プロローグ
以前投稿したα(アルバ)の第七版にあたります。
設定やストーリーの大幅見直しあり、第五版以来の大改変です。
ある部分は初版準拠に戻し、また本体も一人称視点に戻して全面書き直しです。
本作はαシリーズに属しますが、α本編が1980年代でなく現代であったらという前提に書き直しをしています。
ちょっと似非ファンタジーみたいになっちゃった本体と違って、
全体の雰囲気も1982年に書いた初版のスタイルに近いものにするよう心がけています。
何があるかわからない、それが人生であると誰かが言った。
ずっと昔、新入社員で入った瞬間に退職金の計算ができると言われた時代があった。いわゆるバブルの前のことだ。
それは「夢がない」という意味で未来を悲観する言葉だったが、西暦2016年に同じセリフを吐いたなら、どんな安定企業に就職したのかと言われるかもしれない。定年まで務め上げる時代は終わり、今は、いかに簡単にクビにならず、安定した仕事に就くかが一つの価値観、ステータスになっていると言えるだろう。
もちろん、そうでない人生もたくさんある。
しかし今は、自営業を一国一城の主でなく一種の冒険のようにも考える時代。景気が悪くなればなるほど公務員志望が増えるというが、人はまさに安定を求め、生きていた。
だけど、それは本当にその人の望みなのだろうか?
たとえば、かりに最低限の生活保障がもっと進歩して、本当の意味で「ひとはパンのためだけに生きる事をやめる」時代がやってきたとしたら、ひとは何を望むのだろうか?
おそらくだが。
そうした現実面の制限をとっぱらって自由に未来を選べるのなら、きっと人の望みは今も昔も変わらないのではないだろうか?
ある者は、平凡でも温かい家庭を。
ある者は、孤独とひきかえに無限の彼方を。
それが本当の意味で幸せなのか、それとも不幸なのかは誰にもわからないけれど。
だけど。
もし、今と違う人生を歩んでいたら?
それに思いをはせる事は、少しだけ、ほんのすこしだけ……あなたの人生を豊かにするかもしれない。
この物語は、現代日本に生きる、ひとりの冴えないオッサンの日常が崩壊する話である。
すごい能力があるチート主人公でもなければ。
すごい対人スキルがある突撃バカでもない。
本当にどうしようもない、ただのオッサン。
ただ、心のどこかに忘れられない少年時代の心を引きずり、迫る現実との間にはさまれて生きていた人。
そんな人に唐突におとずれてしまった、あまりにもアレな受難物語。
物語は現代、東京都の一角からスタートする。