雲ひとつない日
掲載日:2026/05/24
雲ひとつない青空だった。
駅前の並木道にはやわらかな光が落ち、人々はいつも通りの顔で通り過ぎていく。
私は待ち合わせ場所で「おはよう」とゆいに声をかけ、一緒に学校へ向かった。
チャイムが鳴り、授業が始まる。
先生の声と、鉛筆を走らせる音が静かな教室に広がっていた。
その時だった。
乾いた破裂音が、突然教室に響き渡った。
一瞬、誰も何が起きたのかわからなかった。
けれど次の銃声と同時に、生徒たちの悲鳴が爆発する。
目の前でクラスメイトが倒れた。
床に飛び散った赤を視界の端に捉えながら、私は夢中で教室を飛び出した。
廊下には血が広がり、逃げ惑う足音と叫び声が錯乱したように響いている。
武器がいる。
そう思った私は、家庭科室へ駆け込んだ。
包丁。まな板。裁ちばさみ。
使えそうなものを、手当たり次第に鞄へ詰め込む。
銃に勝てるわけがない。
そんなことはわかっている。
それでも、何もできないまま殺されるのだけは嫌だった。
どれほど時間が経ったのだろう。
いつの間にか、生徒たちの叫び声は消えていた。
静まり返った校舎に響くのは、冷たい廊下をゆっくりと歩く足音だけ。
そして。
「見つけたら殺せ」
低い声が、すぐ近くで聞こえた。




