白金と銀 3
ネイトは、部屋を出て、マギーを呼んだ。
「部屋に入ってくれ、マギー」
マギーは幻聴かと思って、思わずネイトを眺めたが、彼は彼女を呼んでいた。
リッキーは後ろで息をのんでいる。
「はい」
自然に立ち上がり、ありったけのプライドを集めて、穏やかに副社長室に入った。
懐かしい部屋だ。
スミス(元副)社長と遅くまで話し合った。そして、色々議論もしたし、笑い合いもした。しかし、その時間はもう過去のものだ。
何より、マギーは転職を決意している。しかし、まだ活動を始めだした身、何かを悟られるのは馬鹿げている。
座ってくれ、とネイトは机の前の椅子を指したので、マギーは座った。
それを見て、ネイトは口を開いた。
「新法人を設立し、従業員を移す。そのための手順と期間、費用を見積もるから、基礎データが欲しい」
「はい」
「今日の午後3時までに必要なデータを。社長は君の事を優秀と言っていた。当然問題ないだろう」
ここで怖気るくらいなら、秘書は務まらない。
「はい」
マギーは頭の中で作業工程を計算する。多分昼食時間はほとんど取れないだろう。しかしまあ、間に合わせることはできる。
「ターゲットは、150人だ」
「はい?」
「リストラの人数だよ。まずはあなた自身の案で構わないから、どこから減らすか、それも入れてくれ」
「……分かりました」
勿論、何も異存はない。
しかしこの副社長馬鹿か?リストラ?150人?その数字どこから出たんだ?
だが、上級秘書として、口をはさむのはいただけない。
マギーはじっとこらえた。




