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おっさんがついにとち狂ってしまった
まつりは恐怖で身を硬くした。
きっかけはいつものとおり土日に川崎にあったときの事だった。
いつもの2倍ほどにこにこした川崎を見かけたときから悪い予感はしていたが、
山の中を捜索するとは名ばかりのランニングをしながらあの男はハムスターと話し、更には友達になったなどと言い始めたのだ!
遠い親戚のため、まつりと川崎は元々顔見知りだったが、川崎がうろな町に越してきたのは最近のことでまつり以外では当然知り合いが少ない。
だからといってついに喋れないお友達までリアル友達認定してしまうとはなんたる悲劇・・・!こんなことなら去年梅原先生に無理にでもお願いしておじさんと友達になってもらうんだった。
「おじさん・・・ハムスターは話さないよ」
「そんな可哀想な目で俺を見るな。ハム太は気のいい話せるハムスターなんだよ」
「そうだねそうだね、おじさんとはお話できるんだね」
「この小娘・・・!」
疑うなら実際に見て来い!
そう言われたからには行ってやる!とまつりは川崎から噂のハム太の情報を聞き、お土産代を毟り取り、禁断の地である先輩の自宅にやってきていた。
剣道部という体育会系の中で育ってきたまつり。上級生の自宅なんていうものはブラックホールに足をつっこむのと何ら変わりがないのだ。
ひなたという女の先輩は頭にハムスターを乗せていて、とても分かりやすいらしい。
そんな馬鹿なと思いつつも足をピシッと揃え片手に持参したお土産を持ち、チャイムを押した。
しばらくして出てきたのは自分の想像とは違い、とても小さい少女だった。頭には例のハム太も乗っている。制服のまま来たためか少女は不審者としてまつりを警戒していないようだが、何のようと言わんばかりにこちらを上目で見ている。
身長差のせいで自然と上目遣いになっているだけだという事は頭では分かっているが、なるほど男がこれをやられると確かにいちころだなと無駄な感心をする。
が、無垢なその瞳に見つめられてまつりは言葉が出なくなる。
「どうしたんだねーちゃン?」
頭の上のハムスターが小さい手をふりふりし話しだした途端、まつりは無意識の内に驚くべき速さでハム太を掴み頭上に掲げた。
右手からふわふわもこもこ、暖かい感触がしてとても気持ちがいい。
そんなまつりとは違い場の空気に緊張が走る
正気に戻ったまつりは無表情のままの少女の頭の上にそっとハムスター戻す
「いきなり、なにすンダ!」
「すっごい柔らかい、これが小さくてか弱き生き物か」
もうすんナヨ!とぷんぷんと両手を振りかざす小さな生き物に、めんごーと軽く謝るといやがる小動物のほっぺをぷにぷにする。
ちんまい先輩と可愛い小動物とはあざとい。実にあざといとまつりは思いつつも、
本能のままに小動物とたまに先輩をぷにぷにする。
そんな彼女の後ろから川崎はぬっと現われまつりの頭をぐわしと掴んだ
「ったく、心配してきて早く帰ってきてみたら・・・。ハム太くん、ひなたちゃん。まつりが悪かったな、悪い奴ではないんだ、絶望的に馬鹿なだけで」
そう言って無理やり頭を下げさせた省吾はまつりが持っていた土産を手渡し、頭を掴んだまま立ち去った。
「おじさん頭が割れるように痛い!変態!おっさん!先輩とハム太くーんまた遊びましょうねー」
「うるせぇテンポよく言うな!2人とも今度はツチノコ一緒に探そうなー」
省吾もまつりもにこにこと人のいい表情で去っていったが迷惑きわまりないのは確かであった。後日たまに少女と一緒に学校に行こうと玄関先で待ち構えるまつりの姿があったとかなかったとか。
裏山おもてさんよりひなたちゃんとハム太さんを、YLさんより梅原先生のお名前をお借りいたしました!
失礼ばかりしてすみません!問題あればすぐ修正いたします。
基本的に大人組みは川崎、高校生より下はまつりが絡んでいくと思います。