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沈黙は金 雄弁はプラチナ  作者: 中田あえみ
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ライフプラン 6

一カ月ぶりの更新でした。すみません、リアルが大変忙しかったです。ネタになればいいのですが。

はあ、と心の中でマギーはため息をついた。

プロジェクトが終わったとして、新会社になったとしても、会社勤めをする以上、こう言った腹の探り合いは続くのである。

「副社長の管理責任……、それは無理なのでは?彼はジョーンズ家の出身で、今現在の親会社社長の弟ですよ、アレックス副室長」

嫌味になると思うが、何となくマギーはアレックスを職位付けで呼んだ。つまりは、社内での立ち位置からして、空気を読みなさい、ということである。

アレックスは飄々とした空気を変えなかった。

「それはそうだね、副社長秘書のスレイターさん。となると、工場がこの件を見逃していたら、工場長の責任、工場が報告をしていた場合は、トモミ社長になるのかも知れないね、人事の最終決断は社長だし」

「一工員の異動に、社長(トップ)が絡むことはないでしょう」

「しかしね、もしも工場側が購買担当の『何か』不正疑惑を報告していた場合は面倒だと思うよ。今やトモミ社長は造船へ異動だ、造船側の社長の肝いりだろう?造船の株主が嗅ぎ付けたら良くないだろうな」

「……購買の不正はあったんですか?」

「あってもなくても、報告自体はあったよ」


それはそうかもしれない。

マギーはプロジェクト・ラブの担当の時、工場へ直に行って工場長に会った事がある。その時に彼は、新製品の案を述べてくれたが、中々本社に通らなかったと嘆いていたっけ。報告書自体は紡績(ウチ)へ来た可能性はあるだろう。


「そうですか」

それ以外に言いようがなかった。アレックスはそのまま、

「造船の筆頭株主はジョーンズ家に戻ったが、勿論一般株主もいる。彼らが騒ぎ出したら面倒だしね、不正があったら」

「ちなみにどんな疑惑なんですか。まさか、前社長時代からのなんですか?」

そこで初めて、アレックスは重い表情をした。考えるような、言葉を選ぶような。

「それはどうかな、実は私は報告書自体を見たわけではないからね。ただ報告があったのは知っている。破産した従業員だって、いきなり破産したわけではないだろう、宣告する前の数年間は金策をしていたはずだ。そこに前社長から内々に何か頼まれたら、渡りに船じゃなかったのではないかな」

「……トモミ副社長が社長になり、ネイト副社長になって、営業方針が変わり、購買方針も変わったから、購買も甘い汁が吸えなくなったんですね」

「多分ね。まあ君も知っておいた方がいいよ、この会社に残るのなら。会社組織というのは、色々な要因が絡み合い、一つの集合体を形作ろうとしているものなんだ。秘書業務が長かったから、実務というのはピンとこないかも知れないけど、君にはきっと理解できると思う」

「……そうでしょうか……」

ひらり。

アレックスは破産管財人からの手紙をマギーの前に置いた。

「この件は私から、副社長へ報告しておきますから、スレイターさんもそのおつもりで」

どうせ私はもうすぐ辞めるからね、と。

「次の仕事は決まったんですか?」

「ああ、今度は総務室長。実はウチとも取引があった銀行でしてね。最終日に教えますよ」


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