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決戦世界のタリア  作者: 中村十一
第一章 冒険のはじまり
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1.ゲーマーの平穏な日常

 信号待ちの社用車の窓越し、ふと見上げた街路樹はその葉を暖色に染めている。寒風に曝された葉は葉脈に沿って朽ち綻び、どこか幾何学的な模様のようにも見えた。

(テクスチャが粗いなぁ、なんてね)

 その様に3Dコンピュータグラフィックの特徴めいたものを感じて、藤崎英臣はひとりごちた。

 ダッシュボードに貼り付けられたドリンクホルダーから飲みかけの缶コーヒーを取ろうと手を伸ばした矢先に、信号機は青へと変わる。藤崎はいまだマニュアルシフトの商用バンを発進させるため、一旦コーヒーを諦めた。



 公共交通機関が未発達なためにマイカー通勤が一般的な、ごく普通の地方都市で会社員を務める藤崎の帰宅時刻は夜の9時頃になるのが常である。この夜も何気なく目をやった目覚まし時計のLEDは21:14を表示していた。

 母はこの時間になるとすでに就寝前のテレビタイム、父は晩酌のアルコールがほどよく回って夢の中であり、帰宅後の藤崎と顔を合わせるのはまれだ。

 下に弟と妹が一人ずつの5人家族だが、今は二人とも遠隔地で就学しており実家には居ない。帰ってくるのは普通に盆と正月くらいである。

 平日の部屋着即ち寝巻きに着替え、実家住まいの有難さも特に自覚せず台所に用意された夕飯をレンジでチンしてかきこむ。

 食後は食器の後始末をして風呂に入る。風呂の後は350ミリリットルサイズの缶ビール片手に自室へ戻り、ハーフタワーPCの電源を投入する。メールのチェックや各種情報サイトを斜め読み、それが済んだらここ数年ハマっているネットゲームに興じる。これが藤崎の日常だった。



 《Decisive War World――決戦世界――》は世界数カ国で稼働試験が行われているファンタジー世界を題材としたMMORPGだ。プレイヤーは光と闇の決戦場となる世界へ女神によって導かれた勇士として降り立つ、というのが導入の物語となるが、やることと言えば従来のコンピュータRPGとさほどかわり映えがしない。

 しかし、いまだテスト期間中であるにも関わらず圧倒的ボリュームで広がりと奥行きを見せるゲーム世界が参加したプレイヤーの多くを魅了した。加えてあらゆるネットゲームにおいて、絶えることなく繰り返されてきた不正行為に対しての執拗なまでの対応が賞賛を呼んで、そのプレイ人口は現在も着実に増えている。

 その登録者数は世界で200万人を突破し、日本国内だけでも15万人とも言われる。ボリュームタイムを対象にした、仮想的な全世界同時接続者数は驚異の70万人を記録しているという。



 藤崎もこの《Decisive War World》の稼動テストにその初日から参加しており、プレイ期間は2年あまりになる。稼動初日は混雑と混乱を極めたが、数少ない『事前試験枠』の抽選に当選していたおかげで仕事帰りでもスムーズに遊ぶことができた。

 いつまで稼動テストは続くのか。運営側からはいまだ有料化の告知はされず現在に至っている。これまで2年と数ヶ月の間楽しませてもらったこともあり、藤崎個人としては対価を支払うことに否はない。

 そんなことをつらつらと考えながらデスクトップのアイコンをクリックしてゲームを起動、ユーザー認証の手続きを経てログインを行う。やがてワイド画面の液晶ディスプレイに、ゲーム内での藤崎の分身となるキャラクターが表示される。

 まずは真っ白い大きめな帽子が目を惹く。そこからふんわりとのびた明るめの栗色の髪は腰までとどいていた。優しそうな表情を湛えた目元に澄んだ水色の瞳。親しみやすい笑みをかたち作るのは、桜色のつややかな唇にまろやかな曲線を描く可憐な頬。

 ゆったりとした白を基調とする服や無骨な部分鎧に包まれた体躯は、こぢんまりといった形容がピッタリとくる。


《LV.81 人間/僧兵 タリア》


 3Dコンピュータグラフィックの作り出す少女然としたキャラクターの頭上には実にゲーム的な文字列が表示されていた。

 藤崎はこのゲームにおいて男性プレイヤーによる女性キャラクター操作、いわゆるネカマプレイに興じている。

 それまでのゲームでは前線に立ち直接敵と刃を交える巨漢の戦士といったキャラクターを好んでプレイしていたのだが、ふとしたキッカケで『癒し系の女の子もいいんじゃね?』という嗜好の転換があった。『貴方を癒します!』というノリで典型的な支援役キャラクターを目指そうとしたのである。

 そうして並々ならぬ熱意でもって容姿を作りこまれ、藤崎ご自慢の自称なごみ系美少女《タリア》は生まれた。

 ゲーム開始当初は支援役プレイ一本やりで楽しんでいた藤崎だった。なにぶん初体験の新鮮さも手伝い、通りすがりに見掛ける傷ついたプレイヤーを回復することや、ピンチのプレイヤーに支援魔法を掛けるといった、わかり易いカタチで手助けができることも嬉しかった。ちょっとしたナイチンゲール・シンドロームを疑似体験した感じである。そうやって助けた見知らぬ誰かにお礼を言われるのも嬉しく、その縁から友誼ゆうぎを得ることも度々あった。

 しかしゲームを続けるうちに、中の人である藤崎の根源的なプレイ嗜好が徐々に露呈してしまう。

 彼はファンタジーアクションゲームにおけるチャンバラをいたく愛していたのである。

 藤崎は少年時代から今日までに培った経験と小器用さ、勝負勘をこのゲームでも遺憾なく発揮して、瞬く間に武器戦闘スキルまでも磨き上げた。

 こうして作成当初は《僧侶》だったタリアの職業も、現在では《僧兵》などという少々物騒なモノへと変わっていた。純粋な支援回復系からは思いのほか逸脱してしまったと言える。

 そんな変化を遂げたが、容姿だけは今も変わらず可憐なタリアにカーソルを合わせると藤崎はゲームの開始をクリックする。

 画面のタリアはくるりとターンを決めると、両手にそれぞれ構えた盾と長剣を誇示しつつ雄叫びを上げる。藤崎の耳に、その声はずいぶんと可愛らしく届いた。



        ◇         ◇         ◇



 わずかなブラックアウトのあとホワイトアウトへ反転し、LCD越しに眺める世界は一瞬にしてその姿を現わす。

 タリアの眼前に広がるのは一面の紅葉。ゲーム内時間は昼頃か。見上げる空は青く高く。目の覚めるような晴天。

 色づいた落葉樹の葉を何となしに眺めると、昼間見た現実の枯葉とつい比べてしまう。朽ちかけた葉の傷みまでは流石に表現していない仮想世界の紅葉は、精細でありながらも作り物としての姿を厳然とうかがわせる。

 紅葉こうようが美しいこの山道を辿った先には、アルタイゼン廃鉱と呼ばれるダンジョン(怪物の棲まう危険な構造物の総称)の入り口がある。

 昨夜は単独で廃鉱内の探索へ赴こうとしたところで睡魔に負けた。そんなワケで準備は万全、このまま探索しようと決めてタリアは歩を進めた。

 踏みしめられた地面を、タリアの鉄靴が蹴る音がリズミカルに響く。やがて紅葉の並木が途切れると、荒れた山肌が見えてきた。その斜面にアルタイゼン廃鉱の入り口がぽっかりと口を開け不気味な存在感を放っている。それをさして気にもせずタリアは廃鉱内へと踏み込んでいった。



《導く灯り》という照明用の魔法アイテムがある。使うと暗がりでも使用者の周囲およそ50メートルの視程を確保してくれる。使い切りだが現実時間で半日ほどの効果時間を持つので不便さはない。

 背嚢の内容物を視覚化したフレーム上に、アイテムを表すアイコンがズラリと並んでいる。その中から《導く灯り》のアイコンを選んでクリックすると効果が発揮され、タリアの周囲がほの明るく照らされた。

 その明かりを頼りに、タリアは朽ちかけたトロッコの軌道に沿って坑道の奥へ向かう。

 しばらく進むと坑道の向かう先から、金属同士が擦れあう音が響いてきた。

 争うような激しさは感じられないが、ゲーム内にあってそのような音を立てるのはプレイヤーの敵たるモンスターだけである。キャラクターの身に着けた武器や防具は、一定の戦闘行為に及ばなければ金属的な効果音などいちいち立てたりはしない。

 タリアは〈身体能力強化〉、〈武器強化〉、〈防具強化〉といった僧侶が得意とする極めてゲーム的な定番の支援魔法を自らに施したあと駆け出す。

 坑道の先はちょっとした広間になっていた。朽ちた道具が散乱する広間の、坑道から眺めた死角にボロボロな金属鎧を着込んだ骸骨のモンスター(スケルトンウォリアー)が4体ほど群れている。

 タリアにとっては、既に何度も探索したダンジョンである。その場にモンスターが配置されているパターンには憶えもあって、驚きもなく骸骨戦士の集団に奇襲を掛ける。

 突撃の勢いを利用して1体の骸骨戦士に長剣を振り下ろす。打撃戦闘スキル〈強打〉が青白い閃光とともに骸骨戦士を切り裂いた。斬りつけられた骸骨戦士がその衝撃に怯む。

 別の1体がタリアの隙を衝こうと短槍を突き出してくるが、それは彼女に誘導された動きだった。タリアは繰り出された穂先を盾で難なく阻むと、そのままカウンター攻撃へとつなげる。

 先にタリアの〈強打〉を浴びた個体、攻撃を止められた個体、それぞれ体勢を崩した2体の骸骨戦士を、彼女は防御に用いた盾で以ってまとめて打ちのめす。既に〈強打〉によって深刻なダメージを被っていた骸骨戦士はそれで斃れる。まずは1体撃破。

 続いてカウンター攻撃でいまだ体勢を崩しているもう1体に攻勢を掛ける。長剣による連撃を浴びせつつ、残る骸骨戦士たちへの盾にするように回り込み、そのまま止めを刺す。これで2体目。

 足元に散らばる、かつて仲間だった残骸を避けつつ、残り2体の骸骨戦士が短槍を構えてにじりよる。《Decisive War World》のモンスターはそれなりに凝った動きを見せてくれる。戦闘ルーチンが自己完結しておらず、プレイヤーの挙動に応じてモンスターの挙動も変化するため、いわゆる対戦格闘ゲームのコンピュータ戦に近いやり取りが楽しめるのである。

 モンスターの反応は何段階かに区切られて設定されており、プレイヤーが感じる手応えはモンスターのレベルや戦闘に対するセンスの有無で変わってくる。

 骸骨戦士の戦闘ルーチンは武装しているだけあって少々手強い。2体は安易に先制せず、タリアに短槍の穂先を向けたまま挟み討ちを狙って左右に分かれ始める。

 奇襲により4体のうち半数を片づけた。残る2体程度なら、範囲打撃戦闘スキルで先制の後に各個撃破しようと決め、タリアは間合いを測った。

 目測をつけて範囲打撃戦闘スキル〈薙ぎ払い〉を一呼吸で繰り出す。距離を離しつつあった2体の骸骨戦士に長剣の強烈な横斬りが襲い掛かる。

 長剣はあやまたず2体の骸骨戦士を捉えるがそれだけでは斃しきれない。しかし単体への威力的には〈強打〉には劣るものの、強力な打撃戦闘スキルである〈薙ぎ払い〉の衝撃により骸骨戦士の体勢は崩れ、長剣を振り切ったタリアの隙を衝くことはできなかった。

 タリアは〈薙ぎ払い〉の隙から立ち直ると、1体の間合いから離れるように距離をとってもう1体の骸骨戦士に迫る。骸骨戦士の体勢はさすがに回復しているが、タリアがそこへ誘うように長剣の切っ先を向けると、応えるかのように突きを放ってきた。

 読んだ通りの攻撃にタイミングを合せて盾防御。刺突を阻まれ隙を見せた骸骨戦士にそのままカウンター攻撃。盾で強か(したた )に殴りつける。骸骨戦士の体勢は崩れ、タリアは好機を見逃さず長剣を振るう。

 地面にバラバラになった骸骨戦士の残骸が四散し、残る敵は1体のみ。彼我の距離とタリアの手際の良さに手が出せなかったのか、最後の骸骨戦士は短槍を構えたまま堅持している。

 1対1ならばアルタイゼン廃鉱上層の骸骨戦士はタリアにとって難敵ではない。〈強打〉による先制で強引に骸骨戦士の守勢を崩し、続く斬撃で圧倒する。最後の骸骨戦士も瞬く間に破壊され、乾いた音を立て地面に転がった。



 モンスターを倒した後はファンタジーRPGで馴染みのお楽しみタイムである。骸骨戦士の残骸に改めてフォーカスを当てると軽快な効果音と共に戦利品群を視覚化したダイアログが表示される。

 残念ながら今回は特筆するようなお宝は見当たらなかった。四体分の作業を終えるとモンスターの残骸が世界からじんわりと消えていく。

 更に坑道の奥へと進もうとするタリアを呼び鈴のような効果音が引き止めた。画面端にチャット用のテキストフレームが表示される。どうやらゲーム内の友人から個別チャットの回線が開いたようだ。

【リアたん、ばんわー。昨夜の続きに一人で東廃鉱?】

 タリアをリアたんと呼び、親しげな調子で夜の挨拶を寄越してきたのは《Decisive War World》のプレイ初期に知り合った友人クララだった。クララは知り合った当初から今も変わらない純近接戦闘職プレイヤーで、現在でもタイミングが合えば行動を共にする友人の一人だ。

 東廃鉱と言うのはゲーム内で使われるアルタイゼン廃鉱の俗称である。日本国内サービスで提供されるゲームの舞台《ラフォニス島》、そのゲームマップの最東端に位置するためこう呼ばれる。

【クララさん、こんばんは。ハイ、今さっきログインして今は1戦終わったところです】

 モンスターが再出現しないうちに、それなりに安全地帯と言える軌道付近まで引き返しタリアは、努めて丁寧な語調で返信した。

【ヒマなんで一緒していい? 東廃鉱の深いトコいこー】

 思わぬ提案であったがアルタイゼン廃鉱はさほど困難な要素のない、単純に階層ごとでモンスターの強さが変わる程度のダンジョンである。入念な下準備も必要ないので、タリアはクララの提案を受け入れることにした。

【了解です。それじゃ一旦廃鉱の入り口に出てお待ちしてますね】

 丁寧で人当たりの良い対応。それが癒し系美少女《タリア》をネカマプレイするにあたっての、藤崎のポリシーである。

【ありがとー。ところでサっちんとボルト、ジャックさんも一緒デス】

 クララの返事に、今夜のプレイは午前様になりそうだなと、タリア――藤崎は微笑んだ。



 藤崎がゲーム画面を眺めつつ、ビールをチビチビやりながら待つこと数分。馴染みのプレイヤーキャラクターたちが、タリアの待つアルタイゼン廃鉱の入り口に集まってきていた。いずれもこの2年あまりのプレイで知り合った友人たちだ。

 獣人族の剣士クララ。背中に担いだ大剣と、ほっそりとした猫型獣人族の体躯はオーソドックスなギャップ萌えを体現していると人気の組み合わせである。

 ピンと立った黒いネコミミと緋色のネコ目に愛嬌がある活発系少女で、ネコミミに合わせたような黒髪はショートボブ、毛先は濡れた様なウェーブを描いている。細い身体には大変豊かな母性の象徴が備えられており、実に潔いキャラクターメイクと言えた。

 こんなことからも藤崎はクララの中の人を自分と同じネカマだと踏んでいる。チャットに垣間見える口調など、藤崎とは嗜好が大いに異なるようではあるが。

 クララにサっちんと呼ばれていたエルフ族の少女は魔術士サーラ。顔立ち凛々しく、エメラルド色の瞳も実に真面目そうな表情を醸し出しているが、柔らかな頬の線と微笑むような口元が雰囲気をやわらげている。身体の線が出ないような野暮ったいローブを着込んでいるが、彼女にはそれが妙に似合っていた。

 藤崎はサーラを見るたびなんとなく赤毛のアンという単語を思い出す。いかにも魔法使いといった趣きの三角帽から、赤毛を三つ編みにして垂らすというセンスはいわゆる『萌えオタ』と一線を画しているように、藤崎には感じられる。妹経由で少女マンガを楽しんでいた時期もある藤崎は、それをネタにしてサーラと盛り上がることもあった。

 ボルトはエルフ族の青年で狩人だ。弓術スキル、罠の取り扱いスキル、短刀による接近戦スキルを無節操に上げていたら、いつのまにか弓兵から変わっていたとは本人の弁である。

 リアル酒豪であるらしくよく飲酒プレイを口にするが、彼が手元を狂わせることは滅多にない。

 アッシュブロンドを短髪にまとめた、碧眼の目元も涼しい野性味溢れる造作のイケメンであるが、狩りが大好きというバトルマニアな反面、友人とのチャットを楽しみつつ釣りスキルで時間を潰すという枯れたところもある。

 クララに『さん』付けで呼ばれていたジャックは、全身鎧で身を固めた壮年の人間族戦士だ。短く刈り込まれた黒髪と、整えられた口ヒゲがシブさを醸し出している。彼もまたタリアとはレベルの低い頃からの友人である。

 灰色の瞳が厳めしい歴戦のつわものといった風のジャックが貧相な革鎧を身に纏い、粗末な剣でふんわりもこもこな毛並みの野兎に斬りつけるというシュールな眺めはなかなか記憶から色あせない。その横でそこらの村人に毛が生えたような服装のタリアが、みすぼらしい木の棒を掲げて回復魔法を唱えていたのだがそれもまた良い思い出だ。年々高精細化するCGの表現力は、たまに意図せずそんな面白みを見せてくれる。

 当時ジャックは「新しいゲーム始めるたびに思うんだけど老け顔で駆け出しってのは微妙」と冗談ながらによくこぼしていた。ジャックは外見が好きなように変更できるRPGなどをプレイする際、ほぼ中年男性に設定しているという。そしてその外見を裏切らない言動は社会人として見習いたいと思えるほど『大人』で、タリアは密かに1プレイヤーとして彼を敬っている。



「こんばんは。今夜はよろしくお願いします」

 タリアの挨拶に仲間たちもそれぞれ返事を返す。今夜は集まる予定だったのかと訊ねるタリアにサーラが答えた。

「エルクーンの街で週末のフリマイベントやってるんです。みんな何となく冷やかしにきてたみたいで。気がついたらだべってました」

「掘り出し物が結構あったよ」と、ボルトが見憶えのない長弓を構えてみせてくれた。各々装備を新調したらしく、そう言われてみれば皆が見慣れない武器や防具を身に着けている。

「羨ましくなんてないんですからね!」というタリアの言葉に、「ツンデレ発言いただきましたー」とクララが楽しそうに感情表現操作で笑う。彼女はこういったところで芸が細かい。

「さて。この5人パーティーなら7層辺りまで降りてみようか」

 ジャックの提案に皆が賛成する。タリアは仲間たちに支援魔法を掛けつつ自分の使った《導く灯り》がまだまだ有効であることを伝えた。了解と返してパーティーでは前衛となるジャックとクララが、廃鉱の入り口へと先んじる。タリアは損害担当の役目も負う前衛二人の回復を務めるため中衛として、遠距離攻撃を行うボルトとサーラは後衛としてそれに続いた。



 アルタイゼン廃鉱第1層の坑道を難なく突き進み、一行は廃鉱を上下に貫く巨大な吹き抜けのフロアに辿り着いた。断崖絶壁と見紛う吹き抜けの壁面には、数基の無骨な造りのエレベーターが備えられており、その乗り場付近は照明によって明るく照らし出されている。

「丁度この層に止まってるのが1基あるね」

 目ざとく見つけたボルトにならい一行は進む。全員がエレベーターに乗り込むと、クララが嬉々として操作盤に手を伸ばす。

「それでは7層へポチっとな♪」

 エレベーターが物々しい音を立てて吹き抜けの暗闇へと下降し始める。慣れていないとまるで奈落の底へと吸い込まれるような酩酊感を覚える眺めも、五人には既に馴染みのものだ。吹き抜けに張り出した各層のテラスでモンスターと交戦する他のプレイヤーを見送りつつ7層を目指す。

「何度乗ってもここのエレベーターはワクワクするにゃー。他の子たちが戦ってるのを見たりすると、こっちもやったるでーって感じになるしねー」

 エレベーターの上でダンスの感情表現操作で落ち着きなく動き続けるクララの言葉に、ボルトも周囲を見渡しながら賛同した。

「他のプレイヤーの戦いを俯瞰で見ることなんてそうそうないからね。確かに見物だ」

 やがてエレベーターは第7層に到着した。全員が降りても動き出そうとしない。今はさほどエレベーターに用がある者もいないのだろう。

「ここからは真面目に行こう。各自油断しないように」

 ジャックの言葉に全員が了解の返事を返す。7層のテラスにも既にモンスターの姿が認められた。1層で見かけた骸骨戦士を4体ほど従えて、大型四足獣の骸骨に跨った異形の騎士が、30メートルほど先を移動している。

《ダークライダー》と呼ばれる強力な不死系モンスターだった。レベル80ほどの平均的な技量を持つプレイヤーキャラクターが、6人パーティーで挑んでかなりの手応えを覚える相手である。従っている骸骨戦士も見掛けは同じでも、1層のそれとはモノが違う。

「《騎士様》の注意は私が引いておく。その隙に先ずは《兵士》を片づけてくれ」

 配下を従えた強力なモンスターを相手どる場合のいつもの戦術ではあるが、ジャックは一応の確認を取る。全員が了解の返事を返すのを待って、武装をクロスボウへと切り替える。

 ジャックはクロスボウを構えると、合図と共に《ダークライダー》めがけて引き金を引いた。低レベルのモンスターならば、その一撃で倒すこともできる鋼鉄の矢が《ダークライダー》に命中するも注意を引く程度に止まる。

 ジャックに向き直った《ダークライダー》は、大仰な動作で巨大な長剣の切先をジャックへと突きつけた。それに応えるかのように、短槍の穂先を揃えた骸骨戦士たちが、足音も高くパーティーへと向かってくる。

 タリアたちは幾度もの交戦の機会を経て、彼我の距離が一定以上離れて戦闘が始まった場合、《ダークライダー》は骸骨戦士を先行させてくることを学んでいた。今回も目論見通り《ダークライダー》と骸骨戦士たちの進撃タイミングをずらすことに成功した。

 クララが大剣を引っ提げてパーティーの中から飛び出す。狙いは先行してくる骸骨戦士の集団。タリアはクララの背を見送りつつ〈障壁〉の魔法を施した。これは幾らかのダメージを肩代わりしてくれる、いわゆるバリアとなって働く支援魔法である。

 クララは自分を包む〈障壁〉の効果を画面上のアイコンとCGエフェクトで確認しつつ、骸骨戦士の横列に突っ込む。一斉に繰り出された4本の穂先が、自身の周囲で〈障壁〉と火花を散らすさまに怖気おじけもせず長大な得物を振り回す。

 クララののびやかな肢体がうねると、その胸部に鎮座した二つの大質量も動きに合わせて胸甲――俗にビキニアーマーなどと呼ばれる――の締めつけをモノともせず盛大に跳ねる。

 大剣が唸り、強烈な横薙ぎが4体の骸骨戦士をまとめて捉えた。斬撃によろめく骸骨戦士たちは、その標的をジャックからクララへと切り替える。

 骸骨戦士の注意が残らずクララに逸れたことを確認したジャックは、その隙を衝いて《ダークライダー》へ向かう。先に一撃を食らわせてきたジャックに戦意を向けたまま、《ダークライダー》も迎え撃つ構えだ。

 ジャックは駆け寄りながら、装備を方形盾と(ヒーターシールド)戦 鎚に(ウォーハンマー )持ち替えた。振りかぶった戦鎚を《ダークライダー》目掛けて勢いよく叩きつける。しかしその攻撃は瞬時に掲げられた盾によって阻まれ、両者の激突は盛大に火花を散らす。こうして死闘の火蓋が切って落とされた。



 物騒な風切り音を立てて、クララの大剣が勢いよく旋回する。大剣はその長大な刃渡りで以ってあらゆる斬撃が広い攻撃範囲を持つ。クララは敵集団に強力な一撃を叩き込むとアクロバティックな跳躍を織りまぜ反撃を回避、そこを追いすがる骸骨戦士にはボルトが放った矢が襲い掛かる。

 的中の衝撃で骸骨戦士が怯んだところにサーラの繰り出したスイカ大の火球が着弾して爆発。敵の刃が届かない距離まで逃げおおせたクララが再び斬り込み、炎に包まれた骸骨戦士に〈強打〉を浴びせてとどめを刺す。骸骨戦士たちとの戦闘は優位に進んでいる。タリアは《ダークライダー》とジャックの戦いへ注意を向けた。

 タリアの盾より大きな方形盾を掲げたジャックは強敵をよく抑えているが、痛撃以外にはあえて防御を解いて反撃しているため、度々かすり傷を負っている。タリアはジャックに持続回復魔法〈再生〉を施しつつ、再び骸骨戦士に意識を戻す。

 骸骨戦士2体相手に攻撃と牽制を繰り返すクララの側方を衝こうと、残る1体が大胆に踏み込んでくる。ボルトのフォローが速射となって骸骨戦士に突き立つが、今回は怯ませることができなかった。骸骨戦士は止まらない。

 これを阻むべくタリアは中衛より前進して〈強打〉を浴びせた。骸骨戦士がその衝撃にようやく怯む。タリアは続けざまの〈盾強打〉で以って骸骨戦士を殴り飛ばし、さらに後方へと押し込んだ。敵を退けるとタリアも深追いせずに飛び退すさる。

 轟! とイヤホンを越しに鼓膜を震わせ、目の前に火柱が上がった。クララが抑えていた2体と、タリアが後退させた1体を巻き込んで、サーラの大火力魔法〈劫火〉が吹き荒れる。

 詠唱に時間のかかる攻撃魔法スキルではあるが威力は絶大、サーラはタリアが敵を押し戻すことまで想定し発動位置を調整してのけていた。次いでボルトの範囲射撃スキル〈流星矢メテオアロー〉が降りそそぎ骸骨戦士の追撃を強引に抑えつける。

 そろそろ骸骨戦士たちのダメージも限界付近に達していると踏んだクララは大技に備えていた。大剣を右肩に担ぐように構え、一瞬の溜めのあと前進しつつ左へ斬り下ろす。クララの攻撃は止まらない。斬り下ろした勢いのまま、全身が反時計回りに旋回、その挙動に従い大剣が横殴りに繰り出される。更に旋回、更に横斬りと続けざまに5回の回転斬りが骸骨戦士たちに襲い掛かった。

 大剣専用攻撃スキル〈大車輪斬〉は強力だが使用後の隙が大きいためにとどめ以外には使いにくい。しかしクララは、機を見てそれを愛用していた。強力な連続攻撃を浴びせられた骸骨戦士はことごとく斃れる。

 骸骨戦士たちが沈黙したのを見届けたあと、4人はジャックの応援に向かった。



《ダークライダー》の乗騎たる、骸骨の巨獣が棹立ちになった。それがモンスターの特殊な攻撃スキル〈咆哮〉の予備動作だと知るジャックは防御姿勢をとる。果たして巨獣が嘶い(いなな )た。まともに食らえば、俗に『ピヨリ』と呼ばれる操作不能状態に陥るいやらしい攻撃だ。ゲーム画面を揺らすエフェクトが、その音波の凄まじさを演出する。

「かけつけた途端ピヨるとかwww」

 クララの発言に、パーティーの状況を示すフレームを確認すると、なるほどクララ、ボルト、サーラの3名に『ピヨリ』状態のアイコンが燦然と輝いている。しかしそれらは次の瞬間に消えた。タリアが回復魔法でステータス異常を治したのだろう。

「ちゃんと《騎士殿》の動きを見るように」

 ジャックは牽制攻撃の合間に手早くチャットを打ち込む。「おk」と答えてクララが横に並び立つ。

 戦いはここからが本番と言える。ジャックはクララをその場に残し、《ダークライダー》の背後へと回り込もうとする。《ダークライダー》はジャックを追うように向きを変え、クララ――ひいては仲間たちに背を晒した。

 防御牽制役のプレイヤーが強敵の戦意マークを引きつけるのは『タゲをとる』などと呼称され、MMOにおいては常套手段である。防御役はモンスターのマークを自分に向けさせることによってその攻撃方向を誘導し、仲間への攻撃を阻むと共に味方側の攻撃するチャンスを作り出す。

 防御役は『盾役』、『タンク』などと呼ばれ、戦闘をある程度コントロールする側面もあることからパーティーのリーダーとなることも少なくない。

 ジャックは優秀なタンクだった。敵のコントロールは勿論、自分にできる最大限の攻撃もかかさず、『食らってはならない』とされる致命的な被害は適確に防御する。

(それにしても火力勢は上手くなったなぁ)

 応戦に余裕があるため、ジャックはついつい仲間のプレイを分析してしまう。

 先ほどはうっかり特殊攻撃を浴びてしまったクララたちだが、それ以降はキッチリかわしている。ジャックとの合流を優先したための、ケアレスミスだったと言ったところか。

 ある種囮とも言えるジャックから、《ダークライダー》のマークが逸れないように火力も上手く調節している。これが下手な場合、防御性能に劣る火力陣へモンスターのマークが移り、混乱と無用な損害を招くことにつながる。

(さて順調に《騎士殿》の体力も25%を切ったし、そろそろ大技がくるな)

《ダークライダー》の背後に貼り付いて攻撃していたクララも、その位置を大きく下げていた。ジャックもタリアの〈障壁〉が、自分を包むのを視認しながら防御姿勢をとる。

 果たして《ダークライダー》が長剣を天にかざした。隙だらけの体勢だがそこはゲーム的なお約束か、こちらからの阻止行動はさっぱり功を奏しない。この辺りも経験則だ。

 派手な紫電と轟音を撒き散らし、虚空から巨大な剣が次々と出現する。それらは《ダークライダー》を円陣で囲むようにして、地面へと垂直に突き刺さっていく。

冥王雷陣剣めいおうらいじんけん〉と呼ばれる、不死系上位モンスターが得意とする高威力の攻撃である。

 ジャックのゲーム画面が激しく揺れた。一撃で〈障壁〉が砕かれると、強力なレアアイテムである方形盾による防御も抜けてダメージを食らう。体力ゲージの、実に25%ほどをもぎ取られ、毎度のことながらこのダメージは馬鹿馬鹿しいなと毒づきつつジャックはきっちりと次の手を打った。



〈冥王雷陣剣〉を凌いだジャックが挑発スキルで《ダークライダー》の気を引く。次いで戦鎚による連打が繰り出されると、モンスターのマークは即座に彼へと誘引された。

(やっぱりジャックさんは頼もしい)

 タリアからジャックへ回復魔法が飛ぶのを意識の端に留めつつ、ボルトは安心して射撃を再開する。まずは派手な攻撃を控えて、敵の戦意が十分ジャックに向けられるのを待つ。この辺のバランスは経験を積むしかない。

 ボルトと共にパーティーの火力を担うクララやサーラも、同様に抑え目な攻撃で様子を見ている。巨獣の後ろ足による蹴り上げを、容易くかわすクララを画面の中に見て、ボルトの口元が緩む。

(この面子だとほんとイージーモードだな)

《ダークライダー》がクララを(、、、、)後方と(、、、)意識した(、、、、)のを受け、ボルトは強力な射撃スキルを準備した。わずかな溜めの後に矢を放つ。

 螺旋のようなエフェクトをまとった矢が宙を走ると《ダークライダー》に突き立ち、通常の射撃より大きくその体力を削り落とした。《ダークライダー》がわずかに怯むと、ジャックが目敏くその隙を衝いて〈強打〉を叩き込む。以心伝心とでも言おうか、その連携プレイにボルトは少なくない満足感を覚える。

 あたかもそれが合図であったかのように、クララとサーラもそれぞれが強力なスキルを放った。この攻勢に《ダークライダー》の残り体力が著しく低下する。

 戦局は終盤を迎えようとしていた。



 縦横無尽に剣を振るう《ダークライダー》の挙動に目を凝らしつつ、サーラは最後の追い込みへの戦術を組み立てた。とは言っても優秀な前衛が抑えていてくれるので難しい話でもなく、自身が習得している攻撃魔法を、低威力のモノから順番に放つといった単純なモノだ。

 最後の悪あがきのごとく〈咆哮〉を上げようとする《ダークライダー》の予備動作を見て安全圏へ一旦退避。その後〈氷槍〉、〈炎槍〉、〈劫火〉と続け様に放ち終える頃には、モンスターの体力も残り10%を割り込んでいた。

 一気に削り斃す! という意志のもと、サーラは更に上位の魔法を唱えた。単体攻撃魔法であるにもかかわらず、〈劫火〉並みの詠唱時間を要する〈氷爆〉、〈炎爆〉が続け様に《ダークライダー》の背で炸裂する。

 最後に食らった〈炎爆〉のダメージにより、転倒判定の値が限界を越えたものか

《ダークライダー》の巨体が大きく傾いだ。その隙に赤光を帯びた矢が甲高い音と共に次々と命中し、クララの回転斬りが何度も襲い掛かる。

 クララの弧を描く大剣が振り切られた次の瞬間、ついに強敵《ダークライダー》は重低音の苦鳴を残し、地響きと共にその巨体を沈めた。



         ◇         ◇         ◇



 テラスから坑道への入り口辺りで徘徊していた《ダークライダー》率いる一群を排除したあと、一行は坑道を奥へ進みつつモンスターを狩っていった。危なげなく進み、第7層のボスモンスターが出現するエリアも遠目から覗いてみたが、残念ながら不在であった。別のプレイヤーに倒された後だったのだろう。

 現実時間で零時近くになり、パーティーは一旦休憩することになった。廃鉱内においてモンスターが出現しない一画に陣取り、戦利品をどう分配するか話し合う。

 強敵ダーク ライダーを中心に斃して周ったため、今夜の狩りはなかなかの成果と言えた。装備強化用の貴重なアイテムであったり、幸運にも現状の物から交換できる性能の防具や武器であったりとパーティーのムードも明るい。

 藤崎は煙草を吸いながらチャットの様子を眺めていた。《Decisive War World》はアクション性が高い故に操作から両手が離せず、休憩のタイミングでもなければ落ち着いて喫煙もできない。

【タリア嬢は長剣いらないのかね?】

 ジャックの発言に返事を打ち込む。

【攻撃性能は高いんですけど能力値に魔法性能が付いてないからちょっと使いにくいですね。ですから今回は遠慮します】

【なら別ので穴埋めで~】

 クララの配慮に、他のメンバーもそれには肯定的な反応を返す。この面子がアイテム分配で揉めたことってないなと口元を綻ばせつつ、ふと時計に目をやる。丁度LEDが00:00を刻んだところだった。ゲーム画面に視線を戻すとそこには珍しいものが表示されている。


【私の名はアルテミエル】


 ゲーム画面中央に、通常よりかなり大き目のフォントで、そんなメッセージが表示されていた。他のゲームではこのような形態のメッセージもよく目にしていたが《Decisive War World》では初めてお目にかかる。

 アルテミエルとはゲーム導入時の物語に登場する、決戦世界の母なる女神の名前であったので、運営サイドが用意した初の突発イベントかと訝しむ。

 画面端にテキスト表示のフレームがポップアップした。この突発的な事態を受けて、広域チャットに発言を垂れ流すような、お調子者たちによるメッセージが怒涛の勢いでログを押し流す。


【女神さまキタ――――――――――――――――――――――――!】

【ちょ、メッセに目隠しされてんだwww】

【下手くそ乙】

【NM戦中だってのにマジ邪魔】

【運営空気嫁(くうきよめ)

【NM厨ザマぁwww】

【突発イベントwktk(ワクテカ)!】


 藤崎は煩わしさを覚えて、広域チャットのログ表示オプションを無効に切り替えると成り行きを見守った。この状況には妙な胸騒ぎがする。

【こういうイベントの入りって珍しいんですか?】

【いえ、やる気のある運営のゲームだと珍しくないですよ】

 MMOはこれが初めてというサーラの問いに生返事を返す。他の3人も別のゲームでの体験などを披露するが、その語調は無味乾燥で普段のユーモアがうかがえない。彼らもまた、藤崎と同様な違和感を覚えているのだろうか。

 そして、画面中央のメッセージが切り替わる。


【勇士たちよ、学びの時は終わりました】


 学びの時が終わる――テスト期間が終わるということだろうか?

 藤崎は画面を凝視し続ける。なぜか、目が離せなくなっていた。


【あなたがたを我が戦場へと導きます】


 胸騒ぎは次第に大きくなり、圧迫感さえ覚える。

 藤崎は煙草の灰を落としつつ大きく深呼吸した。

 原因不明の焦燥感が募る。


【その身体と技を以って】


 緊張を紛らわそうと、無意識のうちに煙草を咥えなおす。

 藤崎は、煙草を深く吸い込もうとした――


【世界の盾とならんことを】


2012/03/17:本文の描写を変更致しました。大筋に変更はございません。

2014/07/26:本分を修正しました。大筋に変更はございません。


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