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02-01

うわーおなかすいたー!




「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁん!うぁぁぁぁぁん!」


「あらあら、ウィリアム様は本当に良く乳をお飲みになるわねぇ。」


くすくすと笑い声が聞こえて、メイド姿の乳母と思われるお姉さんが私に乳をやろうとやって来る。



いいからとっととその乳寄越さんかい!



---------という事で、現在私は元気良く乳幼児やらせて頂いてます。

つい数ヶ月前までは病院のベッドの上でひいひい言ってた私が何故かふかふかのベビーベッドの上でひいひい泣いているこの現実。

動けないし乳ふくまされるしでそれはそれは精神的苦痛が・・・あるかと思ったらそうでもなかった。いまいち分からないが、微妙にこっちに順応してる?みたい。動けないのもずっと寝てるのも苦痛じゃないし、お乳飲むのもご飯食べる感覚だし。おしめを変えてるときにぴゃーっとお恥ずかしいですが粗相をしてしまった時も、あー、男の子だもんねー。そりゃ出るわー。って位だったし。

確かに私は「私」なんだけど、微妙にこの体に合うように色々価値観とか変わっちゃってるのかな?とも思う。

それじゃあ前の記憶が無くなっちゃってるのか、といわれるとそうでもない。ちゃんと記憶はあるんだ。・・・まぁ今は目の前の生活よりそっちの方が心配なんだけどね?!押入に隠したBL漫画や雑誌、ドラマCDから肌色の多いゲームまで・・・あっちの私が死んだ後、お母さんが片づけるのかな・・・むしろそっちの方が羞恥で死ねる感じ。なので結構私はのんびり乳幼児ライフを満喫してたりする。

お乳も美味しく頂いて、うとうとしていると、いつもはこの時間帯はお昼寝タイムなので誰も話しかけてこないのだけど、なんだか入り口の方がさわさわしていた。なんだろう?

ぼけーっと天井を眺めていたら、最初に視界に入ってきたのはお母様。今日は黒髪をゆるく巻いてふんわりまとめ、淡いブルーのドレスに身を包んでとっても綺麗だ。お母様は愛おしくて堪らないと微笑み掛けながら私の頬にそっと触れた。


「ウィリアム・・・お母様よ。」


綺麗なお母様の大きな黒い瞳がうっとりと潤む。私もすきよ、と思いながら頬に触れる細い指を握った。


「ぅー、あ。」

「あら。やはりエヴァンジェリナ様がおみえになるとウィリアム様もご機嫌なんですわね。」


乳母の言葉に嬉しそうに頷いて、お母様は「ほら、あなたも」と誰かを促したようだった。そして、お母様の代わりに顔の横に男の子が立った。茶色の髪が日の光を浴びてきらきらしてる。カッターシャツに茶色のズボン、サスペンダーをしてぱっと見いいトコの坊ちゃん、という感じだ。緊張した様子で私をのぞき込んでくる。おお。若草色の瞳だ。綺麗だなあ。


「ウィリアム様、私の息子で、セオドリクと申します。仲良くしてやってくださいませね。」

「・・・ウィリアム様。セオドリクで御座います。どうぞよろしくお願いいたします。」


・・・セオドリク君とやら、乳幼児にそんな事言っても通じないとは分かってるだろうに。というか、恐らくこの場にいる人達向けの挨拶なんだろうな。ご苦労様~。と思いながら嫌じゃないよ~。という気持ちを込めて笑ってみる。


「まあ、ウィリアム様が笑ってるわ。」

「あら本当。良かったわ。これからウィリアムをお願いね。セオドリク。」

「は、はい!」


乳母とお母様に声を掛けられて、セオドリク君は顔を真っ赤にして返事をしていた。いやあ、微笑ましいなあ。




---と、まあこんな感じで私は「ウィリアム」としての人生を穏やかに送り始めたのだった。

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