ライフプラン 9
アレックスの話を聞いた後、ネイトは顔色一つ変えなかった。
「つまりは、前社長は破産従業員を使って、代理店からの不正コミッションを現金受取させてたと、そういう話だな」
アレックスはうなずいた。
「運転手は気づいていたようですが、特に報告はしていないでしょう。工場長からは副社長に行っていると思いますよ」
「トモミ社長か」
ネイトはちょっと苦い顔になった。
「いけませんかね」
アレックスは飄々という。ネイトはじろりとアレックスを見て、
「君は辞めるからいいさ。辞表は受け取ったよ、ありがとうと言っておこう。しかしタイミングが悪いな、造船はトモミ社長に期待している。前社長解任直後なら、追い出してやったが……」
「今のままで十分追い出したでしょう」
「それは彼女次第だ」
アランも付けてやったんだからな、とネイトは美しい骨董のカップでコーヒーを飲む。
アレックスは微苦笑で、
「副社長はケネス造船社長と何かあるんですか、家族の問題とか。私にとってはもはやどうでもいい事ですが」
「ケネス社長と……?」
昨日だったか、兄貴が両親に報告したのは知っている。
婚約すると。お相手はマニュー国営放送局のニュースキャスターだった。名前はもう思い出せない。
兄貴は実はこれで3回目の婚約で、前の2回は兄貴が振っていた。最低な男である。
しかし、本当にモテる。女性心理がネイトには全く理解できなかった。
そのキャスターだって、実は前総理の外孫である。バレバレだ。ケネスのライフプランはただ一つ、キララ造船を手に入れ、もう一度ジョーンズ家を表舞台に出す事なのだ。その為には自分の婚約だって使う。そしてそういうぶれない男であるのは、家族から見ても立派である。そして両親の自慢の息子だ。




