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決戦世界のタリア  作者: 中村十一
第二章 再会のまれびとたち
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26.公都の長い夜 その5

 目が笑ってないな――思いもよらなかったカラグとの再会だったが、先ずタリアはそんな風にのん気なことを思い浮かべた。あるいはそれも逃避だったのかもしれない。諸手を挙げて偶然の再会を喜ぶようなシーンだとは、流石のタリアも思わなかった。

 己が問いかけにタリアが答えないことに焦れたのか、再びカラグが口を開く。


「タリア殿。神にはべる御身に、だが公国の代行者として訊かせてもらおう。エルクーンに向かったと聞かされた貴女が、何ゆえこの時この場所にいるのか」


 自分がエルクーンに移ったことをカラグが把握していたことに少々驚きつつ、タリアはいかに返答したものか思案する。

 目の前のカラグ、そして彼が従える兵たちにも油断がない。そのためか、タリアの後ろでは今ひとつ状況が理解できていない他パーティーの面々も、落ち着きない様子でヒソヒソと言葉を交わしている。

 タリアはナヴィガトリアに守られる位置から、一行を代表するかのように彼の脇に並ぶ。ナヴィは気遣うように一瞥をくれるが、小さく頷き返してカラグの問いに答える。


「今この地下ダンジョン(、、、、、、、)に巣食う者に対処するため、わたしは、わたしたちはここに来ました」


 タリアのその答えに、カラグに伴われた兵士たちがわずかにざわめく。

 カラグが率いているのはおそらく、特殊部隊然とした性格を持つというラエルガス監視団の兵士たち。彼らの中の一人に見憶えがあったタリアは自分の考えが決して間違っていないだろうと判断する。

 今この場に居る彼らの目的がPK(プレイヤーキラー)への対応だろうことは想像に難くない。ならば自分たちの目的も同じだということを言外に匂わせてそこのところを正直に明かした。下手に誤魔化してこの場は事なきを得たとしても、以降の活動に差し支えると判断したからだ。

 そしてその確証を得るために、タリアは逆に訊ねてみる。


「おそらく殿下も同じなのでは?」


 しかしタリアのその半ば確認に近い問いに、カラグは微かに目を瞠ったものの頷かない。


「個人的にはその通りだと即答したいところだけど、その前に確認したい。タリア殿、貴女は対処すると言ったが、状況をどこまで把握し、どのようにことを運ぶつもりなのか」


 緊張を解かない公子に従って兵士たちも油断なく身構えている。その態度に呼応するように、一旦弛緩した《偽神》パーティーの面々も警戒感を取り戻して身構えた。この反応にカラグはほんのわずか眉をしかめる。


「聡明なタリア殿はお解かりかと思うが、君たちは非常に危険な立場にある。軽挙は慎んでもらいたい」


 そう言いながらカラグの視線が動くのをタリアは見逃さなかった。おそらく注目されたのはナヴィ。カラグにわずかばかり滲む焦慮の気配から、彼がナヴィガトリアという存在をいたく警戒しているであろうことを察する。

 目の前の傑物はどういった感覚に頼ったものか、ナヴィを只者ではないと看破し得たのかもしれない。それともあるいは――


『なるほど、これがライルネスの《英雄》か』


 急に口を挟んできたバーテニクスの《交感テレパシー》に思わず口に出して問い直す。


「《英雄》?」


 自分に向けられたカラグの視線に、ほんの少し怖いモノが混じった気がしてタリアは内心冷や汗を流す。


『君たち《偽神》の同類みたいなものさ。ただし力の由来がこの世界の神さま(、、、、、、、、)だって違いがあるけど』


 神が人に力を与えるという神話の類いはあちらの世界でも珍しいものではなかった。神々が実在するらしい決戦世界である。なれば尚更そういうこともあるかと、かつて目にした《偽神》にも匹敵しようかというカラグの強さに得心する。


『それにしても奇縁というか何というか。こんな知り合いを得ていておまけにこの場面でかち合う、タリアたちは実に引き(、、)が強いねぇ』


 面白がる気配を《交感》に滲ませたバーテニクスがタリアの頭の上に舞い降りた。カラグの視線が自分の帽子の上に向くのをタリアは黙って見守る。その様子から、カラグが注意していたのはナヴィの肩に止まったバーテニクスだったのかもしれないと、先ほどの思いつきに確証を得る。

 ジリジリとこの場の空気が焦げるような錯覚を覚えつつ、タリアは《偽神》たち討伐隊の事情をある程度公国側に話して聞かせることにした。これ以上睨み合っていても埒が明くまい。


「公都で公国の秩序を乱すような振る舞いをしている者たちがいると、わたしたちの同胞がエルクーンへと報せに来てくれたのです。この地下ダンジョンを根城に、殺人や誘拐といった悪事に手を染めているとか」

「ほう。その同胞とやらはなぜ公都の警備隊に報せず、わざわざエルクーンのタリア殿らを頼ったのだろうか」

「それには幾つかの理由がございますが。一つに、ここに巣食う彼らとわたしたちには浅からぬ縁があるということです」


 その答えにしばし黙り込んだカラグであったが、彼はタリアへの尋問を再開する。


「――聞き捨てならないことを言う。縁が浅からぬとは?」

「そのままの意味です。わたしたちも彼らも同じ亡国のたみ、流民だということです」


 カラグの眼差しの冷ややかさに耐えながら、タリアはそんな『設定』を淀みなく答えた。

 エルクーンでアーサーから聞かされた話――プレイヤーが流民扱いされていることについては暇をみて自分でも調べてみたタリアだった。

 エルクーンで知り得た限り、今現在ラフォニス島における流民とは、数十年前に島を揺るがした『西方動乱』の折りに住処を失い、各地に散逸した人々のことである。

 西方動乱は島西部を治めるセレニス公国の内紛より始まったとされるが、現在に至るも不明な点が多いという。

 禁断の魔法や旧王国によって封じられていたとされる魔物たちが投入されたと噂される古戦場は現在、『暗黒の領域』などと呼ばれる危険地帯となっている。流民となった人々の多くは、その失われた土地に住んでいたとされる。

 そんな物騒な土地を領土に抱え、民人を救うこともままならなかったセレニス公国はいまだその国力を回復しきれていない。

 ちなみにゲーム時代の『暗黒の領域』はその対象レベルが130以上などと言われ、事実かなりの高難易度を誇っていた。足を踏み入れたことがあるプレイヤーは極少数といった状況で、真に高レベル向けマップとされていた。


「――タリア殿らとこの遺構を不当に占拠している者たちの間柄は分かった。それで対処するとは、具体的にどのようにする算段なのか教えてもらえるだろうか?」

「さらわれた人たちを救出し、公国の秩序を乱した者たちに関しましてはこれを殲滅します」


 タリアの口にした『殲滅する』という強い言葉に、カラグは面食らう。


「殲滅? 浅からぬ縁があるのだろう?」

「だからこそ彼らが脅威になると承知しております。エルクーンへと報せに来てくれた同胞が公国を頼らなかった理由もその点にございます。失礼ながら並みの兵士がたでは彼らに対することはできない。殿下たちが今ここにいらっしゃる理由でもあります。違いますか?」


 カラグ率いるラエルガス監視団が公国随一の戦力を誇ることは何も秘されていない。どころか有名な話でもある。だがその力が実際に振るわれることの理由の裏まで考え至るのはそれ相応の思考経路を持ち合わせていなければ難しい。

 あいも変わらず子供離れしたタリアの話しぶりにカラグは目の前の少女を見詰めた。一見すると年端も行かぬいたいけな顔には確固たる自我が表出している。先ほどの言がどこまで本気かと訝しむも、そこには誤魔化しや迷いの類いが一切認められない。

 自分たちが駆り出された理由まで言い当てられたのは業腹だったが、この遺構を占拠する者たちをどう扱うかについては、どうやらタリアたちと揉めずに済みそうだと、カラグはそっと胸を撫で下ろす。


「私もここに至るまでに何度か戦った。タリア殿の危惧するところも痛いほど実感している」

「彼らは確かに我らの同胞でしたが、すでに流血で以って袂を分かちました。その時の我らが下した甘い判断が、此度の惨状を招いたと言って過言ございません。ならば我らの手で決着をつけなければならないのは道理と言えるでしょう」


 タリアの傍らにいつの間にか歩み寄っていたアーサーが厳かに告げる。カラグは急に口を挟んできたローブ姿の龍人にも嫌な顔を見せず、ただ物問いたそうに見詰め返す。アーサーは軽く頭を下げると、自分がこの一行を率いる者だと公子に名乗りを告げた。


「自分たちの手で決着と言うが、それは口封じという意味も含んでいそうだね」


 アーサーを名乗った魔法使いの表情は龍人故にカラグには読み難い。つとタリアに目を向けるも、こちらもその点では曲者だった。どうにも分が悪くなってきたなと、カラグは自嘲気味に小さく笑う。

 カラグの勘はタリアを信じても良いと告げている。さりとて公としての立場がそれを良しとしない。だがそんな彼に、思わぬところから助けの手が差し伸べられる。


『《英雄》殿は確証が欲しいってところかな』


 自分の頭の上に鎮座したまま大人しくしていたバーテニクスの《交感》にタリアは思わず訊き返す。


『確証?』

『そう、確証。彼自身は君らのことを信じたがってる。でもその根拠が弱いってところかなぁ』

『根拠が弱いって言われても。話したくないってのを別にしても、わたしたちの事情を馬鹿正直に語ったところで、それこそ荒唐無稽な馬鹿話ですよ』

『だよねぇ、ここは僕が一肌脱いで話を付けようか』

『バーテニクス。話を付けるって言ったって言葉が通じないんじゃないですか? それとも《英雄》には《交感》が届くとか?』

『いや、ちょっと違う。ライルネスの第二公子は龍と話ができるのさ』


 そんな風に《交感》でやり取りを交わしていると、何かの音声を早回しにしたような妙な音が頭上より響いてタリアはぎょっとさせられる。

 それがバーテニクスの発した言葉(、、)だとタリアが理解できたのは、彼による同時通訳が《交感》によって為されたからだった。

 突然の珍事に周囲がタリアの頭の上のチビドラゴンに気を取られる中、ふとカラグの様子を窺ったタリアは息を飲む羽目になる。咄嗟に隠しようもなかったタリアの隙だらけの表情に、異形のカラグがそっと笑った。

 そう、異形。見事な空色だった公子の瞳のうち、左側の片方が銀色に変じて瞳孔は爬虫類のように縦に裂けていた。身近な例で上げるなら、まるでバーテニクスのそれのように。


『龍にとってライルネス公国の第二公子といえば龍神姫アグリーズの恩寵を賜った《英雄》ということになってる。の姫神さまの力で龍語(、、)もばっちりってね』


 バーテニクスはタリアたち身内に種明かしをしながらもカラグに《偽神》たちの身柄を保証した。《雷鎚》バーテニクスの名において、彼らは決して旧ラハティス王国の民人に害を為す存在ではないと。

 カラグは大げさに肩を落とすと、その体内で張り詰めていたものを吐き出すように大きく息を吐いた。


「《雷鎚》様がその身をやつしてまで同道する者たちを、龍の恩寵を賜る者として信じましょう」


 そう言ってラエルガスでの人好きのする笑顔を浮かべたカラグに、タリアはほっと安堵の吐息を漏らした。

 自分たちの長が龍と会話するさまを目の当たりにした兵士たちがざわめく中、カラグは言葉を続ける。


「それと話は別に、落ち着いてからでもタリア殿たちの素性は明らかにしてもらいたいところではあるけどね」


 探るような眼差しを向けてくるカラグにタリアがドギマギしていると、意外に鋭い調子でバーテニクスが助け舟を出してくれた。


 ――曰く、《英雄》といえども、人の身では知らぬ方が幸いなこともあると。


 そうと諭されればカラグも深追いはできず、その話はなんとかうやむやにすることができた。だが逆に、バーテニクスの警告はカラグにまた別の確証をももたらすこととなる。


 タリアたちは、人が触れるには憚られる超常の何かに接する存在であると――


 カラグ公子は、以後は協調してことにあたらないかと提案した。タリアたちを監視下に置きたいという腹積もりもあっての話だ。龍人と僧侶はしばし顔を見合わせる。

 公子たちと行動を共にすれば、《偽神》の利便性が損なわれる。タリアとアーサーはバーテニクスを介在して内緒の話を交わす。格下の《三ツ首狼(トライダルフ)》を相手にした時とは訳が違う。《偽神》の異能を封じて相手取るには、PKたちは危険すぎる。


『面倒臭いな。その辺も詮索無用ってことにしようか』


 バーテニクスの提案に、タリアとアーサーは一も二もなく頷いた。



 カラグ率いる小隊と《偽神》三個パーティー、双方の長が共闘を宣言するとようやく緊張が解かれた。

 両者の幾人かが共同戦線を張るための実際的な話を詰め始めると、他の者たちは勢い手持ちぶたさとなる。控え目ながらも各々の集団ごとに私語が交わされる。

 そんな中、バーテニクスの《交感》に触れることが出来なかった他パーティーの面々に先ほどのやりとりをかいつまんで話して聞かせていたクロネの大きな耳が「ウサギの嬢ちゃん」と呼ぶ声を捉えた。

 声のした方に振り返ってみると、ラエルガス迷宮に挑んだ折りに街の出入り口で声を掛けてきた兵士の姿を見つけた。


「門番さん、お久しぶり」


 少し怖い感じのする本物ホンモノの兵士たち。その中で見知った顔が愛想良い笑顔を浮かべていることに安堵しながら、クロネは挨拶を返した。


「殿下と同じ隊にいるなんて、実は優秀な兵隊さんだったのね」

「三ツ首を倒した凄腕に見直してもらえて嬉しいよ。ところで俺の名前はアーバスだ。よろしくな」

「わたしはクロネ。魔法使いのクロネよ。改めてよろしくねアーバスさん。お互い大事にならずに済んでホント良かった」


 笑顔で応じたクロネに、兵士アーバスは「まったくだ」とわずかに顔をしかめた。


「正直ほっとしたよ。俺たち一個小隊でここのヤツら四、五人相手するのが精一杯ってところだったからな」


 そんな状況下で遭遇した、同じく一個小隊規模のクロネたちには胆を潰したとアーバスは弱々しく語った。


「そちらの団体さんの装備や雰囲気は、ここに巣食ってる連中と似通ってたし」


 なるほどその通りだろうとクロネが眉をしかめると、アーバスはニヤリと笑った。


「だからさ。あのおっかなそうな黒い兄ちゃんの後に嬢ちゃんたちの姿を見つけた時はそりゃもう天使に見えたぜ」


 そう言ってくれるアーバスにクロネは「大袈裟だなぁ」と苦笑を返す。


「実際、戦わずに済んだ訳だし大袈裟でもなんでもないさ。まぁそれはそれとしてだ」


 クロネが怪訝そうに目で問うと、今度はアーバスが苦笑を浮かべる。


「俺は君らがラエルガスのためにしてくれたことを知ってるからな。戦わずに済んで良かったと心底思ってる。けどここまで辿り着く間に、隊から何人か死人が出てな。後送されたヤツも――後送ってわかるか? まぁそんな事情もあって正直この状況が面白くない連中も何人かいる」


 アーバスは仲間たちの方をチラリと振り返る。その視線を追い、なるほどあまり芳しくない表情を浮かべる兵士の姿を認め、これじゃ怖いと感じるわけだとクロネは内心ため息をこぼす。


「そんなわけでこれからの共闘だが、少々気分を悪くすることもあるかもしれん。申し訳ないがそちらの仲間に事情を説明してもらえるか? もっともこっちだってプロだ。そんな餓鬼じみた態度は見せないように気をつけるつもりだ。でも思わずってこともある。一応先に謝っておく」

「それはしょうがないね。了解、伝えておくから」


 済まなそうなアーバスの顔に今度はクロネが苦笑を返す。


「そのわりにおおよその所はあっさり納得してもらえたものね。こっちにとってはあり難い話だけど」

「そりゃ賢龍様のお達しとあっちゃな。あんな可愛らしいお姿になってるとちと畏れ多さも目減りするが」


 茶褐色の瞳に可笑しそうな光を湛えるアーバスに、クロネが意地悪げな笑いで頷く。


「バーテニクスったらこっちでも案外敬われてるのね」

「他所の国の賢龍様のことは流石によくはわからんが。うちの大将が認めたってことはホンモノなんだろう」

「ふむふむ。ただの暴食ドラゴンじゃないってわけか」

「賢龍様を呼び捨てにするのもそうだし、えらい言いようだな。君らホントどういった人たちなんだ?」


 さほど深刻そうな様子もなく訊ねてくるアーバスに、クロネは澄まし顔で返す。


「残念。その話はさっき殿下すら《雷鎚》サマに詮索無用と釘を刺されてたし。わたしからも教えてあげられません」


 つい口が滑ったことに内心頭を抱えながらクロネはとぼけてみせた。そのクロネの言い訳じみた言葉にすら無視できない点(、、、、、、、)を見つけながらも、アーバスはわざとらしく肩をすくめるにとどめる。

「それじゃみんなに話してくるね」と《偽神》パーティーの方へ踵を返そうとしたクロネを、しかしアーバスは呼び止めた。


「うん? まだ何かあった?」

「ああ、ちょっとな。変なことを訊くと思われるかも知れないが――」


 言い淀むアーバスに、クロネは先を促す。


「なぁ、ここで俺たちが戦ってる相手、アレは何なんだ?」


 今までの陽気な調子も影を潜めて、プロの兵士然としていたアーバスの顔に困惑が浮かぶ。


「やつらと相対あいたいした時、どうにも薄ら寒さを感じたんだ。こう何というかな、最初は侮られているのかと思ったんだが。いや確かにそういった侮られてる部分もあるんだろうが、どうもそれだけって感じがしないというか――」


 我ながら要領を得ない物言いだともどかしく思うアーバスに、だがクロネは神妙な顔つきで黙ったまま頷く。

 アーバスは自分が言いたいことが上手くクロネに伝わっているか案じながらも、彼女の相槌にうながされるままその内心を吐露し続ける。


「こっちを人間扱いしてないというか。そりゃ殺し殺され合うような状況だ。惨酷だ何だと今更泣き言めいたことを言うつもりはないが、こうもっと情動があって然るべきというかな――」

「アーバスさんが感じたことは多分間違ってないよ。ここで悪さしてるヤツらは公国の人たちを自分たちと同じ人間だとは思ってない」


 自分で口にしておきながら、クロネに肯定されたことで衝撃を新たにしたものか、歴戦の特務兵は驚愕に顔を歪めた。


「どころか、ヤツらと同じ(、、、、、、)わたしたちのことも人間と思ってないんじゃないかな。元々事の発端は同じ流民相手なわけだし」


 確かにと頷くアーバスに、クロネは至極真面目な顔で続ける。


「――と言うかね、多分ヤツらにはこの世が(、、、、)真っ当に(、、、、)見えていないのよ(、、、、、、、、)


10/07:誤字と本文の一部を修正致しました。

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