会社の都合 2
マギーは疲労困憊してランチタイムを迎えた。
ネイトは颯爽と秘書室エリアを通り過ぎていった。最初はあんなに無表情で無口だと思っていたのに、今回マギーは彼の表情の変化が見て取れた。機嫌がいいのか、足取り軽くリフトへ向かっていったのだ。
何あれ……
これから前社長の息のかかった代理店詣でが始まるというのに、楽しそうだ。変人というより、奇人だったのか、あの若さまは。
トモミは社長室から出てこない。当分は書類回りの残務処理をしなければならないのだろう。そういう時は、出前を取って部屋の中で食べるはずだ。案の定、ほどなく内線が鳴って、トモミからの指示を……え。
リッキーの内線が鳴ったのだ。
リッキーも、ディスプレイで誰か確認した後、二度見して、ぱっと受話器を上げた。
「……分かりました、手配いたします」
いくつかのやり取りの後、リッキーのセリフ。そして、置かれる受話器。
冷静になれ!
マギーは家賃を何度も思い浮かべて気を落ち着かせた。
「マギーさん……」
何とも焦点の合っていない顔で、リッキーはマギーへと報告する。
「大丈夫よ、何か特別なことがあった?」
「い、いえ。社長が、副社長からマギーさんの邪魔をするなと言われたとかで、私に緊急ミーティングの手配をしてくれ、と」
ほう。
お坊ちゃまネイト様がねえ。
マギーは一瞬昏い眼になったが、流石にそれは八つ当たりになると思い、すぐ普段の顔になった。
伊達にOL経験が長いのではない。生き残るためには、カメレオンになる技術も当然持たなければいけない。目立った成績など上げた時点で、周囲から足を引っ張られるに決まっているのである。
「その通りね、ネイト副社長の気配りは有難いわ。あと、トモミ社長のお昼の手配も聞いてあげてね。中で食べるつもりかどうか、その時は食べたいものを聞いて、お店にデリバリーしてもらうので」
「はい」
「トモミ社長用のお店、リストがあるから、今メールで送るわね。有難う」
普段通りにできただろう、とマギーは心を落ち着けると、リッキーも静かに「有難うございます」と答えた。




