第二話 旅団結成!!
「どうしよっかなー」
現在ある問題に直面しています。
グーー
(腹減ったーーー!)
見渡すも、焼けた城や壊れた家、破れた服や死体ばかり。
「まぁ、ないわな。」
他の人の家に入るのは日本人として躊躇われる。
ではどうするか。
「狩りか。いや、でも血抜きの仕方知らんし…。ほんまどないしよ。」
途方に暮れ、日も暮れ始める。
こんな時、漫画ならなにか起こるのだろうか。
「大神さん、なかなか過酷なとこ送ってくれたねー。」
半分怒りをまぜながら、一人寂しくつぶやく。
街を歩き、めぼしいものがないか探し回る。
(食料だけがないな。)
下には剣や鎧がころがっているが、食べ物は全くない。
腹がどんどん減っていく。
眠気も襲ってくる。
辺りも暗くなり、これ以上の捜索は不可能だ。
(今日は寝るか。)
九牛は大きめの路地裏に入り壁に背を預ける。
藁を被り、左手をお腹に乗せ、深い眠りについていった。
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次の日。
太陽は頭上で煌めいている。
「ふぁ~。ちょっと寝過ぎたか。」
九牛は大きなあくびと共にゆっくりと立ち上がる。
ガシャンッ!
なんだか大通りのほうがうるさい。
寝起き早々の大音に少し苛立ちを覚えながら、静かに壁に隠れて通りをうかがう。
「おい!あるものすべてここにおけ。」
そこには盗賊らしき数人の集団が周りの人を脅し、被害にあった者は身ぐるみをはがされて床に寝ている。
その出来事を見ていた人は大部分は逃げて、一部の人間が武器を構えている。
よくみると犬の獣人もいた。
盗賊団はというと、十人程度の男が荷台を囲むように立っている。
町の人は獣人を中心に必死に抵抗するも、その盗賊らしき集団に倒されていく。
その一部始終を見ていた九牛は、右手で頭の後ろを掻く。
(ほってはおけんな。そういう性分やし。あと腹減った。)
明らかに後者が本音である。
空いた腹を押さえ、とぼとぼと歩きだした。
「あの~」
「あぁん!?」
盗賊団Ⅹは一斉にこっちをみる。
その顔に大きなしわを寄せ、邪魔するなとばかり鼻息を荒くしている。
いや、そんなに怒らんでも。
「そんな事やめたほうがええと思うんやけど・・・。」
「生意気な小僧め。身ぐるみすべておいたら見逃してやる。」
説得失敗。この説得で手を引くとは思ってなかったが、しかたない第二プランに移行しよう。
「見逃す、見逃さんとかはこっちのセリフなんやけど・・・。まぁ、こんなことで説得できるともおもってないしね。」
そういい終わると同時に一人の盗賊が突撃してきた。
動きに無駄があり、速度も遅い。
さらにその男の手には騎士が使うようないい形の剣が握られている。
(使えるか?)
走ってくる敵の右側の懐に入り、左手でみぞおち一発。
「んぐっ!」
盗賊はその場に倒れ、息苦しく呻く。
周りの盗賊はというと…
「お、おい。何が起こった?」
という感じで固まっている。
これが隠密Lv10、忍び足Lv7の力。決して姿が見えないほど速いわけではない。
この力は相手の注意をそらすだけで発動できる優れものだ。
予定通り騎士の剣を頂戴し、大将格の盗賊の後ろから剣を首に当てる。
「ククッ。君の命はどこにある?」
「ひぃ!!」
男は背後から発せられる殺意に意識が遠のく。
その覇気に当てられた周りの盗賊Ⅹ達は一斉に逃げ、九牛の目をみた一部の人間は腰を抜かしその場に崩れ落ちた。
街の人は、ポカーン、だった。
それもそうだ。
これは覇眼Lv5と殺気Lv5による攻撃で対象を指定している。
「さて、君やけど。」
そろそろお腹が限界である。
「わ、わかった。食料でもなんでもだす。だから助けてくれ!」
(よかったー!)
首の剣を話すと大将格の男はへタレこみ、恐る恐る顔を上げる。
そこには斜めに光を射す太陽を背に受け、黒く染まった影の中で満面の笑みの俺が立っていた。
「ぁ、ぁ、…。」
その盗賊は食料などを荷台ごとおいて、どこかへ消えていった。
食料をむさぼり食い腹いっぱいになった時、物陰に見たことがある少女がいた。
「・・・なんでここに?」
物陰の姫は気付かれたことに驚いたのかその場でしりもちをついた。
「俺に付いてきたんか?」
何も言わず、ただ首を縦に振る。
「腹、減ったか?」
頷く。
「ほら、食いや。」
九牛は鞄に入れていた食料をすべて渡す。
荷台にあった物はすでに町の人に分けたため、鞄の中にしかなかったのだ。
「でもこれ・・・」
彼女は遠慮がちに聞く。そのことは彼女も分かっているらしい。
だが、その目と手は鞄の中に伸びている。体は正直だ。
「遠慮するなや。」
「はい!」
彼女は俺が言うや否やがつがつと食べ始める。
おそらくだが、ここまで来るのに俺に気づかれないようにするためにかなり神経を使っていたのだろう。
今日も朝早くに起きたに違いない。
彼女はお腹が膨れるとうつらうつらし始めた。
(だが、俺もいっぱいいっぱいなんだよな・・・。)
助けたいのは山々である。ここでどう振る舞うのが正しいことも知っている。
しかし、今は自分のことを守ることで必死なのだ。救うことは出来ない。
間違っていることは知っている。でも彼女は置いていくしかない。
そばに鞄を置く。
「・・・お父様と一緒・・・」
九牛はそんな寝言を聞きながら彼女の体に黒のマフラーをかける。
「選別や。ほな。」
彼女に一声かけ、その場を去って行った。
町の門へ向かうと厳つい顔の門番が二人いた。
「止まれ。」
言われた通りにする。なのに、門番は更に厳しい顔になっていく。
(え、なんで?あれ、ばれたんかな・・・。)
門番が一歩ずつ迫る。俺はそれに気圧され動きに合わせて後ろに下がっていく。
すると、男の目線が後ろを指し口を開けた。
「その娘はなんだ。」
(は?娘?)
恐る恐る振り向く。
(な、なんでやねん!!!)
物陰の姫がいた。
彼女はさも当然といった雰囲気をだしている。
俺は冷や汗ボロボロだ。
(や、やばい!どうしよ!)
「えと~、妹です。」
「ふむ。顔が似ていないな。」
「こここ、これは、あの、義妹なんで・・・。」
(頼む!)
「ふむ。まぁここにいる訳がないか。」
そう。ここは彼女を庇った位置とは正反対に位置する。さらに町の中にいる。ここにいるわけがない。そう考えたのだろう。
「いいぞ。」
「ありがとうございます。」
いつもより深くおじぎをして、急ぎ彼女の手を引いて外へでる。
(怖かったーー)
すぐに門番から見えない位置にいき、彼女に向き直る。
「あの~質問。寝てなかったっけ?」
「殺し屋さんは逃げると思ったから。」
うわ~すげぇ~。
この子の追跡能力半端ない・・・。いわゆる肉食系女子ってやつだ。
ふむ。もうここまで来たら引きはがすのは無理か。
仕方がない。連れていくか。
「はぁ~お見通しか。わかった、しっかり付いてきや。」
「はい!」
そして出会って初めて、彼女は笑った。
「あと、マフラーありがとうございます。」
「いや、一緒に来るんやったら返してもらおか。」
「え~。ケチですね!」
「ケチで結構!さぁ、返せ!」
二人はマフラーを取り合いながら歩みを進める。
こうして彼らは、その後伝説になる、ある旅団への第一歩を踏み出したのである。
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二日後。
とても熱い。照り付ける太陽が鬱陶しい。
その暑さで、一昨日から会話の一つもする気がおこらなかった。
「はぁ、はぁ、そういや名前は?」
「なんですか・・・突然。はぁ、はぁ。レイ、レイ=ガリウェロと言い、ます。」
「はぁ、はぁ、レイ・・・か。」
「あなたは?」
「俺は・・・名も、ない、ただの、殺し屋や。」
レイが必死の形相で俺を睨む。
ここで冗談をいったのは間違っていたようだ。
「ちゃんと、答えて、ください。」
「九牛、です・・・」
「よろしい。」
女性なのか、子供だからか。あのあと、マフラーの主導権を盗られた俺は立場的にも格下になった。
それからしばらく歩く。
すると行く先に町が見え始めた。
「あっ!町です!」
二人は駆け足で向かう。
「うぉ~。ちゃんとした町やん。水、水。」
門をくぐる。
そこは色んな装備を来た人や避難民、敵国兵士でごった返していた。
「敵がいます。」
レイの顔は暗い。あの旅路で精根尽き果てたからだろうか。
しかしその声は低く、殺意に満ち溢れていた。一難去ってまた一難だ。
「大丈夫や。普通にしてれば問題ない。ひそひそしてたら逆にばれる。」
「そうですか」
レイは顔に巻いたマフラーと俺の手をグッと握り顔をさげて歩いた。
町の中央の噴水に行き、ばれないように二人で水を飲む。
全身に水が染みわたり、視界に色が戻っていく。
同時に俺たちの生気がよみがえる。
「助かった~」
二人で少々生を実感していた時、俺はあることに気付く。
「お金どうしよ。持ってる?」
「持ってません。」
九牛はあちゃ~と頭を下げる。あと肩も。
だが、忘れてはならない。ここは異世界だ。例の定番が使えるはずだ!
「ギルドってある?」
「ええ。あそこに。」
レイが指差す方向に盾の絵が描かれた旗が見える。
「ナイス!!」
(ありがとう王道!ありがとう異世界!)
そういってレイを引きずりながらその建物に入っていく。
10分後。
「なんで登録料がいるんや・・・。」
結果は惨敗だった。
冒険者になるには10ペソムかかり、一文無には冒険者になることすら出来なかった。
結構厳しい世界である。今頃、大神は笑っているだろう。
(大神、許すまじ!!)
「・・・お金、大事やな。」
「そうですね。」
二人で途方に暮れる。
「あの。」
「ん?なんか思いついたか?」
「旅団作りませんか?」
「旅団?」
俺が聞き返すと、レイは驚いた顔で見返してきた。
「え?知らないんですか?えっとですね。簡単に言うと旅人の集まりみたいなものです。」
「はぁ。で?」
「旅団は表向きは旅人ですが実は傭兵の役割も担ってるんです。」
「なるほど。で、今作る意味は?」
「・・・ないです。」
(ないんかい!!)
一応心の中で止めておく。
そして、そこでふと気付く。
「いや、いける。」
「?」
「レイはさすがや。」
「?」
「要は傭兵をすれば金がはいるんやろ!」
「はい。」
「じゃあ、雇ってもらおか。」
「誰にです?」
「この町にいる人さ。国が潰れた今、治安は下がりに下がっている。ならいくらでも需要はあるはずや。」
「なるほど!!」
「・・・で、登録料とかは?」
「いりません。勝手に名乗ればいいんです。」
二人はギルドのそばに行き、少しのスペースに布団替わりにつかった藁のじゅうたんをしく。
そして旅団名を決め、レイが呼びかけをはじめた。
「旅団です!依頼はありませんか~?」
「ギルドの依頼から護衛まで幅広く取り扱っていますよー!」
するとすぐに人がやってきた。
推定40歳の大柄な男で、服は少し汚れている。
「俺の家の近くにドラファン二匹が住み着いた。討伐をお願いしたい。」
「はい。ではまず料金の話から。そちらが払える金額は?」
「ん?それはあなた方が決めることでは?」
「すいません。まだ旅団をつくったばかりで正確な価格設定ができていないのです。」
「ふむ。では2000ペソムでどうだ。」
「分かりました。」
「え?いいのか?」
男は驚きを表に出したまま聞いてきた。
この反応だと2000ペソムはとても安いのだろう。
「何か、後ろめたいことでも?」
そしてこう返すレイもなかなかの強者である。
俺は改めてレイが恐ろしい人間であると思い知った。
「いや・・・。」
客はすぐに笑ってごまかす。それでも内心はまだ驚いていた。
それもそうである。ギルドでこの依頼をだせば軽く10倍は超えるのである。すごい儲け話だ。
レイは姿勢を正しくし笑顔で頭を下げた。
「依頼を了承しました。ようこそガリレイ旅団へ!!」
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三人はしばらく歩き、町外れの森へ向かう。
森に入るとすぐに気配感知Lv7を使う。
「この森です。」
確かに北東に二匹大きな反応がある。
「ほぅ。いるね~」
「分かるんですか!?」
「ええ。北東に二匹。夫婦かもな、片方が若干大きい。」
「そんなことまで・・・」
俺は一旦足を止め、レイに一言告げる。
「では、行ってきます。レイ、その人が逃げないように見張ってや。」
「はい!」
そういって俺は森の奥へ消えていった。
「一人で大丈夫でしょうか。」
「はい。あの人は強いですから。」
レイはあの盗賊事件を見ていた人間達の内の一人であった。
故に、そう断言した。
九牛は気配感知Lv7を使用したまま、森を北東にすすむ。もちろん忍び足Lv7と隠密Lv10も使って。
しばらくして、二体の影を見つける。
(あいつらか。)
姿はラストファンタジーのベビーモスのような獣。
全身に毛が生え、特に前足が発達している。形的には逆三角形型というのだろう。
「強そうやね~」
もちろんこちらには気付いておらず
左腰にさした剣をもちそのまま後ろから飛びかかる。
暗殺術Lv10発動。大きいほうを倒し、もう一体に体を向ける。
敵も距離をとり警戒している。相方が殺されたので警戒しているようだ。
すぐに草むらに隠れる。意識がこちらに向いているために隠密が発動できない。
そして奴が跳んできた。その場を離脱する。
奴の攻撃は俺の居た場所に大きな穴を穿ち、再度おれを探す。
しかし見つからない。当たり前だ。
俺はアサシン。一度、視界から外せばもう見つからない。
そして一発。
「せや!」
首をさし、戦いは終わった。
時間にして5分。あっけなかった。
二体の獲物を背負い森の外へでる。
そこには笑顔のレイと大きく口を開けた依頼人が立っていた。
「ほ、本当に・・・こんな短時間で・・・。」
「こいつらで間違いありませんか?」
「えぇ、はい。」
「では、料金を」
レイが依頼主から2000ペソムをもらい頭を下げる。
「またのご利用をお待ちしています。」
そしてその時には、九牛のレベルがすでに四つあがっていた。
明日から学校が始まるので絶対に投稿遅れます。目指すは週一回!!
9/2 大幅加筆修正