表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沈黙は金 雄弁はプラチナ  作者: 中田あえみ
66/172

従業員の都合 5

マギーがネイトの部屋を辞した後、ネイトは背もたれに体重をかけて天井を見上げた。そこには、ヨーロッパの宮廷にありがちな、天井画が描かれている。勿論ネイトの実家にもこういった装飾の部屋はあるから、見慣れた飾りだし、ネイトは好きだった。


「なーにこれ?お城みたい!」

元カノは、彼が週末にデザイナーを呼んで彼女が暮らしている部屋の天井に絵を貼らせたとき、目を丸くしたものだ。

綺麗だろ、とネイトが自慢げに言うと、

「そうね、実家の薬局にも描いてみようかな」と難なく受け入れた。


そういう事だ。


経験から、人は学んでいく。

学んでいくと、予め見通せることが増える。

それが心地よくなる。

そして……。そこから逃れられない。居心地の良さを手放せないのだ。


だが、それでも『学びたい』という種類の人間もいる。

そういう人間だけが、また新たな経験を求め、体験し、学んでいく。


マギー・スレイターはどちらの人間なのか。

窓越しに、席に戻ったマギーにネイトは視線を移す。上級秘書としては問題ない、彼女は。しかし会社として、経営陣として、もっと彼女には仕事をさせないといけないのだ。秘書として、もっと仕事をさせるか、それとも、他の畑で仕事をさせるか、ネイトは少し悩んでいる。そう、彼女の上司として……のはずだ。


「着信?」

マギーは携帯の履歴を確認すると、着信があったことに気付いた。今から10分ほど前だ。

番号を確認すると、あの新入り秘書のユージーンからだった。何だろう、業務で何か支障があったのだろうか。

先輩として、同業者(ひしょ)として助けたり支え合うのは当然だとマギーは思っている。そう、先輩として……のはずだ。

メッセージを簡単に送ると、ユージーンからすぐに返事は来なかった。

まあ緊急ではなかったのか、それとももう解決したのか、そんな状況だったのだろうと思い、マギーはまたPCの画面に向き合った。さっきのネイトとの話もある。


生化学事業部門の拡張、独立。


青臭い言い方だが、自分を雇ってくれたCEOの原案なら、やってみてもいいかなとも思う。まずは過去の資料を読んでみようと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ