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沈黙は金 雄弁はプラチナ  作者: 中田あえみ
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三年前 6

会社への忠誠?そんなものマニュー国になんかない。

というより、よほどの大企業でないと、忠誠心のある社員なんて育てられないのでは、というのが一般の考えである。


元予定の上司も、常によりよい職位を探していて、たまたまそれが、マギーの採用時期とヒットしただけ、なのであろう。


単に偶然ならいいのだが、この会社は……。


「分かりました。微力ながら全力を尽くさせていただきます」

取り敢えず、マギーの行くあては他にはない。ともかく一旦はキララ紡績に籍を置く以外ないのだ。そして今度こそ、だまされないようにしなければ。


そう、あのとんでもない話の後で。

人事室を出たマギーは、自分の机に向かう間、心の中の怒りを抑えるのでいっぱいだった。

確かに、あの上司は秘密主義というか、手の内を見せないように、秘書のマギーにすら自分のスケジュールをほとんど知らせようとしなかった。ただ、上司は上司である。彼は彼なりのやり方がある。それをどうこうするのは、一秘書としていかがかと思い、疲れているようなら、甘味を差し入れ、奥様の誕生日も忘れずにプレゼントを渡すなど、普通の業務は滞りなく行っていたと思う。それが、転籍?

会社に雇われてない?


失礼な話だ。


もしかして、契約書でも偽造しているのではないだろうか。

私が雇われた時、あの上司は「とにかく大きい仕事がしたい」とのたまわっていた。何でも、海外業務の引き合いをマニュー国の資産家に紹介し、投資させるのだという。そのためのプレゼン資料を何度も作ったのだが、引き合いに出される業務内容はかなりずさんというか、いい加減なものばかりで、これで大きな話に発展するのか、マギーとしてはかなり疑問があった。


ある話は、カンボジアの農業経営だった。

農地は押さえており、収穫するのはトウモロコシ。販売先も決まっている。ただ、水の引き込みをするのに、費用が掛かるので、その投資先を探している、というのだ。用地の写真も見せられ、隣地の収穫量のデータももらったが、イマイチ分かりにくい。水のインフラ、果たして外部からの投資がなぜ必要なのだろうか。


またある話は、3Dデジタルのテレビだ。

眼鏡のいらない立体画像が出るとかで、そのモニター画面が持ち込まれた。

それなりに立体に見えないこともないのだが、モニターが12インチのサンプルのみで、現実にホームシアターにするには50インチは必要だろうが、そのサンプル作成に資金がいるというのだ。

でも周囲からは「それだけいい技術なら、自前でやろうとせず、他の電器に売り込んだ方が、サンプルもすぐ作れるはず」という声が。

マギーも見ていてなるほどと思うが、上司が、映画会社に話を持っていくと息巻いているので、とりあえず資料は作った。


何度も何度も会議を設定したのだが、勿論話はまとまらなかった。


そのたびに上司は当り散らしたが、これも仕事の一部だと思い、我慢してきたのだ。それが、いきなり「雇えません」とは!

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