8.「ススザ村(2)」
「こ、これは一体……!?」
僕が驚いていると、カカナが何かに気付く。
「家の上に人がいるわ!」
彼女が指し示す先、石化した家の一つの屋根の上に、綺麗なドレスに身を包んだ少女がいた。まるで動物のようなモコモコした金髪が可愛らしい女の子だ。
「見付かってしまいましたわね」
発言とは裏腹に腰に手を当てて堂々と仁王立ちしていた少女は、跳躍すると、僕らの眼前に着地する。見ると、ドレス姿の彼女は、何故か弓矢を背負っている。
「良かった! 君は無事だったんだね! 何があったの?」
「あ、ちょっと待って、イヴィラ!」
「ハッ! 近付くんじゃないよ、イヴィ! 相手は、〝全員が石化した村で唯一ピンピンしてる奴〟だよ?」
「その女、危険な匂いがプンプンするの!」
近付こうとする僕の腕を、カカナ、リンジーさん、そしてスプリちゃんが掴んで止める。
「初対面なのに散々な言われよう、酷いですわ」
胸に手を当てて悲しそうに俯く少女。
「私はルファリー。見ての通り、〝没落貴族〟の娘で、今はこのススザ村に暮らす村人ですわ」
顔を上げたルファリーは、優雅にカーテシーした後、にっこり笑って言った。
「それでは、死んで下さいまし。『石化』」
「「「「!?」」」」
無造作に翳された彼女の手が光を帯びると、僕たち全員の身体が、四肢から石化していく。
「〝キルアイズ〟!」
慌てて僕は仲間たち全員と自分自身の身体も視認して、石化を〝殺して〟解く。
「あら……」
ルファリーは、口元に手を当てて目を丸くした。
「その固有スキルとその容姿に〝イヴィラ〟という名前……もしかして貴方、あのイヴィラ・フォン・バッドネスですの?」
「そうだよ!」
どうやら僕のことを知っているらしい。
「噂と違って、まるで愛情を一杯受けて育った能天気なお坊ちゃんみたいな感じですわね、貴方」
「ありがとう!」
「いや、別に褒めてはいないのですけど……」
やった! 愛情を一杯受けて育ったみたいに見えるって言われた!
やっぱり世界一愛されてるっていうのは、他の人にも伝わるんだね!
彼女は僕を褒めてくれた!
お返しをしよう!
「ルファリー、君を助けるよ! 〝敵〟はどこ?」
「は? 何を言ってますの? どう見ても、この惨状を生み出した元凶、犯人は私しかいない――」
「君をそんな〝悲しい表情〟にした〝敵〟がどこかにいるんだよね? 僕が倒すから、その敵の居場所を教えて!」
「!」
ファイティングポーズを取る僕を見て、ルファリーが再び目を見張る。
「……面白い男ですわね、貴方……」
「ありがとう!」
「いや、だから別に褒めた訳では……って、もう良いですわ」
「はぁ」と溜め息をついた彼女は、「そこまで言うなら、教えて差し上げますわ」と、石像と化した村人の一人を指差した。
「愛を誓い合ったその男が、浮気したのですわ!」
ルファリーはその綺麗な瞳を、ギラギラと怒りに燃やした。
※―※―※
ルファリー曰く、彼女はこの国の東部にて、伯爵家の令嬢として生まれて、何不自由なく暮らしていた。
優しい父親と凛とした母親と三人で暮らした彼女は、幸せだった。
「厳格な当主が多い中で、父は珍しい程に穏やかで優しかったですわ。そんな彼のことが私は大好きでした」
穏やかな微笑を浮かべるルファリー。
「……が、父は〝優し過ぎた〟のですわ」
その表情が陰る。
「貴族社会は、優しさだけでは生きていけないんですの。出世争い、勢力争い、蹴落としあい。国王にゴマをすり、図太く、時にずる賢く立ち回れる者が上に行き、そうでない者は落ちるだけですの」
ルファリーの父は、他者と争うことが苦手で、計略を練ることは疎か、他者の策を予期することも、防ぐことすら一切出来なかった。
「その結果、伯爵家だった私たちの家は、子爵家へ、更には男爵家に落ち、挙句の果てには爵位さえ剥奪されましたの」
横領と国王への背信行為という、全く身に覚えがない罪を着せられて。
「本来ならば処刑は免れないところ、投獄すらされないのだ。慈悲を請うた彼らに感謝することだ」
玉座の間にて、王が見下しながら告げた時、無実の罪を着せた張本人たちは、顔を伏せながら、一瞬、下卑た笑みを浮かべたという。
そのような経緯で、ルファリーの家族は没落貴族となった。
それまで父のことを支え続けていた母は、爵位剥奪が判明した直後に見限り、家を出て行った。
※―※―※
出来るだけ知り合いがいないところを探して、西部にあるススザ村へと、父に連れられてやってきたルファリーだったが。
「いや! お父様! いやあああああああ!」
勢力争いに巻き込まれ蹴落とされたことで心労が祟ったのか、移住して直ぐに病に倒れた彼は、そのまま帰らぬ人となった。
「お母さまにも見捨てられて、お父様には先立たれて……私はこの世界で独りぼっちですわ……」
ルファリーは絶望し、生きる気力すら無くして、家の中に閉じこもった。
そんな中。
「ルファリー! 俺と一緒に遊ぼうぜ!」
他の村人たちが腫物に触るように彼女を扱うのとは対照的に、その少年だけは、元気一杯に家の外から彼女に声を掛けてきた。
「………………」
肉親を亡くして塞ぎ込む相手に対する態度とは到底思えず、失礼極まりない男だと内心で断じたルファリーは、玄関の扉すら開けず、ただ無視した。
しかし。
「ルファリー! 川に釣りに行こうぜ!」
「………………」
どれだけルファリーが無視しようが、彼は意にも介さなかった。
「ルファリー! 猪狩りに行こうぜ!」
何度無視しても。
「ルファリー! 野鳥狩りに行こうぜ!」
何回無視しても。
「ルファリー! 森の奥まで探検しに行こうぜ!」
幾度無視しても。
そして――一年が経った。
少年は家に来るたびに、「じゃあ、今日もここに置いとくから! また来るよ!」と、パンや果物、水などの食料を籠と革袋に入れて玄関の前に置いておいてくれた。
父を失ったショックで、それどころではなかったため、最初は、何の味もしなかった。
が、不思議なことに、最近は美味しいと感じるようになっていた。
そして、それとはまた別の問題があった。
「……本当に、鬱陶しいですわ……」
食料を口にする度に、元気一杯の彼の声が思い出されるのだ。
ウザくて仕方が無かった。
何事にも無反応だったはずの彼女が、段々と苛々してきた。
「ルファリー! 遊ぼうぜ!」
その日。
苛立ちが限界に達した彼女は。
バン
「一体何なんですの、貴方は!? 毎日毎日飽きもせず! こちらの気持ちも知らないで! 空気読めないし、失礼極まりないですわ!」
勢い良く扉を開けた。
「あ……」
少年はまるで鳩が豆鉄砲を食らったような反応だったが。
「ルファリー……顔を見せてくれて……ありがとう……ぐすっ……」
「は!? 何泣いてますの、貴方!?」
ルファリーは、まるで意味が分からなかった。
「何がしたいんですの、貴方!? 何度も何度も遊ぼうとか狩りに行こうとか! 嫌がらせですの!? 喧嘩売ってますの!? 買いますわよ!?」
ルファリーが腕まくりをすると、少年は涙を拭って、白い歯を見せて告げた。
「好きだから!」
「……はい?」
「一目惚れだったんだ! ルファリー、俺と付き合ってくれ!」
「!?」
正に青天の霹靂だった。
想像したことすらなかった。一ミリたりとも。
「……もし断ったら、どうしますの?」
「諦めない! また毎日来るよ、OKしてもらえるまで!」
「……ですわよね。はぁ」
大きな溜め息の後、ルファリーは人差し指を立てる。
「良いですこと? 私、名前も知らない殿方とお付き合いするつもりはありませんわよ?」
「あ、名前言ってなかったっけ? 俺はレッモ!」
自分の名前すら伝えず、相手のことばかり考える、底抜けに明るい少年。
「……って、え!? 今の言葉って、もしかして、俺と――」
「……仕方ないから付き合ってあげますわ。また毎日来られるのもウザいですし」
「うおおおおおおおおお! やったああああああああああああ! ありがとう、ルファリーいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「は、恥ずかしいから叫ばないで下さいまし! しかも、私の名前を!」
こうして、ルファリーはレッモと恋人同士になった。
※―※―※
それからの一年間は、とても幸せだった。
離別と死別によって両親を失い、深く傷付いていた心も、いつしか癒されていった。
将来は、この人と――
そんなことを考え始めたある日。
「ちょっと用事があって、王都に行ってくる!」
「用事って、何ですの?」
「いやまぁ、その……用事は用事だよ!」
何事もはっきりと口にするレッモにしては珍しく、どこか歯切れが悪かった。
怪しい。何か後ろめたいことがあるに決まっている。
そう確信したルファリーは、彼の後をつけることにした。
密かに用意した馬に跨った彼女は、レッモが乗った馬車を追いかけた。
王都につくと、素早くサングラスを購入して変装したルファリーは、目を疑った。
「もう、おそ~い!」
「ごめんごめん」
「!?」
レッモは、他の女と密会していた。
サラサラのプラチナブロンドヘアが印象的な可愛らしい少女。
それに比べて自分は、どれだけ櫛で梳かしても全くサラサラにならない、常にモコモコした髪の毛で、性格はツンツンしており、ガサツで、料理もまともに出来ず、弓矢で猪を狩ることくらいしか能がない。
ルファリーは、何もかも正反対だと思った。
「スイーツ食べた~い!」
「しょうがないな」
甘え下手なルファリーと違って、その少女はことあるごとにレッモに甘えた。
そして、彼も満更でも無い笑みを浮かべた。
「いちいち近いですわ!」
愛でも囁いているのか、少女は、何度もレッモの耳元に口を寄せた。
「そ、そんな!? 私ですら、まだ繋いだことが無いのに!」
王都の大通りを手を繋いで談笑する二人。
「う、嘘ですわよね!? 私がしたことがないことを、更に!?」
「あ~ん♪」とスプーンに取ったストロベリーアイスクリームをレッモに食べさせた少女は、お返しを所望し、レッモは「あ~ん」と、バニラアイスを食べさせた。
「さ、流石にそれは駄目ですわ! そんなの、しようと思ったことすらないですわ!」
ソーセージの左端と右端をそれぞれ咥えた少女とレッモは、少しずつ食べ進めていった。
人前でやるのは流石に恥ずかしかったのか、唇が触れそうになる寸前にレッモが口を離したので触れることは無かったが、危なかった。
「………………」
そこまで目撃したルファリーは会計を済ませて無言で席を立ち、レストランを出て、帰路に就いた。
「あれだけ私に愛を囁いておきながら、他の女と……! 万死に値しますわ!」
※―※―※
ルファリーは、村に戻ってきたレッモを見て愕然とした。
あろうことか、レッモは浮気相手の少女と共に帰ってきたのだ。
実は、ルファリーは、もしレッモが誠心誠意謝罪して許しを請い、心を入れ替えると固く誓うのであれば、考えてあげても良いと、ほんの少しだけ思っていた。
勿論、許せない……けれども、人間誰しも完璧ではない。
つい魔が差してしまうこともあるだろう。
だが、レッモは反省どころか、堂々と密会相手を連れてきた。
恋人である自分の目の前に。
「この浮気者! 恥を知りなさい! 『石化』!」
ルファリーは、レッモと、浮気相手の少女、更には村人全員、そして村の建物まで、全てを石化した。
※―※―※
「そんなことがあったのね! 許せないわ、その男!」
「ハッ! そりゃ石化しても仕方ないさ! あたいならとっくにぶっ殺してる!」
「スプリなら、一億回くらいぶん殴ってるの! ううん、一億回でも足りないの!」
話を全て聞いて、先程と打って変わって殺伐としたカカナたちが、目をギラつかせる。
「分かってもらって良かったですわ! そうですわね、では、今すぐ止めを刺しますわ!」
背中の弓を取り、矢筒から矢を一本取り出したルファリーが、石像と化したレッモに狙いをつける。
「ハッ! 弓矢なんかで人間サイズの石の塊を粉砕出来るのかい?」
訝し気なリンジーさんに対して、ルファリーは目標を村の端にある、石化した大木に変えて放つ。
ドガッ
「!」
大木は粉々に砕け散った。
「驚いたわ……貴方、恐ろしく弓矢の腕が立つのね……!」
どう見ても普通の弓矢にしか見えないが、それでこの破壊力となると、その実力は間違いなくS級レベルだ。
「お父様の遺品である魔導具――〝魔導弓矢〟を使えば、こんなもんじゃないですわよ?」
ルファリーは、再度レッモの方に向き直ると、辛そうに俯いた。
「レッモ……こんな形でお別れになるだなんて、思ってもいませんでしたわ……」
彼女の口から、ぽつぽつと言葉が零れ落ちる。
「お父様が亡くなり、私はこの世にたった一人だと孤独感に苛まれていた時。誰しもが距離を取った中で、貴方だけは、決して離れてくれませんでしたわ……正直、最初は鬱陶しくて仕方が無かったですわ」
「でも!」と、彼女は続けた。
「絶望し、命を終わらせることを貴方は許さなかった。生きるという道を私に選ばせた。勿論、そんな小難しいことを考えられるほど貴方は頭が良くないですわ。本当にバカみたいに真っ直ぐで。でも、だからこそ、ただ悲しみの底に沈んでいた当時の、他に何も感じなかったはずの私の心の中まで届いたのですわ。そうして、気付かない内に、私の傷付いた心は、貴方の言葉に、声に、その存在によって少しずつ癒されていったのですわ」
穏やかに語っていた彼女が、一転、苦しそうに吐露する。
「一年も経つのに、手も握らない貴方のことを、意外に奥手なんだなと私は思っていましたわ。でも、どうやら違ったみたいですわね……貴方には、手を握る相手が――握りたい、触れ合いたいと思う相手が他にいた。そして、私はそういう存在にはなれなかった。それだけだったのですわね……王都でその子と幸せそうに笑い合う貴方を見て、嫌と言うほど思い知らされましたわ」
苦しさと、悲しみと、しかし同時に、確かに存在した相手への深い想いが滲む声は、微かに震えていた。
「最後だから、今まで一度も伝えられなかった気持ちを、ちゃんと素直に伝えてあげますわ! レッモ。私は貴方のことが、好きでしたわ! 大好きでしたわ! 一年間だけだったけど、一緒に森の探検をしたことも、狩りをしたことも、綺麗な夕日を見たことも、貴方と過ごした全部が、キラキラ光る宝物でしたわ! ありがとう! そして……さようなら!」
顔を上げたルファリーが、再度レッモに弓矢を向けると。
「ぐすっ……傷付けてしまってごめんな、ルファリー……」
「え!? レッモ!? 石化が解けてますの!? 一体いつから!?」
「『こんな形でお別れになるだなんて』から」
「よりによって、一番恥ずかしい部分の最初からじゃないですのおおおお!」
僕が密かに〝キルアイズ〟で石化を解除しておいたレッモの言葉に、ルファリーが真っ赤になる。
「もう一度石化を――いや、もう良いですわ! 射殺してやりますわ!」
ギリギリと弓を引くルファリーの眼前で、レッモは片膝を立てた。
「ルファリー! 愛してる! 俺と結婚してくれ!」
「!? はああああ!? この状況分かってますの!?」
見ると、レッモは小さな箱を持っており、パカッと開かれたそこには、金色の宝石が嵌め込まれた美しい指輪が入っていた。
「分かってる! 傷付けて本当に悪かったと思ってる! でも、俺は本当にお前のことを愛してるんだ! 結婚してくれ!」
「だ・か・ら! ふざけるんじゃないですわあああああ!」
ルファリーが絶叫した瞬間。
「あ」
右手が離れてしまい、矢が飛んでしまった。
「〝キルアイズ〟!」
慌てて僕が、矢を消滅させる。
「愛してる! ルファリー! 俺と結婚してくれ!」
「今殺され掛けたのに、よくもまぁ同じテンションで来れますわね!」
全く動じないレッモに、ルファリーが声を荒らげる。
「えっと、レッモの話を聞いてあげてもらえないかな、ルファリー? きっと何か誤解があるんだよ」
「誤解ですって!?」
鬼のような形相のルファリーだったが、レッモと指輪を交互に何度か見た後。
「はぁ……分かりましたわ」
弓矢を下げた。
※―※―※
「従妹おおおお!?」
レッモによると、王都でデートしていた相手はヤフィルルという名で、彼の従妹だったらしい。
「ヤフィルルは女の子だし、彼氏もいるし、デートにも詳しいだろうし、どうやったら素敵なデートをして感動的なプロポーズが出来るかを、手紙で相談したんだ。そしたら、実際に直接教えた方が早いから王都に来いと言われたんだよ」
だがルファリーは、「そ、そんなの信じられませんわ! あんな親密な態度を取っておきながら、ただの従妹だっただなんて! あり得ませんわ!」と、頑なに信じようとしない。
そこで、僕は「〝キルアイズ〟!」と、再度固有スキルを使ってヤフィルルの石化を解いた。
「ヤフィはレッモの従妹だよ! 女の心が全然分かってないレッモのために、女の子が喜ぶ理想的なデートを手取り足取り教えてあげてたの! そんで、こっちがヤフィの彼氏!」
「あ、どうも」
「彼氏も来てたんかーい!」
ルファリーが鋭く突っ込む。
レッモの隣にいたのが、ヤフィことヤフィルルで、更にその隣にいた少年が、ヤフィの彼氏だったらしい。ヤフィルルが「この人も!」と頼んだので、彼も石化を解除しておいたのだ。
「……全部私の早とちりだったのですわね……」
項垂れるルファリーに、レッモが首を横に振る。
「悪いのは全部俺だ。傷付けるような真似をして、本当に悪かった」
「レッモ……」
「最初からこうしてただシンプルにプロポーズしておけば良かったんだ。お前も知っての通り、俺は頭が良くないし、素敵なデートとか感動的なプロポーズとかっていうのは柄じゃない。こんなことになってしまったが、お前に対する気持ちは本物だ! どうか信じてくれ!」
一瞬笑みを浮かべるルファリーだったが、フルフルと首を横に振る。
「で、でも! 誤解だったけど、たとえ従妹とは言え、正直あの距離感はバグってましたわ! どう考えても近過ぎですわ!」
「それに――」と、彼女は言葉を継ぐ。
「本当は貴方も、ヤフィルルみたいな子が好きなんでしょう? サラサラヘアで、甘え上手で、女の子っぽくて、可愛らしくて。私はこんなモコモコヘアだし、甘え下手で、いつもツンツンしてるし、料理も出来ず、猪狩りくらいしか長所が無いし!」
顔を背けるルファリー。
「あっ」
その髪を、立ち上がったレッモが優しく撫でる。
「俺はルファリーの髪はとっても素敵だと思うし、好きだ。ふわふわしていて、まるで本当は優しくて温かいお前の心のように」
「………………」
「それに、甘え下手なところも、気を抜くと直ぐツンツンしちゃうところも、全部可愛くて愛おしいって思う。全部――お前の全部が好きなんだ、ルファリー」
最愛の男の言葉で、声で、愛で包まれたルファリーが、堪え切れず涙を零し、レッモの胸に飛び込む。
「バカ! また誤解させるようなことしたら、今度こそ許しませんわよ!」
「ああ。誓うよ。もう二度とあんなことはしない」
レッモが、もう一度、ルファリーの目を見て告げる。
「ルファリー。愛してる。結婚してくれ」
涙で潤んだ瞳で見詰め返した彼女は。
「……はい、喜んで」
とっても素敵な微笑を浮かべて、再びレッモに抱き着いた。
二人が仲直り出来て良かった!
友達を作るので一杯一杯だから、僕には恋愛とかよく分かんないし今のところそういうことを考える余裕もないけど、二人を見てると、すごく素敵なことなんだなって思えたよ!
※―※―※
〝キルアイズ〟で村人と建物を含む全ての石化を全て解除して、村全体から歓声が上がり、至る所で無事を喜び抱擁し合う者たちが見受けられる中。
「え? 従兄にああいうことするの、嫌だったの? それならそうと言ってくれれば良いのに! うん、分かった! ごめんね! もうあんなことはしないから!」
ヤフィルルの彼氏も、王都での彼女とレッモのデートの練習はよく思っていなかったらしくて、ヤフィルルは謝罪すると彼氏と腕を組み、仲直りした。
「それにしても、石化の魔法を使えるなんて、すごいね!」
左手の薬指に嵌めた指輪をうっとりと見詰めるルファリーに声を掛けると、「ああ、それは」と、答えてくれた。
「ロックドラゴンに力を貸してもらったのですわ。弓矢で狩った猪を百匹ほど差し出すことを条件に」
「!?」
僕らは驚愕に目を剥く。
「ロックドラゴン!?」
「そうですわ。王都から帰ってきた後、森の東にある荒野で、『どうやって殺してやろうかしら? やっぱり弓矢ですわよね。でも、ただ普通に射殺するだけじゃ物足りないですわ』と思案していたのですわ」
「サラッと恐ろしいこと言うわね、この子……」
カカナが半眼で横から口を挟む。
「そうしたら――」
と、その時。
ゴゴゴゴゴ
「地震!?」
突如、地鳴りと共に地面が揺れたかと思うと。
「ガアアアアアア!」
「「「「「うわあああああ!」」」」」
地面に大きな穴が開いて、身体が岩で出来たロックドラゴンの巨大な口が出現。
「危ない! ルファリー!」
「レッモ!」
咄嗟に近くの村人たちを抱えて僕とカカナたちが跳躍すると、レッモがルファリーを穴の外に突き飛ばし、代わりに自分が落下して――
バクン
「いやああああああ!」
――ロックドラゴンに喰われた。
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