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主〜aruji〜  作者: 宙華
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第一章〔6〕 /…新たな役目

女王はある夜、不思議な夢を見た。

女王はこの世界を描いた地図の前に立っていた。

その世界の美しさにうっとりとしていると、一点、地図上に黒い染みが生じた。

同時に頭上から男とも、女とも判別つかない声がした。

「女王よ、聞け!お前の部下を、主達の元へよこせ!」

染みは徐々に増え、ゆっくりと広がって行く。女王は目を見開いた。

また声がした。

「女王よ、聞け!お前の部下を、主達の元へよこせ!その部下に全ての主を巡らせるのだ!従わなければ、世界は闇に負ける!皆が命を失うのだ!」

「おぉ、何てこと!」

呟いた所ではっと目を覚ました。朝だった。が、手が汗で濡れていた。

女王は、いつものように食事をして、重臣達を集め、それからゆっくりと打ち明けた。

「きっと、ここ最近の異常も主達と関係があるのでしょう」

女王が言った後、ゆっくりと立ち上がったのはルタミトだった。

「最近、天災や魔物による被害が増えたのは事実です。そして女王様がそのような夢を見たのも必ず意味があるでしょう。これまでのように」

「ルタミト殿のおっしゃる通りだ!」

重臣達は叫んだ。

「そうですね…しかし誰を主達の元へ行かせるべきでしょう…全ての主達の元へ辿りついた者はいないと聞きます、危険に満ちた旅になるでしょう」

女王の考えは先に進んでいた。

「それはもちろん、この私が」

と、ルタミトが言うと

「いけません、貴方は私や国民にとって大切な護衛です」

「ならば、私が」

と言ったのはガルスベルだった。

と、横にいたファンフィンが

「やめとけ」

と言った。

「お前は飛べ無いだろ、女王様、私が行きます」

だが女王ははっきりと言った。

「貴方達を行かせるつもりはありません」

女王は首を左右に振った。

「誰か他に、貴方達以外でこの大役を果たせる者はおりませんか」

「それならば女王様、ミラルファの他にいないでしょう」

モノフの力強い声がした。

「それはいい、彼女は元はと言えば流浪の民だ。腕も立つし、旅をするのはお手のものだろう」

何人かの重臣達は彼の意見に賛成した。

ガルスベルは顔色を変えた。

その目は怒りに燃えている。

「何て事を言うのです!彼女は今までこの国の為に、この国の人々以上に尽くしているではありませんか。それをわざわざ死にに行かせるような旅に出すとは!」

「ガルスベル」

と、ファンフィン。

「失礼しました」

「…確かにモノフ殿のおっしゃる事もお心にとめておくのも、いいでしょう。しかしもう一度お聞きします、私ではいけませんか?」

女王は鋭い目でルタミトを見た。

「二度も、そのような事は言ってはなりません」

女王は目を伏せた。

「誰か、ミラルファの他に思いつく者はおりませんか?」

女王の目が一同に向けられた。

「…分かりました、彼女に一度頼んでみましょう」

女官長マーナが口を挟んだ。

「女王様、命令なさればミラルファも従うでしょう」

彼女はガルスベルに想いを寄せており、彼がミラルファを庇うのが気に入らないのだった。

「いいえ、彼女が拒んだらもう一度会議を開き、他の者を選びます。ガルスベル」

「はい」

「貴方から彼女に話しをして。そして私の所へ来るように言いなさい。来るのが多少遅くなるのは構いません」

「…分かりました」

その頃ミラルファはリオルを相手に剣と槍の稽古をしていた。

鳥人や獣人は人型になれば武器を扱える。リオルはそれらの腕も優れていた。

リオルが加わってから、ミラルファは彼と訓練をするのが日課となっていた。

「ミラ、誰かが来る」

彼女が振り下ろした剣を剣で受け止めながらリオルが言う。

「え?」

「足音がする」

リオルが示す方を向くと

「副隊長」

ガルスベルが自分達を見ていた。

「ミラ、リオル、ここにいたか」

二人は彼に礼をした。

ガルスベルはリオルをちらっと見てからミラに視線を戻した。

「何かご用でしょうか?」

ミラが尋ねる。

「いや…特に用は無い」

「しかし、副隊長は私をお待ちになっていたのでは?」

「いや、お前の顔を見れたのでよしとしよう。ではな」

くるりと踵を返して去って行く。

「ガルスベル様…?」

去っていくガルスベルの背中を見つめながらミラは呟いた。

ガルスベルはミラ達とは反対の方へ向かった。

そして会議室へ続く廊下を見て足を止めた。

ガルスベルは会議の事を思い出した。彼女に会って何を言えばいいのか。

再び彼女がいる方へ戻る気にもなれず、会議室の扉の前で少しの間佇んでいた。

(ミラ…)

彼女の事を考えていると、背後から声がした。

「副隊長」

はっとして振り返るとミラだった。

「どうした」

ミラは一礼した。

「先程の、副隊長の様子が気になりましたので」

そう言う彼女の目には優しい光が宿っていた。

「リオルとは、親しいようだな」

ガルスベルにそう言われ、ミラは首を傾げた。

「…はい、よく手合わせをして頂いております」

「そうか」

「副隊長、はぐらかされては困ります」

ガルスベルは微笑んだ。

「そうでもないんだがな」

ミラは目を見開いた。

「まぁいい、お前に話しがある」

ガルスベルは会議の事を話した。

話しが終わる頃には、ミラルファの顔つきは真剣そのものになっていた。

「女王様の所へ行けば、もっと詳しい話しをして下さるだろう」

「…分かりました、私は喜んで主達を訪ねる旅に出ましょう。すぐ女王様の元へ行き、その旨を伝えて参ります」

ガルスベルは苦笑した。

「お前ならばそう言うと思っていた。拒否してもいいんだぞ」

実は、女王はミラルファとリオルの腕を見込んで、近い内に片方を二人いる副隊長の内の一人、ウェルデンの後を埋め、片方を女王の身辺警護長として欲しいと話していたのだ。

ミラは一礼した。

ガルスベルの様子が少しおかしかった理由が分かった。

「お心遣いに感謝します」

女王は執務に追われていた。

そこへ女官からミラルファが来たと知らせが入った。

「分かりました、すぐに参ります」

言って、ミラルファが待っている広間へ向かった。

そして、待っていた彼女に一通りの事を説明する。

不意に女王が緊張した様子で言葉をきった。

「それから…」

それでミラは、何かよくない話しをするのだと思った。

「ミラルファ、この前のコヒセ達との戦いで、奇妙な事に気付きましたか」

「奇妙な事、ですか?」

「えぇ。コヒセ達がシャリア村を襲ったのは、偶然と済ませられない何かがあるように思うの」

「それは一体…?」

女王は頭を振った。

「まだ、分かりません。しかし何者かの存在を感じす。…主達を訪ねる旅の困難さは想像通り。それに加え、主を訪ねる内にその者達は姿を現すでしょう。−−−主達を訪ねよとは、きっと他にも様々な意味があります。命の保証はありませんよ、覚悟はありますか?」

「はい」

ミラはきっぱりと言い切った。

彼女の決意が強いのを見てとり、女王は目を伏せ、頷いた。

「…分かりました、頼みます。同行者を募るのは構いませんからね。マーナ」

扉の外にマーナが控えていた。背後に何人かの女官がいる。

「はい、女王様」

「ミラルファに旅の支度をしておあげ」

「はいっ今すぐ」

マーナは笑顔で返事をした。

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