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序章

別サイトで1年程、小説を投稿しておりましたが、久しぶりに書きたいなと思い、キーボードを叩いております。

思い付きと勢いで執筆していますので、更新に若干のムラがありますがご容赦下さい。

書き方や行間の開け方、その他ご指摘があれば遠慮無く言って貰えれば嬉しいです。


まずは、私の前に書いた小説に登場して頂いた方々に感謝。

その経験が、今回の小説に多いに生きています。

そして最初の1ページでも見て頂いた方に感謝。

あれから幾つかの山と森を抜けて、今居る場所に辿り着いた。


随分と身なりも汚れてしまい、背中に付着した枯葉の様な物を身体を小刻みに動かして払い落とす。


全身から漂う、汗ともゴミともつかない悪臭が嗅覚を刺激してくるが、この刺激にも慣れてしまった。


そんな麻痺し始めたとも言える嗅覚だったが、それでも急に降り始めた雨に濡れていくアスファルトの独特の臭気を嗅ぎ分ける。


まだこの鼻は自分の役目を放棄した訳では無いらしい。


突然の雨に戸惑う人の流れの切れ目を狙い、人目を避けながら、目の前の冷たくポッカリと口を開けた建物に滑り込んだ。


これで少なくともずぶ濡れになる事は回避出来そうだ。


問題はいつまでここにいられるか。


周囲の温度が、急に訪問した雨雲と冷たいコンクリートの建物のせいで下がり始める。


足先や背中にかかった水が染み込み、肌に接触すると更に体温を奪い始めた。


身動きせずにしていれば、自然に乾くだろう。


暗闇の中、辺りを見回して見るとここには人の気配は無く、雑多な物が壁に立てかけられ身を隠す場所もありそうだ。


少しは自信があった足も流石の長旅で悲鳴を上げ、足裏の皮膚が数倍に膨れ上がった様な錯覚を発信し続けている。


そしてその暗闇の奥に丁度いいスペースを発見、ストライキを上げそうになっている全身を今一度、叱咤激励しそこに身体を潜り込ませた。


滑らかな地面から伝わる冷気が多少身体に響くが、それでも一応の安心感からか、緊張し続けていた筋肉が一気に弛緩する。


そして耳で周囲の音を拾いながら、大きく息を吸い、鼻から勢い良くふうと噴射した。


その勢いで目の前に落ちていた小さな紙屑が、コロコロと転がっていく。


勢い良く転がっていくその紙屑の行く末を確認する間も無く、急激に重さを増した瞼が落ちてきた。


抵抗する気力も無く、全身の力が抜けていく。


睡魔の腕が意識を鷲掴みし、微睡みの彼方に連れ去っていくのにさほど時間は掛からなかった。




走る。


全力で走る。


背後から追ってくる脅威が大きくその口を開け、全てを飲み込もうとする。


全身で感じる『悪意』


ここまでに明確な脅威を発しているにも関わらず、その主の存在はとても希薄でつかみどころが無い。


ただ、それが何か。


その正体などは一切関係無く、ただ全身がそこから逃亡する事を命じていた。


こんな脅威はいつ以来だろうか。


住処を追われた時よりも、闘争で敗北を予感した時よりも、それは明確にそこにあった。


森の中を走り抜け、脳内の処理速度が加速し、感覚が鋭敏になっていく。


視界が狭まり、景色が後方へ勢い良く流され、やがて枯葉や土を蹴り上げる音や、耳元で騒ぎ立てる風切り音ですらも平坦で滑らかな物に変わっていった。


それでも脳内や思考に滑り込んでくる黒く輝く悪意。


嘆きか、悲しみか、憎しみか。


いずれにも分類出来ない感情が覆い被さってくる。


やがて脳から全身へ、そして末端の爪の先まで『諦め』とい意識が染み渡っていく。


それでも本能が疾走に必要なエネルギーを供給し続けた。


走り始めてから、一体どれだけの距離を進んだのだろう。


意識が膨張し、時間の経過も朧げになってきた頃、それでもその黒い声は明確に終わりを囁いてきた。


そして疲労を積み重ねた意識が、本能に逆らいその呼び声に返事をした瞬間。


目の前が光で包まれた。


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