おしゃべりなのは 6
「マギー、君は仕事として、周囲を手助けしようとは思わないのか」
意地悪かも知れないが、ネイトはマギーに直球で聞いてみた。
マギーは、軽く息を吸うと、
「勿論思いますが、まず自分の仕事として、社長と副社長の手助けをするのが先だと思っています」
といなされる。
変な奴だ。
まあいい。
「じゃあ、今日の午後と明日のスケジュールを調整してくれ。君の挙げた取引先にすべて向かう。担当者が捕まららなくても構わないから、誰かと会えるようにしてほしい」
「分かりました」
「ミーティング資料はこれから私が作成するから、あとで個別にメールで先に送ってもらうから。スミス社長から言われていることは?」
「特に何も。社長は今週いっぱいは社内にいる予定です」
「わかった。じゃあいいから」
マギーが部屋から出ると、リッキーが神妙な顔でPCの画面を眺めていた。
「どうしたの?」
マギーが声を掛けると、リッキーは、
「アラン室長は工場訪問で今日一日いないので、その間総務法務室の仕事をおさらいしています」
「それはご苦労様」
秘書というのは、秘書としてはスペシャリストに徹する反面、その付く上司の補佐をするという面で、ゼネラリストでもなければならないという、難しいバランスを取らされる。
リッキーは、今回重役秘書になった訳だが、これからどうやってキャリアを積むつもりなんだろう、とふとマギーは思った。
「ねえ、リッキー?」
「何でしょうか、マギーさん」
「この後、ずっと秘書をやる気?それとも、どこか他の部署に行きたい?」
リッキーはぎょっとした顔つきになった。
「マギーさん、それって、私に……」
「違う違う!辞めろとかじゃなくって、ただ単純に、これからどうやって仕事をしていくのかしら、と。私だって迷ってるし……」
そうだ、迷ってるんだ、私。
口に出して初めてわかる。
沈黙は金だけど、やっぱり、話し始めてから、自分の思いに気付くこともある。
おしゃべりは損だと思ってはいるが……




