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主〜aruji〜  作者: 宙華
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第三章〔2〕 /…愛しい気持ち、あの頃

ダディラ王より贈られた召使は二人とも有能だった。

仮面の騎士は実は女で、ダディラ王のはとこ紅の髪と瞳が美しいシェダリアス。

もう一人はダディラ王の甥、刈り上げた金髪に褐色の肌が特徴的なラアネドンと言う。

シェダリアスは宮廷騎士、ラアネドンは文官と、与えられた役目を誠実にこなし、戸惑い、警戒していた家臣達の信頼を着実に掴んでいた。

特に警戒していたファンフィンさえ、気を許していった。

だけど、とナウジャは思う。

彼らを信頼すればする程、ダディラ王からの求婚を重く感じるのだった。

『成る程、国民の、もとい誰かの為に役に立ちたいと思う気持ちを持つのは大変よろしい。しかし一人では不可能ですよ』

ナウジャは自らがこの国の民を背負っている事を、嬉しく誇らしく思った。

『でも、何故でしょう?』

『嫉妬や憎悪は負エネルギーを与えますが、あなたを愛し、あなたが愛する殿方の愛や友情、奉仕の精神は正エネルギーを与えてくれるのですから。あなたには、あなたの正エネルギーを与えなければならない相手が大勢いますよ』

ナウジャが教会の階段でぼんやり座っていると、教会を囲む森に続く道から、醜い怨念文字に寄生された、若く凛々しい剣士が歩いて来た。

剣士は、ナウジャに勉強を教えてくれるルモレン神父の生徒だった。

(疲れたでしょう?私が汗を拭いてあげます)

剣士が、鍛練に励んでいるのを知っている。

(あぁ、ありがとう)

ナウジャがハンカチで汗を拭き終えると、剣士は微笑んで礼を言って歩き出し、扉の向こうに消えた。

(ルモレン先生は、あなたの事でいつも悲しそう。私が、それを消す鍵になりましょうか?)

ナウジャは言った後、剣士の顔色が変わったのを見てハッとする。

(駄目だ。俺は君の、その気持ちがあればいい)

ゆっくりと言いつつ、ナウジャの頭を撫でる。

(私が大人だったら…そんな女性の念文字なんかに負けないのに)

(姫?あのような醜い文字に寄生される者などと、と笑われるぞ)

(黙ってて!あなたの姿を笑う者は、私が許さないわ!)

(…優しいナウジャ姫、貴女が泣く事は無いんだ…)

(私、もうすぐ大人になりますわ。そうしたら結婚して下さい。それでバアブラー(女の醜い独占欲を表す念文字)は消えるから、あなたを知る皆が喜ぶわ)

(ありがとう。まず、ルタミト殿が待っているスェドトフ岬まで、私が君を送って行こう)

ラゲラールの部屋の扉を開け、薄暗い室内に入ると、ラゲラールは寝台で寝ていた。

ここ数日、彼は様子がおかしかった。

メネルス丘の件があるまでは、彼とは最低限挨拶を交わす程度だったが。

ネグフルは寝台に近づくと声をかけた。

「ラゲラール?」

返答が無いのを不審に思い、ネグフルは掛布をめくり、同時に悲鳴を上げた。

彼の体の見える場所すべてにどす黒い文字が回り、石のように固まっていた。

ネグフルはあまりのあっけなさに呆然とした。

「ラゲラールの硬化、及びミラルファからの手紙については、我々しか知りません」

ネグフルは、女王とルタミト達のいる部屋に呼ばれた。

「ネグフル」

マーナの厳しい声に、はい!?と上擦った声を出して、ネグフルは背筋を伸ばす。

「女王様はお疲れで、字を読むのが辛いのだから、あなたの報告書を読んで」

ネグフルは緊張しながらも報告書を読み上げる。

その後報告書をルタミトに提出し、退室させられた。

「女王様、ミラルファの手紙には何と?」

と、マーナ。ガルスベルがちらりとナウジャに視線を投げる。

「後ほど話します。まず優先すべきはラゲラールの、魔文字による人体硬化の解除です」

「ラゲラールが硬化したって事は、ハヴァサの事も調べた方がいいんじゃないかい?」

と、ファンフィン。

「そうだな。…リシャジャ大臣はどうだろう、大臣は魔系の専門家でしょう?隊長?」

と、ガルスベルが口を挟む。いや、とルタミトが訂正した。

「リシャジャが専門家と言えるか分からないが、夫人のユエリ女史と共に魔字については長く研究している。特にユエリは器用なやつだから自分で魔文字くらい作れるだろう」

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