白金と銀 2
「分かりました。それだけ自信があるのなら、私としても心強いわ、ネイト。それではアラン管理部門長の後任をお願いしましょう。アランは、総務法務室室長へ転任させたいと思います」
管理部門……商品開発のようなマーケと技術の管理と、経理も一緒になっている、細かい部門である。しかし、ネイトは何も言わなかった。
ふっ、とトモミは一瞬笑った。
ぴん、と部屋の中の空気が張り詰めるが、いったい誰が気づいたろうか。
「前社長の経営方法を踏襲しないよう、きっちりと線引きをしてもらいたいの」
「それには」
ようやく、ネイトが口を開く。
「新法人を設立し、雇用者をそこへ移すべきです」
「なるほど。それで?」
「それだけです」
社長相手にこの態度。全く、創業者様は恐れ入る。トモミはぐっとこらえた。
何しろ、50年前に分かれたとはいえ、キララ造船(正確にはその名前は今はないが)が母体の、キララ紡績であることは間違いない。工場も入れて、約500人の雇用が、彼女の肩にかかっている。
「じゃあ、ブループリントが欲しいわ。次の経営ミーティングまでに出したいので、来週月曜日に資料をそろえてもらえるかしら」
「分かりました」
一瞬、柔らかい雰囲気が生まれたのは気のせいか。そのままネイトは部屋を出た。




