沈黙を破る 1
その人を見かけるとドキドキして、目が合うと嬉しくて。ほんの少しでも話せたら、一日がバラ色。
……要するに、恋に恋をしていた少女だったのだろう。
ただし、マギーはそのまま大人になった。
大学でも、誰かをひそかに好きになっては、勝手にドキドキして暮らしていた。でも、勇気をもって告白しても、相手には好きな人が既にいたり、体よく断られたりして、その度に泣いたけど、しばらくすれば次の「恋の相手」が出現した。
だが、キララ市に来てから、一人で暮らし始めて、本当に孤独になった。
自由というのは孤独なのだと初めて実感した。
そんな時、職場で声を掛けられた。いつも追いかけていたマギーは、初めて追いかけられたのだ。その人はマギーと友達になりたい、と言った。
友達?友人関係って、声を掛けなければ成立しないものなのか。
マギーは心中???で一杯だったので、お断りした。
普通友達って、何となく始まるものなんじゃないの?不自然すぎる。
程なくして、その人は他の女性と付き合い始めた。そこで初めてマギーは理解した。『友達』になりたいとは、『お付き合いしたい』の前提だったのだ。そんなの、学校では教えてくれない。当たり前だ。
だから、次に「友達になりたい」と言ってきた男性に対してマギーは答えた。
「普通の友達なら欲しいかも」
実際、映画を見るにしても、カラオケに行くにしても、レストランでちょっとしたコースを食べるにも、一人では不便だ。それだけだった。
普通の友達で良いと同意したその人も、2度ほど一緒に出掛けると、フェードアウトした。やっぱり彼女が欲しくなったようだ。マギーにはそれがさっぱり分からない。普通の友達でと最初に断っているのだから、その後勝手に期待が外れたと考えて急に連絡がつかなくなるのは納得いかない。




