会社の都合 10
リッキーが作成したであろう、会議の配布資料をざっとマギーは見るとかなり憂鬱になった。4ページにわたり、アクションプランが挙げられている。
アレックスが口を開き、
「それではこのプランと、担当者をご覧ください。一応関連があるだろうと思われる名前を振り分けましたが、何かあればどうぞ」
トモミもネイトも事前に知っているから、資料は眺めているものの、特に読んでいる振りもせず、アラン、アレックス、マギーがぺらぺらと資料をめくる。
アランが、
「ブランドのイメージ戦略ですが、受注システムの改良としてデザインを変えるとなると。どうなるんですかね」
「IT部門と、広報との調整が必要でしょうね」
アレックスが答える。トモミは、
「営業から広報へ、ブランドについて顧客アンケートを作成するようにしているので、それを参考にしてもらえればと思うわ」
マギーはアンケート実施の部分を見て、今年の9月予定、の文字をぼんやり見つめた。
9月まで、自分は会社にいるのだろうか……?
かなり微妙なところだと思う。
というか、転職出来ていたいものだ。
自分の名前のある欄を見ると、
『新雇用会社への全社員移行 来年1月まで』
となっている。そうですか。自分がやるのか。ネイトは、主に営業と経理関係の担当になっているようだった。
リストラが秘書室の仕事か大分疑問ではあるが、一般に重役に近く社内の部署同士の直接の利害関係がない事から、選ばれたのであろう。ネイトの嫌がらせではないかと一瞬思ったが、これ以上の詮索は好ましくない。
そしてトモミが晴れ晴れとした顔で、
「マギーは新会社設立に関わってもらうので、これはかなり大きなプロジェクトだから、オフラインミーティングを生かして、どんどん進めていってね」
マギーはとっておきの『秘書』の顔で、かしこまりました、と受けた。
アレックスの議事は可もなく不可もなく、淡々と進んでいったが、営業方針の事になって、少し歯切れが悪くなった。
「ところで私からですが、この代理店を絞っていくという計画はどう進めますか」
アレックスの担当で、ネイトがサポートになっている。
トモミが、
「数字で決められないところも出てくるでしょうが、まずは統計を取って欲しいわ」
「しかし……代理店ごとの売上はありますが、商品ごと、特に新商品ごとの数字は現在ないので、これからの課題だと思っています」
「新商品を販売していた代理店は限られるんでしょう?」
トモミがズバリと言うと、アレックスは目を白黒させた。
「そ……そうなんでしょうか?全国に一斉発売だったのでは?」
アレックス副部長は総務法務室だから、まさか何も知らないとか?えーそれは違うでしょう、かりにも管理職が、とマギーは頭の中で突っ込む。




