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沈黙は金 雄弁はプラチナ  作者: 中田あえみ
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ライフプラン 11

マギーの言葉を聞いて、トモミは小首をかしげた。

「前社長……。そうね、その通りよ。あの時は営業妨害をはねのけようと大変だったし、何とか私が数字を出していたのは知ってるでしょ?あの社長……まさか新製品を横流ししていたとは……!」

あの時の代理店訪問や営業の苦労を思い出したのか、一瞬トモミの背から殺気が流れた。

「誰にも気づかれないようにやっていたんでしょうね」

「冗談じゃないわ、誰だって知ってたのよ、工場側ですらね。知らなかったのは工場長と私くらいじゃないの?アランだって気づいてたんだけど、流石に私には言わなかったんですって。私は思った事がすぐ顔に出るから、言ったらアラン(自分)の身が危ないと思った、って今更言うのよ」

「あ、そうなんですね。だからコミッションの件も知らされなかったんですか」

「コミッション?」

怒りを含んだ声から、怪訝な声になったトモミ社長を見て、マギーは正直少し慌てた。自分は何か間違ったのだろうか、いや、そもそもこんな事をトモミ(社長)に尋ねるのがアウトだと思われるが。

「不正コミッションの件ですよ、工場の従業員が前社長と組んで、不正資金を分け合っていたんです」

「……………」

奇妙な沈黙が流れた。トモミ社長は何度か瞬きをして、少し考えていたが、次にはゆっくりとした声で、

「それは不正かどうかは分からないわ」

と言った。

逆に今度はマギーが瞬きをする番だった。

「賄賂を貰っていたのに、不正じゃないんですか?」

トモミ社長は表情を一切変えずに言い切った。

「賄賂じゃなかった、ということなのよ。マギー(貴女)は帳簿を見た?」

「いえ……」

秘書室が経理人事部門から自主的に資料を取り寄せるなど起こり得ない。すべては上司の指示によらなければならないのだから。

「帳簿を見ればわかるわ、綺麗なもんよ、一切何もないの」

「そ、それはそうです。だから不正なんです」

「いや、不正じゃないのよ」

トモミ社長は、きっぱりとした口調で言い切った。

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