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「やっほーおじさん元気―?」
「げんきげんきー」
「やる気なさすぎだよおじさん!ツチノコキャンディー食べる?」
「あるのか!?」
「近所の飴細工のおじさんが特別にって作ってくれたんだよ。3000円で売るでゲイツ」
「言い値で買おう」
財布を出したこの時の川崎の表情は、きりりとしてかっこよかった後にまつりは語った。
山のほとりで川につかりながら2人であめを舐める。
周りから見れば一風変わった風景だが2人にとってはいつもどおりの光景だ。
「なんかさー最近部活がうまくいってなくてさー」
「剣道部だろ?何がうまくいかないんだよ」
「いろいろ、これが倦怠期って奴なのかな?」
ふっと大人びた表情をするまつりに川崎はぼそりと呟いた。
「あほか」
まつりは立ち上がり岩に座っていた川崎の目の間に立った。
「酷いおじさん、真面目に悩んでいるのに!あ、今日の夕飯一緒に食べようってお父さんが言ってたよ!夕飯はハンバーグだよ、私の大好物!」
「全然悩んでないだろうお前」
「悩んでたよ、おじさん見てると馬鹿らしくなってくるんだけどね!後そこらじゅうの木に蜜塗るのやめてよね、それで引っかかるのかぶと虫とかだし!」
「ツチノコが蜂蜜好きかもしれないからな。明日が楽しみだ」
満足そうな表情で川崎は頷く。その様子を見てあーあと脱力して川崎の隣に座るまつり。
カブトムシだったらちみっこ達にあげればいいかとまつりは考えなおした。
そんな姿を横目で見ながら川崎はガシガシとまつりの頭を乱暴に撫でる。
「まぁあれだ、悩んでいるのはお前らしくないし早く元気になれよ。夕飯ハンバーグなんだろ?早く帰るぞ」
言って恥ずかしかったのだろう、縄を背負い直し、道具を持つとすたすたと川崎は先を行ってしまう。ボサボサ頭のまま、まつりはそんな川崎の姿ににんまり笑う。
相変わらず可愛らしいおっさんだ。まつりはひょいと立ち上がり川崎のあとを追った。