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沈黙は金 雄弁はプラチナ  作者: 中田あえみ
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会社の都合 4

「無」が必要な時がある。OLとして長い経験の間に身に付けたスキルの一つだ。


彼女は(トモミ社長)、これからリッキーを頼る事が多くなるだろう。そういうように、ネイトが振っていくのだ。


トモミ社長を辞めさせる……。


本気だろうか。アランもアレックスもこのままではないだろう、もしもネイトがそのまま副社長でいたら。


CEO


自分と面接をした彼も、マギーがキララ紡績に入って2か月目だか3か月目だかで退任し、結局今まで後任人事はない。組織改編でそれ自体が無くなったのだ。

今ならわかる。造船が一肌脱いだに違いない。そしてそれは、ジョーンズ家の意向だったのか。


あーわからない。


マギーに分かっているのは、自分は働き続けないといけない、という事だ。まだ女の城であるマンションも買えないし、実家には帰れないし、結婚もしてないし失業は出来ない。


代理店訪問は定型的な秘書業務ではない。という事は、ネイトは自分を試しているのに違いない。


ネイト副社長に付くのか? トモミ社長を選ぶのか?

このまま秘書を続けるか? 他部署へ異動も出来るのか?


……それもこれも、会社が経営危機だからだ。

それは全く持って自明の理。


トモミ社長は……。野心家だ。それに、彼女は特にキララ紡績にいたいわけでもない。どんな業種でも、器用にこなせる人だ。そう思う。

しかし、ネイザン・ジョーンズ。彼の実家を考えれば、彼はキララ紡績を去るはずがない。むしろ、残ることに固執するはず。


求職(予定)中とはいえ、今失業するわけにもいかない。これが、サラリーマン・OL稼業というものだ。


すみません、トモミ(副)社長。

私は、貴女を妨害することはしないように尽くしますが、まずは自己保身させていただきます。ごめんなさい。


となると、三社の訪問だが……。一件ぐらいは成果を上げておいた方がいいか。

お坊ちゃまは、どんな成果を求めているんだろう。あんまり目立つのもいけないし、かと言って全部門前払いなら、やる気を疑われる(ないけど)。


口に入れた生ハムと薄切りのカマンベールに、さくさくしたトーストの触感を楽しみつつ、マギーの頭は回転を続ける。

自分は営業をしたいとも思わないし、興味もない。この点が、トモミ社長と全く違う性格なのだった。マギーは3年間、彼女と一緒に仕事をしたおかげで、営業職にこだわりを持つ人格を理解できるようになった。営業というのは、それぞれ個性はあるが、負けず嫌いで数字が全ての世界が好きな人たちなのだ。


勝ち負けはっきり出せるが、その分前例や理屈、規則などは意にも解さない。そうでなければ、数字など出せない。


マギーには違和感がある。潔癖症だとは思わないが、やはり仕事のやり方はなるべくフェアに、そして合意に従った形で進めたかった。しかし……秘書である以上、トモミのやり方に倣う以外なく、それを支えなければいけなかった。それが多少のストレスを生んだのは事実だと思う。


今回も、正論を通してみるしかないか。会社として、本当の事を告げるしかない。前社長のようなコネも実権も自分にはない。口約束みたいにホイホイなんでも大丈夫とも言えない。でも……。


それでキララ紡績とのビジネスを打ち切る、と言われたら、どうすればいいんだろうな。


もうすぐ昼休みが終わるのに、まだマギーの答えは出せない。


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