑された時の姿を描写したものをくばってそれを崇めているっていうのは……」とドン引きされたんだよね。それも、その姿にはちゃんと意味があることとか「人々の罪を背負って逝ったって意味とかもあるんだよ」とか、まぁキリスト教徒でもない私だけど、知っている限りの知識で説明したんだけどね。

 でも「言いたいことはわかるけど、ごめん無理」って苦笑いされちゃったんだよ。

 長い時間を生きて様々な宗教を見てきたろうメヌーサ。そんな彼女ですら、頭で知ってたり理解していても、感情として受け入れられるとは限らないのが宗教というもの。

 ならば。

 ひとならぬドラゴンを崇める宗教と関わるというのなら、それについて少しでも知っといた方がいいと思ったんだ。

 だけど。

 その話をすると、なぜかメヌーサには渋い顔をされた。

「なに、容姿の話は伝わってないの?」

「そうじゃなくてね、あまりメルに先入観持たせたくないのよね。偏見のない目で見てほしいの」

「?」

 何を言いたいのか、よくわからない。

「ゲルカノ教団がもし、わたしの予想通りの状況なら、メルはゲルカノそのものに出会う事になるのよね。でも、その時にヘンな印象から偏見をもって見ないで、メル自身の目で彼を判断してほしいのよ……わかる?」

 すみません、さっぱりわかりません。

 でも……『彼』て。

 神様を『彼』と表現するというのは……誤訳でないとすれば、特別な意味があるってことかな?

「よくわからないけど、今は知らないでいてほしいっていうのは理解した」

「ええ、それでいいわ。ごめんね?」

 偏見のない目で見てほしい、か。

 やっぱり、どうやらゲルカノとかいう神様は、メヌーサにとって特別な存在っぽいな。

「……」

 なんでだろう。どこかモヤモヤするものがあった。

 だけど対人スキルの低い私は、それが嫉妬心に起因するものだと知らなかった。

 

 

「メヌア様、おかえりなさいませ。そして始祖母様、ようこそおいでくださいました!」

 通信に出ていた竜人さんが、リアルに目の前にたっていた。

 うわぁ……なんていうか、うん。地球にいた頃の私なら「これ、なんてアルゴニ○ン?」って言いそうだわ。

 うわぁ……後ろにメイドさん姿のひとまでいるし。

 ちょ……まさか、リアルで○ルゴニアンもどきさんを見る事になるとは。


 それにしても……始祖母ねえ。

 いろんな意味で顔をひきつらせた私と違って、メヌーサはまぁ、当然だけど慣れた感じだった。

「皆は元気かしら?」

「はい、おかげさまで元気にやらせていただいております!」

「教団の方はどう?あの異端狩りの時代から少しは復興できたのかしら?」

「かつての隆盛にまさるとは言えませんが、まあそこそこは。

 幸い、ヤンカの神殿再起も無事完了いたしまして、直行便も就航いたしました。系外の教団支部も勢いを取り戻しつつありまして……」

 だけど。

 その慣れたさまも、相手の返答内容で一気に変わった。

「え、ヤンカ神殿復活したの?ほんとに!?」

「はい、なんとか」

 メヌーサの顔が、ぱああっと花が咲くような笑顔に変わった。

「じゃ、じゃあさ、使っていいかしら?」

「……は?」

「鈍いわね、だからヤンカ使えるんでしょ?

 だったら、わたしが個人召喚権使って、ゲルカノ召喚の神事をやってもいいかってこと。

 ダメ?まだ、さすがにそこまでは無理かしら?」

「な、なんとっ!?」

 今度は教団の人たちのほうに、ざわっと声が響いた。

 そして、何やら背後でざわざわと小声で論議がなされていたけど、

「はい、設備の方は問題ないようです!」 

「そう、ありがとう。それじゃあ召喚に行きたいんだけど、いつがいいかしら?」

「そうですね、次週頭はどうでしょう?こちらもそれまでに準備を行いますので」

「準備?」

「神殿参りの専用航路があるのですが、ちょうど移動中なのです。臨時便のための別機体がありますので導入いたします」

「え、いいのそれ?」

「予定や予算の事なら問題ありません。充分に余裕のある運行をしておりますから。

 また予算面でいえば、おそらく参加者からの参加費と寄付でペイできると思われますので、そちらもお気になさらず」

 ほほう?

 話からすると客船だよね?しかもたぶん、定期便とかに使うよりも立派っぽい感じの。

 そんな船の運航がペイできるほどの人が、そんな簡単に集まるって?

 ふむ……宇宙船の運航費なんて知らないけど、これって凄いんじゃなかろうか?

 そんなことを考えていたら、どうやらメヌーサも同意見だったらしい。

「船の運航費になるって、そんなに信者がいるの?それともいいパトロンでもいるのかしら?」

「港をごらんになられたのですよね?ヤンカ行き港の方は?」

「見てないわ。別になってるの?」

「港から小型船をお使いになられたのなら、新しい施設があるのをご覧になられたでしょう?」

「そういえば、妙に綺麗で大きいのが……え」

 そこまで言って、メヌーサは目を丸くした。

「まさかあれって、ヤンカ行き用なの?」

「はい、あれはヤンカ行き客船と、それから参拝客のチャーター船をつけるための港なのです。

 利用者があまりにも多いので一般の港と別に作ってあります……ゆくゆくは統合もありえますが」

「すごいわね……専用港まで作っちゃって、本当に大丈夫なの?」

「それがですね。ヤンカ行きの参拝船の収容力は約四千人なんですが、常に満席状態でして。

 既に港については初期投資もペイできておりますれば」

「……ここからヤンカに何日かけてる?」

「ヨンカ時間で十四日です」

「そんな長い航路で、そんなにお客様がいるの?」

「もっと短期なら多いのでしょうけど、さすがに寄付金でそこまでの贅沢はできませんから」

「充分でしょそれ」

 あきれたようにつぶやくメヌーサに、竜人さんは笑顔を浮かべた。

 ……たぶん笑顔だと思う。ちょっとこわいけど。

 

 そんなこんなを考えていた時だった。

「あ、そうそう。行く前にドロイド検査設備借りられるかしら?」

「検査設備ですか?」

「メルの身体検査をしたいの。この子、色々あってしばらくドロイドの専門家に見てもらってないから」

「なるほど、もちろん大丈夫です。今すぐご利用になりますか?専門医は必要ですか?」

「いらないわ。この子のボディはじゃじゃ馬と基本同じだから、わたしならどうにでもなるから」

「なるほど了解しました。

 ではメヌア様、メル様もこちらへどうぞ」

「悪いけどよろしくね。メル、いくわよ」

「ういっす」


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