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沈黙は金 雄弁はプラチナ  作者: 中田あえみ
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おしゃべりなのは 3

アランは少しトモミを見つめた後、小声で、

「という事は、ネイトに預けるつもりはないんですね」

「創業者一族には逆らわないわよ。キララ造船でもやり手だったのでしょう?」

「ええ。兄の方が表に出ていますが、裏で支えていたのは彼ですからね」

「でもねえ、ネイトって、何だか覇気がないわ。お兄さんはかなり印象が強いのにねえ」

そりゃ、貴女の第一印象に比べれば、誰だって影が薄くなりますが、と軽口を叩こうとしたが、そうだ彼女は社長だった、とアランは口を一文字に結んだ。

それを反対と取ったのか、トモミは続けて、

「今回は、ネイトの意思ではなさそうなのに、こんな提案をしてくるんだから、可愛げがないわ。ちやほやされるとでも思っていたのかしら」

「受け入れられるとは考えていない、言わば捨て身の提案に見えましたが」

二人の目が合う。

多分、思っていることは同じだろう。

ま、俺は人妻には関心がないけどね、とアランの軽口は(心の中で)続く。


ネイトは実家住まいなので、部屋の掃除も洗濯もしたことがない。すべてお手伝いさんがやってくれる。着替えもそうだ。

ただ、工場長の時だけは、平日だけ寮に泊まっていた。その時に、一人暮らしに必要な事は大体覚えた、と思う。


自分は邪魔にならない人間だ、と考えているし、その通りだとも思う。なのに、家の中にいると、何となく自分が邪魔な人間に思える。嫌な感覚だが、慣れてもいる。

だから、キララ紡績の人間にどう思われようが、基本、どうでもよかった。


あの提案を、どう対応するんだろうか。

表情一つ変えなかったマギーのように、淡々と進めていくのか。

それはそれで詰まらないが、別に俺の知ったことではない。そこまで考えにいたり、何だか自分も嫌な人間になったように思う。どうした心境の変化か。マリッジブルーだろうか。


そこで、ベッドから降り、シャワー室へ向かう。明るい窓から、ゆっくりと鷹が上空を旋回しているのが見える。

ああ、友達鳥だなあ。すぐ判別できる。

ふっとネイトの顔がなごみ、口笛を吹きながらシャワーを浴びていた。

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