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My father

作者: りゃいとん
掲載日:2013/02/24

俺は今、無性にイラついている。いくら可愛い自分の息子だとしても許せんことだってある。

「何故触るなと言ったのに触ったんだ?……しかもこんなにぐちゃぐちゃにして」

「……。プイッ」

何故言うことを聞かないんだ?欲しいと言った物は買い与えているし、美味いものだって食わせている。定期的に遊びにまで連れて行ってやっているというのに。

「ねぇオジサン、ママはー?」

……はあ。いつもこれだ。5年前に別れた妻が死んだという知らせが届いたのは3ヶ月前。その時に出来ていたという子供がこいつ、“令斗”だ。

正直、俺に子供がいたなんて聞いてないし、こいつを引き取る気なんてさらさらなかった。だが、前妻の家族は俺と別れて少し経った時に死んでいたらしく、令斗を引き取ってくれる人は居らず、結局俺が育てることになったのだ。

でもまぁ、自分の子供、というだけで愛着がわいてくるものである。前の妻の分もしっかり幸せに育ててやろうと思っていたのだがこの息子は俺のことを父親と認識していないのである。

だからなのか常に俺のことは“オジサン”と呼ぶ。もう……本当にやめて欲しい。俺はまだ“オジサン”なんて呼ばれる歳ではない。31だぞ?31でオジサンって……本当のオジサンに謝ってほしいくらいだ全く。

……おっと、話が逸れてしまった。要するにアレだ、俺と息子は全くと言っていいほど上手く行って無いのだ。

「令斗、いつも言っているだろう?お前の母親はもう帰ってこない。」

「帰って来るもん!!ママはね、いつもすぐ帰ってくるからね、って言ってるもん!ママはウソなんてつかないもん!!!」

そう言う令斗は涙目になっている。最初の頃は本当に信じていたようだが、最近は何となく気がついているようだ。……まあ、否定はしているが。

「あー、はいはい、分かった。じゃあずっとそこでママのこと待ってろ。」

「い、言われなくても待つもん!!」

健気に母親の帰りを待つ令斗のことを見ていると愛されていたんだな、とつくづく思う。

どうにかして助けてやることは出来なかったのかと考えてしまうが別れてしまっていた手前、どうすることも出来なかったのだろう。あいつも助けなんて求めて来なかったし、俺も幸せに生活しているのだとばかり思っていた。

リビングのど真ん中で体育座りをしている令斗をみながら無意識に持っていたタバコに火を点けた。

どれくらいそうしていただろうか。令斗はおもむろに立ち上がり、俺の方へと歩いてきた。

「……どうした?」

「ママの所へ行きたいの。ママの所に連れてって!!」

…一瞬、天国のことかと思ったがどうやら違うらしい。俺の愛車の鍵を持ってきて、早く行きたいの、なんて言っている。

これくらいのわがままは聞いてやろうと重い腰をあげた。


車に乗っている間、令斗はまだー?だの早くー!だの言ってうっとおしかったが、もう直ぐ着くぞと言った瞬間上機嫌になり、俺に話しかけてこなくなった。現金な奴め。


前妻の墓の前に来ると

「この中にママがいるんだねー」

と理解しているのかしていないのかよく分からないことを呟いてその後はひたすら墓に向かって話しかけていた。

本当に話しているかのような口ぶりだったため、少々気味が悪かったが令斗が良いのならそれで良い。

20分ほど経ったあと気が済んだのか、墓に向かって

「帰るねー。バイバーイ」

と言って俺のところへ戻って来た。もういいのか尋ねると

「うん、もういいの。あのね、ママがね、もう帰って来ないから、ママのこと待つのやめなさい、って!でね、あとね、パパとも仲良くしなさいね、だって!!パパって、オジサンのことなのかな?」

どうやら本当に話していたらしい。

「……そう、かもな。」

「えー、じゃあオジサンじゃなかったんだねー!……あっ、そうだ!あとね、それとね、ママがね、ママのことは忘れないでねって言ってきたの!おかしーよねー!忘れるわけないのにさ!!」

そう言っている令斗が強がっているようにしか見えなくて心苦しかった。

そう思っているのは俺だけなのか、さっきから動かないでいる俺を仰いで

「どうしたの“パパ”早く帰ろ?」

「……!!」

そういって俺の手を引く俺の息子は、今朝よりも数倍愛しく感じた。

そしてずっと曇っていた俺の心も晴れていくのがわかった。

息子が前妻と暮らしていたときよりも幸せにしてやる自信は正直あまりないが、この息子のためならなんだってしてやれる気がした。

上手く行きそうになかった息子との生活が今回の墓参りによって大きく変わりそうだ。

もしかしたら前妻がこの場へ引き寄せてくれたのかもしれない。。。

「…令斗、帰りにどっか寄ってご飯でも食べるか。」

「うん!ぼくね、ハンバーグが食べたいなあ。」

これから訪れるであろう穏やかな生活を大切にしたいと思えた長い1日だった。

誤字脱字、文章のなかでおかしいところなどがありましたらご報告よろしくお願いします。2016/2/8書き直しました。

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