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沈黙は金 雄弁はプラチナ  作者: 中田あえみ
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沈黙を破る 10

どんなことがあっても、次の日には必ず定時前に出勤すべし。


マギーは新入社員の時に、厳しい先輩たちからそう教わり、そのまま実行し続けている。ネイトの車で送ってもらったため、身体が楽だったのかいつもより早く目が覚めたので、時間的余裕をもって職場に向かった。


ただし、上司の愚痴につき合わされたおかげで、気分は何となく微妙だ。第一、ネイトは昨日自分が話したことを覚えているのだろうか。


30分前に机に到着すると、副社長室にはネイトがいた。ここまでは及第点である。


そして午前中いっぱい、マギーは昨日残業予定でこなすはずだった書類仕事を整理し、総務法務室と連絡を取り、目も回るような慌ただしさで全く副社長室に目もくれなかった。


一方、昨日のマギーの配慮で、かなり時間的余裕が出来たネイトは、取り敢えず自分の携帯端末でネットゲームをやっていた。まあ今日ぐらいいいだろう、と自分を甘やかさないとやってられない。前回の元カノに振られた時は、ショック過ぎてそのまま仕事に没入した。だが今回は、全く気力がわかない。そんなにユミが好きだったんだろうか。


自分に疑問を投げかけた時点で、ネイトは軽く笑った。


好きだったんだろうか……なんて疑問、結婚するつもりの女性に対して湧くものでもない。一体自分はどうしたんだろう。そもそも、初めから自分は結婚に対して何を期待していたのか。


……ユミに対して、何を期待していたのか。


チープだな、これも。ネイトは引き続き自分で自分を笑う。そして前の窓越しに、一心不乱にPCに向かっている自分の秘書を伺う。彼女(マギー)は今日も元気そうだ。何の変化もなく、淡々と業務をこなしている。


外の窓を見る。


友達どりが、他の家族鳥と一緒にダンスしている。空中で浮かびながら、くるくる旋回している、二羽でお互いの場所を交換しながら。一糸乱れることない美しい完成された飛び方。


何だか無性に鳥を見たくなった。そうだ、ユージーンを呼んでみよう。あいつも少しは鷹の扱いに慣れただろうか。

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