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沈黙は金 雄弁はプラチナ  作者: 中田あえみ
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飛べない鳥は落とせない 5

ネイトの部屋は、元々トモミの部屋だったのでなじみの位置だったが、やはり主人が違うと、部屋自体が変化したように感じるものだとレベッカは思った。


トモミの時は、経済誌などがぎっしり棚に詰まり、一見してオフィスと分かる装飾だったが、今のネイトの部屋は、あちこちに美術品が置かれており、私室のような雰囲気である。天井画に気付いた時は、ひっくり返りたくなった。


「お呼びと伺いました、副社長」

「ネイトでいいから……。給与計算の外注先は決まったか?」

「はい。契約書のコピーが取り敢えず今日中に来ますので、受け取り次第メールを転送します」

「秘書室にもCCを入れてくれ。あと、人事考査だがどうなってる?」

「部門ごとに面談の後、結果を前社長が全て目を通して決定していました」

「なるほどね。秘書室から私のスケジュールを調整させよう。早急に面談をする必要があるから。昨年の人事考査資料が欲しい。現社員分、全員だ」


……急な人事だった。前社長の解任をキララグループから告げられたのは、その日の午後三時。終業間近で、ケイトが慌てて社長室まで駆け込んだことは知っている。その後しばらくして戻って来たケイトの眼は真っ赤に泣き腫らしていた。


そんなに惜しむ人材か、と正直疑問だったが、次に来る人間がお坊ちゃま(ネイト)と分かって、あれは悔し涙だったのだろう、と分かった。しかしまあ創業者一族なら仕方ない。レベッカは納得し、残業しつつも淡々と準備を整えた。


トモミ社長の性格は分かっていたので、新人のお坊ちゃまはお飾りだとも考えていたのだ。


しかし……給与計算の外注や人事考査の結果見直しなど、こういった指示は実務を知らないと出てこないものだ。

まさかお坊ちゃまは本気でキララ紡績を『改造』する気なのだろうか?

それに、ここ数年会社の業績が悪化しているのは隠しようがない。やっぱり売却するのだろうか、この会社を。その前により良い転職先を探し出さねば。

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