白金と銀 10
キャリアプラン?
マギーは目をまたたく。キャリア?何それ?お給料じゃなくて?
「どんなお話でしょうか」
自分でも思いがけなく、落ち着いた声が出せた。すると、ネイトは当たり前のように言った。
「退職まで15年だとして、これから何をするのか聞きたい」
え?これはクビって事?マギーも流石にここまでの覚悟は出来ていなかった。いつもいつも先に「辞めます」と言って職場を後にしたものだ。
これが、歳をとるってことか。
若いころは、あふれるくらい選択肢があったのに。いや、とマギーは思い直す。ここはキララ市、マニュー国で一番経済活動が活発な都市だ。ここで無職になるなんて考えられない。それとも、自分が甘すぎるのか。
「あなたの作った基礎データだが、単なる情報のコピーだ。嫌がらせかい?」
「そういうわけでは。前提をまずは収集しただけです。確かに、全て客観的な数字だったのは認めますが、ネイトが分析された後、方向性を決めて、資料を作るつもりです」
「あなたはこの会社に3年いるんだよ。しかも前社長やスミス社長と一緒にだ。隠したいことがあるなら、今のうちに私に言った方が身のためだね」
「何もありません!」
マギーは一瞬怒りのあまり気が遠くなった。つまり、自分も収賄に関わっていると?
しかし、と考え直す。確かに、秘書が砦になったり、運転手が隠れ蓑になったりすることはあり得る。……え?運転手?
え?
ネイトは無言で、座るようにと椅子を指し、マギーはすとん、とそのまま腰を下ろした。すると待ち構えたように、ネイトは椅子の前に立ち、抑揚のない声で、マギーを見下ろす。
「会社にどれくらい貢献できるか、それを証明してもらいたいな。大変申し訳ないが、午後7時までに資料が欲しい。それを持って、夜7時半からミーティング。あなたも出席だ」
は?
秘書が同席?そんな前例は……。
「はい」
私、馬鹿だ。マギーは自分を呪った。




