表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沈黙は金 雄弁はプラチナ  作者: 中田あえみ
64/172

従業員の都合 3

「そんな冗談おっしゃっても困ります、ネイト。私にとってお給料は大切なものなんです」

「本気だよ、マギー。私は婚約者がいてね、近々結婚するんだ」

「結婚と退職が何か結びつくのでしょうか」

「分からないのか?寿退社だよ、勿論。結婚後はユミに……私の婚約者だが、彼女が働くから、私は困らないんだ」

今だって困らないと思いますが、と皮肉の一つも言ってやりたいマギーだったが、それよりも『寿退社』に反応してしまった。

「そんなの!婚約者さんが……ユミさんが反対すると思います」

にまーっとまたネイトは笑う。腹黒っぽいのは否めない。

「彼女は働きたいが実家が反対している。私がこの仕事を辞めるのは実家が反対だ。結婚すれば双方とも実家を出て、自分の好きに出来るわけだ。反対するわけないだろう。とにかく、こう言った事はタイミングだ。貴女も海外に関係のある仕事をしたいなら、今のチャンスをつかむことだ」


やりたい仕事……?

そんなのとっくの昔に諦めていた。

外国に興味を持ち始めたのは……多分小学校1年生の時だ。クラスの男の子が、家族旅行でハワイに行ったと言っていた。その当時、首都ハイランドは、外国人を見かけることが全くなかった。『ガイコク』という物が存在することを始めて実感した。でも……。

海外に行くという夢は、結局在学中には叶えられなかった。中高で留学した人は何人かいたし、大学でも交換留学制度がいたが、実家の両親は許してくれなかった。海外は危ない、女の子ひとりでは駄目だ、というのである。


何とか就職をキララで決めて、ようやく実家を出て一人暮らしをし始め、マギーは初めての海外旅行へ行った。

お金さえ貯められれば、旅行に行ける。そう思ってやって来たのも事実。


今更好きなことをやれと言われても、一切思い出せないし、何も思いつかない。

マギーはまた窓の外を見たが、ヘンな鳥さんは建物から離れたらしく、マギーの位置からは見えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ